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知多信用金庫——醸造と工業の半島で、半田の信金は何に貸すか

預貸率49.4%、預金8,986億円、自己資本比率11.38%、不良債権比率3.94%。半田市に本店を置く知多信用金庫。醸造業と臨海工業の知多半島に根ざす信金が、何に貸すのか。同じ愛知の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 愛知県

愛知県の半田市に本店を置く知多信用金庫は、預金8,986億円を持つ信用金庫だ。店舗36。半田市を中心に、知多半島を広く地盤としている。預金9千億円に迫る、愛知県内でも大型の信金だ。

本拠の半田市は、知多半島の中核都市であり、古くから醸造業で栄えた町だ。酢や酒、味噌・醤油といった醸造業が地場産業として根づき、いまも全国的に知られる食品メーカーの拠点がある。知多半島は三方を海に囲まれ、臨海部には製鉄や石油化学などの重工業が立地し、内陸には農業も広がる。中部国際空港(セントレア)も知多半島の沖合にある。知多信用金庫は、こうした醸造業と臨海工業の知多半島に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率49.4%という標準的な水準だ。預金の半分弱を貸出に回している。不良債権比率3.94%は、やや高めだがおおむね落ち着いた水準だ。なぜ、知多半島の大型信金は、こうした数字になるのか。同じ愛知を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。知多信用金庫の預金は8,986億円、貸出金は4,442億円。預貸率は49.4%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は11.38%、不良債権比率は3.94%。店舗数は36、中小企業等への貸出残高は3,756億円。

同じ愛知県で、安城市を中心とする西三河の碧海信用金庫(預貸率52.5%・自己資本比率15.5%)と比べると、両者は愛知県内の大型信金として近い姿を見せる。知多信用金庫の預貸率49.4%は安城の碧海信用金庫(52.5%)とほぼ並び、どちらも預金の半分前後を貸出に回している。一方、自己資本比率は碧海信用金庫(15.5%)が知多信用金庫(11.38%)を上回り、資本に厚みがある。不良債権比率は知多信用金庫(3.94%)が碧海信用金庫(2.95%)をやや上回る。自動車産業の集積する西三河の信金と、醸造・臨海工業の知多半島の信金——同じ愛知の大型信金でも、地盤とする産業の違いが、数字の細部に表れていると読める。

愛知県の二つの大型信用金庫(令和7年3月末)
 知多信用金庫碧海信用金庫
本店半田市安城市
預金8,986億円2兆3,190億円
預貸率49.4%52.5%
自己資本比率11.38%15.5%
不良債権比率3.94%2.95%

ともに愛知県を地盤とする大型信金。預貸率は近いが、地盤とする産業が異なる。知多半島の醸造・臨海工業と、西三河の自動車産業の違いが背景にある。

醸造と工業の半島とともに——知多信用金庫の歩み

知多信用金庫は、知多半島の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。半田の醸造業に関わる事業者、臨海部の重工業に連なる中小製造業、半島の農家や商店、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。知多信用金庫は、合併を経て、知多半島に広く根ざす大型信金へと成長してきた。

知多半島という土地は、信用金庫にとって、会員の資金需要のある地盤だ。半田の醸造業、臨海部の製鉄・石油化学、内陸の農業、そして空港関連と、多様な業種が広がる。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率49.4%という水準を支えている。預金の残り半分は、有価証券などの運用にも向かう。自己資本比率11.38%は、信用金庫の国内基準4%を十分に上回り、堅実な水準だ。不良債権比率3.94%はやや高めだが、地域の事業の浮き沈みを引き受けるなかで、おおむね落ち着いた水準を保っていると読める。

49.4%を、知多半島から読む

知多信用金庫の預貸率49.4%という水準は、醸造業と臨海工業の知多半島で、会員の資金需要に応えつつ、運用とのバランスを取っていることの表れだと読める。半田の醸造業、臨海部の重工業、半島の農業が広がる知多半島は、信用金庫が貸す相手のある土地だ。一方、大企業の拠点や重工業は、信用金庫より大手銀行が主に資金を供給する。知多信用金庫は、その間にある中小・零細事業者に密着して貸し、預金の半分弱を貸出に回している。

自己資本比率11.38%という堅実な資本と、不良債権比率3.94%というおおむね落ち着いた焦げ付きは、知多半島で会員に着実に貸し、運用とのバランスを保ってきたことを映す。醸造と工業の半島で、中小に密着して貸し、堅実な資本を保つ——それが、知多信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。多様な産業を抱える半島を支える大型信金の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

愛知の経済とともに

知多信用金庫の数字は、醸造業と臨海工業の知多半島という土地と、そこで中小に密着して貸す大型信金の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元の会員に貸し、堅実な資本を保ちながら、知多半島の中小・零細事業者を支えてきた。半田の醸造業と臨海部の重工業、半島の農業の経済が、49.4%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。知多信用金庫を見れば、知多半島の経済と、そこで中小に貸す大型信金の姿が浮かぶ。愛知県の他の金融機関は、西三河の碧海信用金庫、岡崎の岡崎信用金庫、豊橋の豊橋信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛知県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。醸造業や重工業など多様な産業を抱える土地では、中小・零細事業者の資金需要に応えつつ、預金の残りを有価証券などの運用に向け、預貸率が半分前後に落ち着くことがある。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の堅実さが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。碧海信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(半田市に本店を置き、知多半島を地盤とする信用金庫であること、合併を経て知多半島に広く根ざす大型信金になったこと、半田が知多半島の中核都市で古くから醸造業で栄え、酢・酒・味噌・醤油などの醸造業が地場産業として根づき全国的に知られる食品メーカーの拠点があること、知多半島の臨海部に製鉄・石油化学などの重工業が立地し内陸に農業が広がること、中部国際空港が知多半島の沖合にあること)に関する記述=知多信用金庫および各種公開情報にもとづく。
半田・知多半島の地理・経済(半田、知多半島、醸造、酢、酒、味噌、醤油、臨海工業、製鉄、石油化学、中部国際空港)に関する記述=各種公開情報。

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