西尾信用金庫——抹茶とうなぎの三河で、信金はなぜ厚い自己資本を持つのか
預貸率51.2%、預金1兆5,130億円、自己資本比率17.03%。西尾市に本店を置く西尾信用金庫。抹茶とうなぎの西三河に根ざす「せいしん」が、なぜ厚い自己資本を持つのか。その数字と歴史を読む。
愛知県の西尾市に本店を置く西尾信用金庫は、地元で「せいしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金1兆5,130億円、店舗51。1兆円を大きく超える大型信金である。西尾市を中心に、安城・岡崎・刈谷など西三河の一帯を地盤としている。
本拠の西尾は、三河湾に面した西三河南部の街だ。抹茶の生産で全国に知られ、「西尾の抹茶」は碾茶(てんちゃ)の産地として高い評価を受ける。三河湾でとれるうなぎの産地でもあり、農と食の豊かな土地だ。そして西尾の周辺は、トヨタを頂点とする自動車産業が集積する西三河——日本有数のものづくりの地でもある。西尾信用金庫は、こうした抹茶とうなぎの農・食の伝統と、現代の自動車産業が重なる土地に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、1兆5,130億円という大きな規模と、自己資本比率17.03%という厚さだ。預貸率は51.2%と標準的だが、自己資本は際立って厚い。なぜ、西三河の大型信金は、これほど資本を厚く積むのか。同じ西三河の大型信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。西尾信用金庫の預金は1兆5,130億円、貸出金は7,749億円。預貸率は51.2%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は17.03%と厚く、不良債権比率は4.23%。店舗数は51、中小企業等への貸出残高は6,822億円。
同じ西三河で、安城市を地盤とする碧海信用金庫(預貸率52.5%・自己資本比率15.5%)と比べると、両者は規模も預貸率も近い。西三河の大型信金は、ともに厚い自己資本を持つが、西尾信用金庫の自己資本比率17.03%は、碧海信用金庫(15.5%)をさらに上回る。これは、トヨタを頂点とする自動車産業の集積する豊かな西三河で、潤沢な預金を集めながら、運用などで着実に利益を積み、厚い資本として蓄えてきたことの表れだと読める。体力のある製造業が多い土地では、信用金庫が貸す中小向けの需要には限りがあり、貸出に回りきらない預金が運用に向かう。その利益が、厚い自己資本となる。
| 西尾信用金庫 | 碧海信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 西尾市 | 安城市 |
| 預金 | 15,130億円 | 23,190億円 |
| 預貸率 | 51.2% | 52.5% |
| 自己資本比率 | 17.03% | 15.5% |
| 不良債権比率 | 4.23% | 2.95% |
ともに西三河を地盤とする二つの大型信金。規模では碧海信用金庫が上回るが、西尾信用金庫は自己資本がさらに厚い。自動車産業の集積する豊かな土地で、厚い資本を積む姿が共通して表れている。
抹茶と自動車の地とともに——西尾信用金庫の歩み
西尾信用金庫は、西三河・西尾の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。抹茶やうなぎの生産者、地域の商店、そして自動車産業を支える中小の製造業者——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。西尾信用金庫は、農と食の伝統と現代のものづくりに寄り添いながら、1兆円を超える規模へと成長してきた。
西三河という土地は、信用金庫にとって預金を集めやすい地盤だ。トヨタを頂点とする自動車産業が日本有数の厚みで集積し、関連する事業者も多く、地域は豊かだ。一方で、大企業や体力のある企業が多い土地では、信用金庫が貸す中小向けの貸出には、おのずと規模がある。豊かに預金は集まるが、それを地元で貸し切るだけの中小の資金需要には限りがある——この構図が、51.2%という標準的な預貸率と、厚い自己資本の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、厚い資本となってきたと読める。
17.03%の資本を、西三河から読む
西尾信用金庫の自己資本比率17.03%という厚さは、自動車産業の集積する豊かな西三河で、潤沢な預金を集めながら、運用などで着実に利益を積んできたことの表れだと読める。貸出を無理に伸ばさず、堅実に運用し、その利益を資本として厚く蓄えてきた。地域経済が落ち込んでも揺るがず在り続けるための、分厚い備えがここにある。
預貸率51.2%という標準的な水準は、西三河の中小の資金需要に、過不足なく応えていることを示す。不良債権比率4.23%というやや高めの数字は、貸出先の事情を映すが、厚い自己資本が十分に吸収できる。豊かな土地で潤沢な預金を集め、堅実に貸し、運用で利益を積み、厚い資本で守りを固める——それが、西尾信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ西三河の碧海信用金庫とよく似たこの姿は、自動車産業の集積する豊かな土地の大型信金が共有する特徴だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
西尾の経済とともに
西尾信用金庫の数字は、抹茶とうなぎの農・食の伝統と、自動車産業が重なる西三河という土地と、そこで潤沢な預金を集めながら厚い自己資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の半分強を地元に貸しながら、運用で利益を積み、厚い自己資本で守りを固めてきた。豊かな西三河の経済が、17.03%という厚い自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。西尾信用金庫を見れば、抹茶と自動車の西三河の経済と、そこで厚い資本を積む大型信金の姿が浮かぶ。愛知の他の信用金庫は、自動車のまちの碧海信用金庫、中部最大級の岡崎信用金庫、やきものの瀬戸信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛知県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。碧海信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(西尾市に本店を置き、安城・岡崎・刈谷など西三河を地盤とする信用金庫であること、西尾が抹茶〔碾茶〕の産地で三河湾のうなぎでも知られること、西三河が自動車産業の集積地であること)に関する記述=西尾信用金庫および各種公開情報にもとづく。
西尾・西三河の地理・産業(抹茶、碾茶、うなぎ、三河湾、自動車産業、ものづくり)に関する記述=各種公開情報。