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瀬戸信用金庫——やきものの里の大型信金は、ものづくりの愛知で何に貸すか

預貸率51.2%、預金2兆2,257億円、店舗72。瀬戸市に本店を置く瀬戸信用金庫。「せともの」の里に根ざす中部最大級の信金「せとしん」が、ものづくりの愛知で何に貸すか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 愛知県

愛知県瀬戸市に本店を置く瀬戸信用金庫は、地元で「せとしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2兆2,257億円、店舗72。中部地方でも最大級の規模を持つ大型信金である。本拠の瀬戸市を中心に、名古屋市や尾張地方、さらに岐阜県の一部にまで店舗を広げている。

本拠の瀬戸は、「せともの」という言葉の語源になった、千年を超える歴史を持つやきものの里だ。瀬戸焼の産地として古くから栄え、いまも陶磁器や、その技術を生かしたファインセラミックス(電子部品などに使われる先端的な窯業製品)の事業者が集まる。そして瀬戸の周辺は、トヨタを頂点とする自動車産業をはじめ、日本有数のものづくりが集積する愛知県だ。瀬戸信用金庫は、こうした伝統の窯業と、現代のものづくりが重なる土地に根ざしてきた信金である。

この信金の数字を見ると、2兆2,257億円という巨大な預金規模と、預貸率51.2%という水準が目を引く。ものづくりの盛んな愛知にありながら、貸出は預金の半分ほど。なぜか。同じ愛知県のものづくりの街の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。瀬戸信用金庫の預金は2兆2,257億円、貸出金は1兆1,388億円。預貸率は51.2%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は13.22%、不良債権比率は2.66%。店舗数は72、中小企業等への貸出残高は8,298億円。

2兆円を超える預金は、信用金庫として全国でも有数の規模だ。同じ愛知県で、トヨタの企業城下町・豊田市を地盤とする豊田信用金庫(預金1兆8,873億円・預貸率50.6%)と比べると、両者は規模が近く、預貸率もともに5割前後でよく似ている。ものづくりが盛んな愛知の大型信金は、預金を集める力が非常に強い一方、貸出はその半分ほどにとどまる。これは、自動車産業を頂点とする愛知の製造業が、資金的に充実した大企業や、その系列の企業を多く含むことと無関係ではないと読める。体力のある企業は、必ずしも信用金庫からの借り入れを多く必要としない。豊かに集まる預金の一部は、貸出に加えて有価証券の運用などにも向かい、預貸率は5割前後に落ち着く。

愛知県・ものづくりの街の大型信用金庫(令和7年3月末)
 瀬戸信用金庫豊田信用金庫
本店瀬戸市豊田市
預金22,257億円18,873億円
預貸率51.2%50.6%
自己資本比率13.22%10.15%
不良債権比率2.66%2.93%

ともに愛知県のものづくりの街を地盤とする二つの大型信金。規模・預貸率がよく似ている。製造業の集積する豊かな土地で預金を集める力の強さと、預貸率5割前後という共通の姿がうかがえる。

やきものとものづくりとともに——瀬戸信用金庫の歩み

瀬戸信用金庫は、やきものの里・瀬戸の事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。陶磁器の窯元や問屋、関連する事業者、そして地域の商店や個人——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。瀬戸信用金庫は、伝統の窯業に寄り添いながら、名古屋圏のものづくりの広がりとともに、中部最大級の規模へと成長してきた。

瀬戸と、その周辺に広がる愛知という土地は、信用金庫にとって大きな地盤だ。やきものの伝統に加え、自動車をはじめとする製造業が日本有数の厚みで集積する。預金を集める力は非常に強い。一方で、大企業や体力のある企業が多い土地では、信用金庫が貸す中小事業者向けの貸出には、おのずと規模がある。豊かに預金は集まるが、それを地元で貸し切るだけの中小の資金需要には限りがある——この構図が、51.2%という預貸率の背景にあると読める。それでも、8,298億円という中小企業向け貸出残高は、地域のものづくりを支える役割の大きさを物語る。

51.2%を、ものづくりの信金から読む

瀬戸信用金庫の預貸率51.2%という水準は、ものづくりの盛んな愛知で預金を集める力が非常に強いことの裏返しだと読める。やきものの里と、自動車産業を頂点とする製造業の集積——この豊かな経済から、潤沢な預金が集まる。一方で、貸出先となる中小事業者の資金需要には規模がある。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、有価証券の運用などに向かい、預貸率は5割前後にとどまる。

自己資本比率13.22%という水準は、信用金庫として手厚い。不良債権比率2.66%も標準的だ。豊富な預金と厚い自己資本を背景に、伝統の窯業と現代のものづくりを支えながら、堅実に貸す——それが、瀬戸信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ愛知の豊田信用金庫とよく似たこの姿は、ものづくりの集積する豊かな土地の大型信金が共有する特徴だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

瀬戸の経済とともに

瀬戸信用金庫の数字は、千年のやきものの伝統と、現代のものづくりが重なる瀬戸・愛知という土地と、そこで豊富な預金を集めながら地域の事業者に貸す中部最大級の信金の歩みの、両方を映している。2兆円を超える預金を持ちながら、その半分強を地元に貸し、伝統と現代のものづくりを支えてきた。ものづくりの盛んな愛知で預金を集める力が、51.2%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。瀬戸信用金庫を見れば、やきものとものづくりの瀬戸・愛知の経済と、そこで地域の事業者に貸す大型信金の姿が浮かぶ。愛知の他の信用金庫は、中部最大級の岡崎信用金庫、自動車のまちの碧海信用金庫、毛織物の尾西信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛知県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が中位の金融機関は、地元の資金需要に応えつつ、運用とのバランスを取っている一つの目安になる。ただし、体力のある大企業が多く集まる土地では、預金が豊富に集まる一方で中小向けの貸出が追いつかず、預貸率が低めにとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。豊田信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(瀬戸市に本店を置き、名古屋市・尾張地方・岐阜県の一部を地盤とする信用金庫であること、瀬戸が「せともの」の語源となったやきものの里であること、瀬戸焼やファインセラミックスの事業者が集まること、愛知が自動車をはじめとするものづくりの集積地であること)に関する記述=瀬戸信用金庫および各種公開情報にもとづく。
瀬戸・愛知の地理・産業(やきもの、瀬戸焼、せともの、陶磁器、ファインセラミックス、自動車産業、ものづくり)に関する記述=各種公開情報。

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