秋田県信用組合——3つの信組が一つになった「けんしん」は、信金なき街で何に貸すか
預貸率65.4%、預金953億円、自己資本比率9.65%、不良債権比率3.72%。秋田県秋田市に本店を置く秋田県信用組合。県内3つの信組が合併して生まれ、信用金庫のない大館・鹿角・北秋田を支える県下唯一の信組が、何に貸すのか。同じ秋田の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
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秋田県の秋田市に本店を置く秋田県信用組合は、預金953億円を持つ信用組合だ。店舗15。略称は「けんしん」。秋田市の本店を中心に、北秋田市・能代市・鹿角市・大館市など、県北部に多くの店舗を構える。秋田県下に本店を持つ唯一の信用組合だ。
本拠の秋田は、米どころとして知られる東北の県だ。なかでもこの信組が地盤とする県北部——大館・鹿角・北秋田は、信用金庫のない「信金空白域」でもある。多くの地域では地銀と信金が中小金融を担うが、この一帯では、地銀のほかに信用金庫が店舗を持たない。そのため、秋田県信用組合が、地域の中小事業者にとって身近な協同組織金融機関として、独自の役割を担ってきた。「地域で集めたお金を、地域に貸出し、地域に貢献する」——それが、この「けんしん」の使命だ。
この信組の数字で目を引くのは、預貸率65.4%という、信組として高い水準だ。預金953億円に対し、貸出金は623億円。預金の6割超を貸出に回している。なぜ、県北の信組が、これほど貸せるのか。同じ秋田の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。秋田県信用組合の預金は953億円、貸出金は623億円。預貸率は65.4%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は9.65%、不良債権比率は3.72%。店舗数は15。
同じ秋田県の信金と比べてみる。県都・秋田の秋田信用金庫(預貸率58.1%・不良5.38%)、由利本荘の羽後信用金庫(預貸率48.0%・不良10.59%)と並べると、秋田県信用組合の預貸率65.4%は、これら信金よりも高い。信用組合は信用金庫よりさらに組合員の枠が狭く、貸出が伸びにくいことも多いが、秋田県信用組合は県内の信金よりよく貸している。これは、信用金庫のない県北部で、地域の中小事業者の資金需要を一手に引き受けてきたことの表れだと読める。不良債権比率3.72%は、人口減少の進む地方の現実を映してやや高めだが、羽後信金(10.59%)などと比べればむしろ低く抑えられている。自己資本比率9.65%は、組合員の相互扶助で支える信組として堅実な水準だ。
| 秋田県信用組合 | 秋田信用金庫 | 羽後信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 業態 | 信用組合 | 信用金庫 | 信用金庫 |
| 預貸率 | 65.4% | 58.1% | 48.0% |
| 自己資本比率 | 9.65% | 12.31% | 9.98% |
| 不良債権比率 | 3.72% | 5.38% | 10.59% |
いずれも秋田県の機関。けんしんは信組でありながら、二つの信金より高い預貸率を示す。
3つの信組の合併から——秋田県信用組合の歩み
秋田県信用組合は、1990年(平成2年)4月1日、金融の自由化が進むなか、秋田県と全国信用協同組合連合会の協調による支援のもとで、鹿角信用組合・北秋信用組合・秋田商工信用組合の3つの信用組合が対等合併して発足した。県北の鹿角、鷹巣(北秋)、そして県都の秋田商工——それぞれの地に根ざしていた信組が、一つにまとまった。2003年(平成15年)1月には、経営に行き詰まった大館信用組合を合併し、県北部での基盤をさらに強めた。2013年(平成25年)には営業地域を秋田県全域に拡大している。本店は秋田市に置かれ、略称「けんしん」として親しまれている。
信用金庫のない県北部という地盤は、この信組に独特の役割を与えてきた。大館・鹿角・北秋田といった一帯では、地銀のほかに信用金庫が店舗を持たない。そのため、秋田県信用組合が、地域の中小事業者にとって最も身近な協同組織金融機関となっている。一つの企業が地域経済に占める比重が大きい地方では、その事業者を支えることが、雇用を守り、人口流出を防ぐことに直結する。「地域で集めたお金を、地域に貸出し、地域に貢献する」という使命のもと、けんしんは県北の中小事業者によく貸してきた。ニンニク生産加工の事業者への協調融資や、田舎発のベンチャー支援など、地域の産業を育てる取り組みも続けてきた。預貸率65.4%という信組として高い水準は、信金空白域で地域の資金需要を引き受けてきたことの表れだと読める。不良債権比率3.72%は、人口減少の進む地方の現実を引き受けながらも、堅実に貸してきたことを映していると読める。
65.4%を、秋田から読む
秋田県信用組合の預貸率65.4%という信組として高い水準は、信用金庫のない県北部で、地域の中小事業者の資金需要を一手に引き受けてきたことの表れだと読める。3つの信組が一つになり、信金空白域の大館・鹿角・北秋田を支えてきた。地銀のほかに信金がないこの一帯で、けんしんは協同組織金融機関として独自の役割を果たしてきた。
そのうえで、不良債権比率3.72%という、地方にしては抑えられた数字が、この信組の性格を物語る。人口減少の進む県北で、地域の中小に深く貸しながらも、堅実さを保つ。地域で集めたお金を地域に貸し、地域に貢献する——その使命感が、65.4%という高い預貸率に表れていると読める。信金なき街で、地域経済を下支えする県下唯一の信組。それが、けんしんの生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
秋田の経済とともに
秋田県信用組合の数字は、信用金庫のない県北部という地盤と、3つの信組が一つになって歩んできた歴史の、両方を映している。信金空白域の中小事業者によく貸し、地域の産業を育てながら、秋田の経済を支えてきた。地域に貢献するという使命と、信金なき街での独自の役割が、65.4%という高い預貸率に表れている。
銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。秋田県信用組合を見れば、秋田県北部の経済と、そこで地域に貸す信組の姿が浮かぶ。秋田県の他の金融機関は、県都の秋田信用金庫、由利本荘の羽後信用金庫、県内最大の地銀秋田銀行、第二地銀の北都銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。秋田県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、秋田県の地域金融機関のページへ。
秋田県信用組合は、信用金庫のない県北部を支える県下唯一の信用組合です。地元の事業者に貸す信組とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。秋田信用金庫・羽後信用金庫の数値も同出典。
沿革(1990年4月に鹿角信用組合・北秋信用組合・秋田商工信用組合の3信用組合が対等合併して発足したこと、2003年1月に大館信用組合を合併したこと、2013年に営業地域を秋田県全域に拡大したこと、県下に本店を持つ唯一の信用組合であること、本店が秋田市にあること、略称が「けんしん」であること、「地域で集めたお金を地域に貸出し地域に貢献する」を使命とすること)=秋田県信用組合および各種公開情報にもとづく。
秋田の地理・経済(秋田市、大館市・鹿角市・北秋田市、米どころ、県北部に信用金庫が店舗を持たないこと、人口減少)に関する記述=各種公開情報。
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