愛媛信用金庫——県都・松山の「ひめしん」は、伊予で何に貸すか
預貸率51.9%、預金6,760億円、自己資本比率20.86%。松山市に本店を置く愛媛信用金庫。愛媛県内最大の信用金庫「ひめしん」が、県都・松山を中心に厚い自己資本を保ちながら貸す。その数字と歴史を読む。
愛媛県の県都・松山市に本店を置く愛媛信用金庫は、地元で「ひめしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金6,760億円、店舗46。愛媛県内では最大規模の信用金庫である。松山市を中心に、中予地方を地盤としながら、県内に広く店舗を構えている。
本拠の松山は、四国最大の都市であり、愛媛の政治・経済・文化の中心だ。道後温泉や松山城で知られる観光都市であり、正岡子規や夏目漱石の『坊っちゃん』ゆかりの文学の土地でもある。商業・サービス業が厚く集まり、周辺には製造業も広がる。愛媛県全体では、海運や造船、今治のタオル、宇和島の真珠・水産など、地域ごとに多彩な産業を持つが、その中心都市・松山は、バランスの取れた都市経済を持つ。
この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率20.86%という厚さだ。預貸率51.9%は信用金庫として標準的な水準だが、自己資本は2割を超える。県都の都市経済を地盤に、よく貸しながらも、なぜこれほど厚く資本を積むのか。数字とともに読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。愛媛信用金庫の預金は6,760億円、貸出金は3,509億円。預貸率は51.9%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は20.86%と厚く、不良債権比率は4.35%。店舗数は46、中小企業等への貸出残高は3,262億円にのぼる。
愛媛県には、いくつかの信用金庫がある。県南の宇和島市を地盤とする宇和島信用金庫(預貸率60.3%・自己資本比率9.87%)や、東予の新居浜市を地盤とする東予信用金庫などだ。これらと比べると、愛媛信用金庫は県内最大の規模を持ちながら、自己資本比率が際立って厚い。預貸率51.9%という標準的な水準でよく貸しつつ、2割を超える自己資本を積む——この組み合わせが、ひめしんの特徴だ。県都・松山という安定した都市経済を地盤とすることが、この手堅さの背景にあると読める。
| 愛媛信用金庫 | 宇和島信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 松山市(中予) | 宇和島市(南予) |
| 預金 | 6,760億円 | 1,104億円 |
| 預貸率 | 51.9% | 60.3% |
| 自己資本比率 | 20.86% | 9.87% |
| 不良債権比率 | 4.35% | 3.41% |
愛媛県内の二つの信金。愛媛信用金庫は県内最大の規模を持ち、預貸率は標準的だが、自己資本は宇和島信用金庫の倍以上と際立って厚い。県都・松山を地盤とする手堅さがうかがえる。
県都・松山に根ざして——愛媛信用金庫の歩み
愛媛信用金庫は、県都・松山の中小事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。松山市を中心に、合併を重ねて規模を広げ、愛媛県内最大の信用金庫となった。商業・サービス業の集まる県都を地盤に、地域の中小企業や商店、個人に資金を供給し、愛媛の経済とともに歩んできた。
松山という土地は、信用金庫にとって恵まれた地盤だ。四国最大の都市として人口が集まり、商業・サービス業に厚みがある。観光業も盛んで、製造業も周辺に広がる。多様な事業者が集まり、貸出の機会も分散している。特定の産業の浮き沈みに左右されにくく、安定した経営がしやすい。一方で、愛媛県には県を代表する地方銀行が複数あり、信用金庫はそうした銀行とすみ分けながら、より小さな事業者や地域に密着した役割を担ってきた。
20.86%の資本を、県都の信金から読む
愛媛信用金庫の自己資本比率20.86%という厚さは、県内最大の信金として、地域経済の変動に備えるための余力として読める。預貸率51.9%でよく貸しながらも、2割を超える自己資本を積むのは、いざというときに地域を支え続けるための備えだ。不良債権比率4.35%という水準も、厚い自己資本があれば十分に吸収できる。よく貸す積極性と、厚い資本による守りを両立させている——それが、ひめしんの数字に表れた姿勢だと読める。
愛媛県の金融を眺めると、海運県・愛媛のトップバンクとして船主業によく貸す伊予銀行、相互扶助の精神を継ぐ愛媛銀行といった地方銀行がある。そのなかで、愛媛信用金庫は、県都・松山を中心に、より地域に密着した中小事業者を支える役割を担う。地方銀行が県全体や県外にも目を向けるのに対し、信用金庫は地元により近い。厚い自己資本は、その地元密着の役割を長く果たし続けるための土台だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
愛媛の経済とともに
愛媛信用金庫の数字は、四国最大の都市・松山という恵まれた地盤と、県内最大の信金として地域に密着しながら厚い資本で守る歩みの、両方を映している。県都の安定した都市経済を地盤に、よく貸す積極性と、2割を超える厚い自己資本による守りを両立させてきた。県内最大の信金としての余力が、20.86%という厚い自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。愛媛信用金庫を見れば、県都・松山の都市経済と、そこで地域に密着しながら手堅く貸す県内最大の信金の姿が浮かぶ。同じ愛媛県の地方銀行は、船に貸す伊予銀行の記事、相互扶助を継ぐ愛媛銀行の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛媛県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛媛県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。宇和島信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(松山市に本店を置き、愛媛県内最大の信用金庫であること、合併を重ねて規模を広げたこと、中予を中心に県内に店舗を構えること)に関する記述=愛媛信用金庫および各種公開情報にもとづく。
松山・愛媛の地理・産業(四国最大の都市・松山、道後温泉、松山城、商業・サービス業、海運・造船・今治タオル・宇和島の水産など県内の多彩な産業)に関する記述=各種公開情報。