川之江信用金庫——紙のまちの小さな信金は、なぜ自己資本24%を積むのか
預貸率50.1%、預金897億円、自己資本比率23.91%、不良債権比率1.32%。四国中央市に本店を置く川之江信用金庫。紙のまちに根ざす「かわしん」が、なぜ厚い自己資本と低い焦げ付きを保つのか。その数字と歴史を読む。
愛媛県の四国中央市に本店を置く川之江信用金庫は、地元で「かわしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金897億円、店舗6。四国中央市の川之江を中心に、その周辺を地盤としている。預金900億円弱・店舗6という、小さな信用金庫だ。
本拠の四国中央市は、愛媛県の東端、香川・徳島・高知の三県と接する地にある。旧川之江市などが合併して生まれた市で、製紙・紙加工で全国に知られる「紙のまち」だ。製紙業の出荷額は全国でも有数の規模を誇り、ティッシュや紙製品の一大産地として知られる。川之江信用金庫は、こうした紙のまち・四国中央に根ざしてきた信金だ。
この小さな信金の数字で目を引くのは、自己資本比率23.91%という際立った厚さと、不良債権比率1.32%という低さだ。預貸率は50.1%と標準的だが、自己資本は突出して厚く、焦げ付きは低い。なぜ、紙のまちの小さな信金は、これほど資本を厚く積み、焦げ付きを低く保つのか。同じ愛媛県東部の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。川之江信用金庫の預金は897億円、貸出金は449億円。預貸率は50.1%で、預金の半分を貸出に回している。自己資本比率は23.91%と際立って厚く、不良債権比率は1.32%と低い。店舗数は6、中小企業等への貸出残高は347億円。
同じ愛媛県東部で、新居浜市を地盤とする東予信用金庫(預貸率48.7%・自己資本比率15.48%・不良債権比率4.87%)と比べると、規模は近いが、川之江信用金庫の自己資本比率23.91%は、東予信用金庫(15.48%)を上回り、不良債権比率1.32%は東予信用金庫(4.87%)を大きく下回る。預貸率は両者とも5割前後で近い。同じ愛媛県東部の小さな信金でも、川之江信用金庫は、より厚い自己資本を持ち、焦げ付きを際立って低く抑えている。これは、紙のまちの堅実な産業基盤と、慎重な貸出の積み重ねを映していると読める。
| 川之江信用金庫 | 東予信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 四国中央市 | 新居浜市 |
| 預金 | 897億円 | 1,076億円 |
| 預貸率 | 50.1% | 48.7% |
| 自己資本比率 | 23.91% | 15.48% |
| 不良債権比率 | 1.32% | 4.87% |
ともに愛媛県東部を地盤とする小さな二つの信金。預貸率は近いが、川之江信用金庫はより厚い自己資本を持ち、焦げ付きが際立って低い。紙のまちの堅実な産業基盤が数字に表れている。
紙のまちとともに——川之江信用金庫の歩み
川之江信用金庫は、紙のまち・四国中央の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。製紙・紙加工の事業者、関連する商店、地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。川之江信用金庫は、店舗6という小ささを保ちながら、紙のまちの暮らしと商いに寄り添ってきた。
四国中央という土地は、信用金庫にとって、製紙業に支えられた堅実な地盤だ。全国有数の製紙・紙加工の産地であり、関連する中小事業者が層をなす。一方で、製紙業は装置産業の性格を持ち、大手の企業も多い。地元に堅実な産業基盤があり、信用金庫は地域の中小に堅実に貸せる——この構図が、50.1%という標準的な預貸率と、1.32%という低い焦げ付きの背景にあると読める。そして、小さな信金が長く地域を支えるための備えとして、自己資本を厚く積んできたと読める。
23.91%の資本を、紙のまちから読む
川之江信用金庫の自己資本比率23.91%という厚さは、小さな信金が、長く地域を支えるために、利益を着実に資本として積んできたことの表れだと読める。預金900億円弱という規模の信用金庫が、これほど厚い自己資本を持つのは、紙のまちの堅実な産業基盤のもとで、慎重に貸し、利益を蓄えてきたからだと読める。
不良債権比率1.32%という低さは、製紙業に支えられた堅実な地盤で、貸出先を慎重に見極めてきたことを示す。焦げ付きの高い東予信用金庫と比べても、際立って低い。紙のまちで標準的に貸し、焦げ付きを低く抑え、厚い自己資本で守りを固める——それが、川之江信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。小さな信金が、堅実さを積み重ねて地域とともに在り続ける姿が、ここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
四国中央の経済とともに
川之江信用金庫の数字は、製紙業で知られる紙のまち・四国中央という土地と、そこで堅実に貸しながら厚い自己資本を積む小さな信金の歩みの、両方を映している。預金の半分を地元に貸しながら、焦げ付きを低く抑え、厚い自己資本で守りを固めてきた。紙のまちの堅実な経済が、23.91%という厚い自己資本と、1.32%という低い焦げ付きに表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。川之江信用金庫を見れば、紙のまち・四国中央の経済と、そこで堅実に貸す小さな信金の姿が浮かぶ。愛媛県の他の金融機関は、県都・松山の愛媛信用金庫、県トップの地銀伊予銀行、第二地銀の愛媛銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛媛県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛媛県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。東予信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(四国中央市に本店を置き、川之江を中心にその周辺を地盤とする信用金庫であること、四国中央市が旧川之江市などが合併して生まれ製紙・紙加工で知られる「紙のまち」であること、製紙業の出荷額が全国有数であること)に関する記述=川之江信用金庫および各種公開情報にもとづく。
四国中央・川之江の地理・産業(紙のまち、製紙業、紙加工、四県境)に関する記述=各種公開情報。