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越前信用金庫——奥越の城下町で、預金の2割しか貸さない信金は何を抱えるか

預貸率22.6%、預金1,828億円、自己資本比率17.03%、不良債権比率2.70%。大野市に本店を置く越前信用金庫。奥越の城下町・大野に根ざし、預金の2割しか貸さない信金が、残りをどうするのか。同じ福井の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 福井県

福井県の大野市に本店を置く越前信用金庫は、預金1,828億円を持つ信用金庫だ。店舗11。大野市を中心に、勝山市など福井県東部の奥越(おくえつ)地方を地盤としている。

本拠の大野市は、奥越の城下町だ。福井県の東端、岐阜県との県境に近い山あいの盆地に開け、白山にもほど近い。大野城を仰ぐ碁盤の目の城下町であり、湧き水の豊かな「水のまち」、朝市の立つまちとしても知られる。里芋やそば、しょうゆ豆といった食の文化も根づく。雪深く、人口減少と高齢化の進む山間の盆地——越前信用金庫は、こうした奥越の城下町・大野に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で、何より目を引くのは、預貸率22.6%という際立った低さだ。預金の、わずか2割強しか貸出に回していない。これまで見てきた信金の多くが4割から6割台であることを思えば、22.6%は突出して低い。では、残りの預金はどこへ行くのか。なぜ、奥越の信金は、これほど貸さないのか。同じ福井を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。越前信用金庫の預金は1,828億円、貸出金は414億円。預貸率は22.6%で、預金の2割強しか貸出に回していない。自己資本比率は17.03%、不良債権比率は2.70%。店舗数は11、中小企業等への貸出残高は327億円。

同じ福井県の信金と比べても、越前信用金庫の預貸率の低さは際立つ。県内の信金の預貸率がおおむね3割から4割台にあるなかで、22.6%はその下限を大きく下回る。これは、奥越という土地に、貸出先がきわめて限られていることの表れだと読める。山あいの盆地で、人口減少と高齢化が進み、大規模な事業所も多くない。預金は地元から集まるが、それを貸す相手が乏しい。結果として、集めた預金の大半は貸出ではなく、有価証券などの運用に向かう。自己資本比率17.03%という厚さは、その運用と利益の蓄積を映している。不良債権比率2.70%は低く、わずかな貸出は堅実に保たれている。

越前信用金庫の数字(令和7年3月末)
預金1,828億円
貸出金414億円
預貸率22.6%
自己資本比率17.03%
不良債権比率2.70%
店舗数11

預貸率22.6%は、全国の信金の中でもとりわけ低い水準。奥越という山間の盆地で、貸出先が限られていることの表れ。集めた預金の大半は運用に向かう。

奥越の城下町とともに——越前信用金庫の歩み

越前信用金庫は、奥越地方の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。城下町の商店、地場の食品・農産加工の事業者、農家、そして山あいの盆地に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、大野・勝山を中心とする奥越に根ざす信金へと歩んできた。

奥越という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先のきわめて限られた地盤だ。雪深い山間の盆地で、人口減少と高齢化が進み、大規模な事業所や旺盛な資金需要は多くない。地元の人々は堅実に預金を積むが、それを借りる相手は乏しい。その結果、集めた預金の大半は貸出に回らず、有価証券などの運用に向かう——これが、預貸率22.6%という際立った低さの背景だ。運用と利益の蓄積が、自己資本比率17.03%という厚みになって表れる。不良債権比率2.70%は低く、限られた貸出を堅実に保ってきたことを映す。貸す相手が少ない土地で、無理に貸さず、堅実に運用し、厚い資本を保つ——それが、この信金の数字の姿だ。

22.6%を、奥越から読む

越前信用金庫の預貸率22.6%という際立った低さは、人口減少と高齢化の進む奥越の山間の盆地で、貸出先が乏しいことの、ありのままの表れだと読める。これは、貸す努力が足りないということではない。山あいの盆地という土地の現実が、そのまま数字になっている。信用金庫は、会員から預かった大切な預金を、無理に貸して焦げ付かせるのではなく、堅実に運用して守る道を選んできた。それが、地域の人々の預金に対する、一つの責任の果たし方だとも読める。

預貸率22.6%という低い貸出と、不良債権比率2.70%という低い焦げ付き、そして17.03%という厚い資本——この組み合わせは、貸す相手の少ない土地で、無理をせず、堅実に守ってきた信金の姿を映している。攻めるより、守る。地元の預金を確実に守り、わずかな貸出を堅実に保つ。それが、越前信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

福井の経済とともに

越前信用金庫の数字は、奥越の城下町・大野という土地と、そこで堅実に守る信金の歩みの、両方を映している。預金の2割強しか貸さず、残りを堅実に運用し、厚い資本を保ちながら、大野・勝山を中心とする奥越の中小・零細事業者と人々を支えてきた。雪深い山間の盆地で、人口減少と高齢化が進む奥越の現実が、22.6%という際立って低い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。越前信用金庫を見れば、奥越の城下町の経済と、そこで堅実に守る信金の姿が浮かぶ。福井県の他の金融機関は、県のトップバンク福井銀行福邦銀行もあわせてどうぞ。福井県の金融機関の預金の地図については、特集「福井 預金の地図」もあります。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福井県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福井県の地域金融機関のページへ。

越前信用金庫と融資・保証のはなし

越前信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。預金を運用にもあてる堅実な経営でも、いざ借りるとなれば日頃の取引と信用が土台になります。口座と信用を育てる、融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。人口減少と高齢化が進み、大規模な事業所の少ない山間の地域では、預金は集まるが貸出先がきわめて限られ、預貸率が2割台まで下がることもある。集めた預金の大半は有価証券などの運用に向かい、その蓄積が厚い自己資本となって表れる。預貸率の低さは、必ずしも経営の弱さではなく、土地の経済の姿を映すものでもある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沿革・地域(大野市に本店を置き、勝山市など福井県東部の奥越地方を地盤とする信用金庫であること、合併を経て奥越に根ざす信金になったこと、大野市が福井県東端の岐阜県境に近い山あいの盆地に開けた城下町で大野城を仰ぐ碁盤の目の町並みを持ち湧き水の豊かな「水のまち」「朝市のまち」として知られること、里芋・そば・しょうゆ豆などの食文化が根づき雪深く人口減少と高齢化が進むこと)に関する記述=越前信用金庫および各種公開情報にもとづく。
大野・奥越の地理・経済(大野、奥越、城下町、大野城、水のまち、朝市、勝山、白山、盆地)に関する記述=各種公開情報。

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