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筑邦銀行——SBIの傘下入りを拒んだ「ちくぎん」は、久留米で何に貸すか

預貸率72.1%、店舗44。福岡県久留米市に本店を置く筑邦銀行。戦後、県南部の中小企業のために生まれた小さな地方銀行が、SBIの「第4のメガバンク構想」から初めて離脱し、自主独立を選んだ。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 福岡県

福岡県南部、筑後川のほとりに広がる久留米市。ブリヂストンの創業の地として知られ、医療やゴム、食品の産業が根づくこの町に、筑邦銀行の本店はある。地元では「ちくぎん」と呼ばれる、福岡県を地盤とする地方銀行だ。福岡県には、九州最大の福岡銀行をはじめ、西日本シティ銀行といった大手の地銀がひしめく。そのなかで筑邦銀行は、県南部に根ざした、小さな地方銀行として歩んできた。

どれくらい小さいか。筑邦銀行は、全国の地方銀行のなかでも、富山銀行に次いで規模の小さい部類に入るとされる。店舗は44。地盤は久留米を中心とする福岡県南部で、佐賀県鳥栖市、大分県日田市、そして東京にも店を構える。大手がひしめく福岡で、規模を競うのではなく、地域に密着して生きてきた銀行である。

その小さな銀行が、2025年末、全国の金融関係者の注目を集めた。インターネット金融大手・SBIが率いる地銀連合「第4のメガバンク構想」から、初めて離脱した銀行になったからだ。大きな後ろ盾を得るのではなく、自分の足で立つことを選んだ——その選択を、数字とともに読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。筑邦銀行の預金は7,943億円、貸出金は5,726億円。預貸率は72.1%で、預金の7割ほどを貸出に回している。自己資本比率は8.85%、不良債権比率は2.87%。店舗数は44、中小企業等への貸出残高は4,684億円にのぼる。

規模としては、同じ福岡県の大手とは大きな差がある。九州最大の福岡銀行の預金が13兆円を超えるのに対し、筑邦銀行は8千億円弱。その差は十数倍に及ぶ。預貸率72.1%は地方銀行として標準的な水準で、不良債権比率2.87%はやや高め。県南部という、人口減の進む地域を地盤とする小さな地銀の、等身大の数字がここにある。

福岡県内の主な普通銀行(令和7年3月末)
 筑邦銀行福岡銀行
種別地方銀行地方銀行
預金7,943億円138,926億円
貸出金5,726億円126,248億円
預貸率72.1%90.9%
自己資本比率8.85%10.58%

県を代表するのは九州最大の福岡銀行。預金量で十数倍の差がある。福岡には西日本シティ銀行北九州銀行といった大手もひしめく。そのなかで筑邦銀行は、県南部に根ざす小さな地銀として、規模でなく密着で生きてきた。

戦後、県南部の中小のために生まれた

筑邦銀行が生まれたのは、戦後まもない1952年(昭和27年)のことだ。福岡銀行の前身の一つに同じ「筑邦銀行」という名の銀行があったが、それとは別の、新しい銀行である。

創業の背景には、当時の福岡県南部の事情があった。戦後の復興期、産業界は多くの資金を必要としていたが、福岡県南部の中小企業は、復興のための資金を調達することさえ難しく、資金繰りに苦しんでいたと伝えられる。この金融難を打開しようと、県南部の商工会議所などを中心に、地元の銀行を作ろうという機運が高まった。そうして、本店を久留米市に置いて設立されたのが、筑邦銀行だった。地元の中小企業の資金繰りを支えるために、地元の手で作られた銀行——その出自が、その後の地域密着の経営の原点になっている。

以来、筑邦銀行は久留米を中心とする県南部に根を張り、2022年には創立70周年を迎えた。規模を大きく広げるのではなく、地元の事業者に寄り添い続ける。それが、この小さな地銀の選んだ生き方だった。

SBIと組み、そして離れる——「第4のメガバンク構想」からの離脱

その筑邦銀行が、近年の地方銀行再編の大きなうねりのなかに、一度は身を置いた。2020年、インターネット金融大手のSBIホールディングスと資本業務提携を結んだのだ。SBIは、業績に苦しむ地方銀行に出資し、システムや運用のノウハウを提供して再生を図る「第4のメガバンク構想」を掲げており、筑邦銀行もその地銀連合の一員となった。SBI証券の子会社との共同店舗を設けるなど、関係を築いていった。

ところが、その関係は長くは続かなかった。2025年12月、筑邦銀行はSBIホールディングスとの資本業務提携を解消した。SBIが、出資比率の引き上げや役員の派遣といった、提携を強化する提案を行ったのに対し、筑邦銀行はそれを受け入れなかった。これは、SBIの地銀連合に参加していた10行のうち、初めての離脱だった。

離脱の理由について、筑邦銀行は「地域密着の形を崩したくない」と説明したと伝えられる。SBIからの提案は、地元に根ざすこの銀行のあり方にとって、受け入れられないものだったという。頭取は、提携解消にあたって「久留米の地銀として、自主独立でやっていく」という趣旨を語ったと報じられている。大きな資本の傘の下に入って規模と効率を得るのか、それとも小さくとも自分の足で立ち続けるのか。筑邦銀行は、後者を選んだ。なお、SBIグループとの共同事業そのものは継続する考えも示されたと伝えられる。資本の関係は解いても、協業は続ける——そういう距離の取り方だと読める。

72.1%を、自主独立を選んだ小さな地銀から読む

筑邦銀行の預貸率72.1%は、地方銀行として標準的な水準だ。規模は全国の地銀でも最小級だが、集めた預金の7割ほどを、地元の事業者に貸している。この数字の背景には、県南部という地盤がある。久留米を中心とする福岡県南部は、人口減が進む地域でもある。大きく貸し先を増やせる土地ではないなかで、地元の中小に着実に貸してきたことが、この預貸率に表れている。不良債権比率2.87%というやや高めの数字も、規模の小さい銀行が地元の中小に深く関わってきたことの裏返しだと読める。

そして、SBIの傘下入りを拒んで自主独立を選んだことは、この数字の意味を、より際立たせる。規模を追って大きな資本に身を委ねるのではなく、地域密着という自らのかたちを守る。それは、効率や規模では測れない、地方銀行のもう一つの価値観だと読める。人口が減るなかでも、地元で取引先を増やしていく——頭取はそう語ったと伝えられる。小さくとも、自分の地盤で、自分の足で貸し続ける。72.1%という数字は、その選択の上に立っている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

久留米の経済とともに

筑邦銀行の数字は、人口減の進む福岡県南部という土地と、規模より地域密着を選んだ小さな地銀の生き方の、両方を映している。戦後、地元の中小のために生まれ、大手がひしめく福岡で小さな地銀として歩み、一度は大きな資本連合に加わりながら、最後は自主独立を選んだ。その選択は、規模の論理とは別の価値が、地方銀行にはあることを示している。

銀行の数字は、その土地の経済と、その銀行が選んだ生き方を映す鏡だ。筑邦銀行を見れば、久留米という土地と、規模に頼らず地域に根ざすという、一つの選択が浮かぶ。同じ福岡県の大手とあわせて眺めたい方は、九州最大の福岡銀行の記事や、西日本シティ銀行の記事もどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福岡県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。福岡銀行の数値も同出典。
沿革(1952年の設立、福岡県南部の中小企業の資金繰り難を打開しようと県南部の商工会議所等を中心に地元銀行設立の機運が起こり久留米市に本店を置いて設立されたこと、福岡銀行の前身の一つに同名の銀行があったが関連はないこと、全国の地方銀行で富山銀行に次いで規模が小さい部類とされること、佐賀県鳥栖市・大分県日田市・東京への店舗展開、2022年の創立70周年)に関する記述=筑邦銀行および各種公開情報にもとづく。
SBIとの提携と解消(2020年のSBIホールディングスとの資本業務提携、SBIの「第4のメガバンク構想」、2025年12月の資本業務提携解消、SBIによる出資比率引き上げ・役員派遣の提案に折り合わなかったこと、地銀連合10行からの初の離脱であること、「地域密着の形を崩したくない」「自主独立でやっていく」という趣旨の説明、SBIが保有株〔約3%〕を売却すること、共同事業は継続する考えが示されたこと)に関する記述=各種報道および公開情報にもとづく。
久留米市の産業(筑後川、ブリヂストン創業の地、ゴム・医療・食品などの産業)に関する記述=各種公開情報。

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