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福岡ひびき信用金庫——北九州の大型信金は、ものづくりの街で何に貸すか

預貸率52.5%、預金7,995億円、店舗41。北九州市に本店を置く福岡ひびき信用金庫。鉄と工業の街・北九州に根ざす「ひびしん」が、ものづくりの街で何に貸すか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 福岡県

福岡県の北九州市に本店を置く福岡ひびき信用金庫は、地元で「ひびしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金7,995億円、店舗41。福岡県の信用金庫として有数の規模を持つ大型信金である。北九州市を中心に、福岡県北部の広い範囲を地盤としている。名は、北九州の北に広がる響灘(ひびきなだ)に由来する。

本拠の北九州は、人口約92万を抱える政令指定都市だ。八幡製鉄所を起点に、日本の近代工業を牽引してきた「鉄の街」として知られる。いまも鉄鋼・化学・自動車関連など、ものづくりの集積が厚い。一方で、製鉄業の構造転換や人口減少という課題も抱える。福岡ひびき信用金庫は、こうしたものづくりの街・北九州の経済に根ざし、複数の信用金庫が合併を重ねながら、県内有数の規模へと育ってきた。

この信金の数字を見ると、7,995億円という大きな預金規模と、預貸率52.5%という水準が目を引く。工業都市にありながら、貸出は預金の半分強。なぜか。同じ福岡県北部の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。福岡ひびき信用金庫の預金は7,995億円、貸出金は4,199億円。預貸率は52.5%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は10.7%、不良債権比率は2.66%。店舗数は41、中小企業等への貸出残高は3,950億円。

同じ福岡県北部で、北九州都市圏の縁辺を地盤とする遠賀信用金庫(預貸率68.8%・預金2,665億円)と比べると、福岡ひびき信用金庫の規模は大きく上回るが、預貸率52.5%は遠賀信用金庫(68.8%)より低い。これは、両者の地盤の違いを映していると読める。遠賀がベッドタウンとして住宅取得などの需要に支えられるのに対し、福岡ひびき信用金庫が地盤とする北九州は、製鉄業の構造転換や人口減少という課題を抱える工業都市だ。大企業や体力のある製造業も多く、信用金庫が貸す中小向けの需要には、おのずと規模がある。豊かに預金は集まるが、それを地元で貸し切るだけの中小の資金需要には限りがある——その構図が、52.5%という預貸率に表れていると読める。

福岡県北部の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 福岡ひびき信用金庫遠賀信用金庫
地盤北九州市遠賀郡(県北部)
預金7,995億円2,665億円
預貸率52.5%68.8%
自己資本比率10.7%14.41%
不良債権比率2.66%3.07%

ともに福岡県北部を地盤とする二つの信金。規模は福岡ひびき信用金庫が大きく上回るが、預貸率は遠賀信用金庫が高い。地盤とする土地の産業構成の違いが、預貸率の差に表れている。

鉄の街とともに——福岡ひびき信用金庫の歩み

福岡ひびき信用金庫は、ものづくりの街・北九州の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。製鉄業を支える関連の中小事業者、商店、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。福岡ひびき信用金庫は、複数の信用金庫が合併を重ねることで規模を広げ、県内有数の信金へと成長してきた。鉄の街のものづくりに寄り添う姿勢は、その規模が大きくなったいまも変わらない。

北九州という土地は、信用金庫にとって大きな地盤だ。人口92万の政令指定都市として、工業の集積が厚く、預金を集める力は強い。一方で、製鉄業の構造転換や人口減少という課題を抱え、貸出を大きく伸ばす機会は、かつてほど多くない。豊かに預金は集まるが、それを地元で貸し切るだけの中小の資金需要には限りがある——この構図が、福岡ひびき信用金庫の数字の背景にあると読める。それでも、3,950億円という中小企業向け貸出残高は、ものづくりの街を支える役割の大きさを物語る。

52.5%を、工業都市の信金から読む

福岡ひびき信用金庫の預貸率52.5%という水準は、ものづくりの街・北九州で預金を集める力が強い一方、中小向けの貸出需要には規模があることの表れだと読める。工業の集積から潤沢な預金が集まるが、大企業や体力のある製造業が多く、信用金庫が貸す中小事業者の資金需要には限りがある。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、有価証券の運用などに向かい、預貸率は5割強にとどまる。

自己資本比率10.7%、不良債権比率2.66%という数字は、都市型の大型信金として標準的な水準だ。工業都市の豊富な預金を背景に、ものづくりを支える中小事業者へ堅実に貸しながら、地域に根を張り続ける——それが、福岡ひびき信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。製鉄業の構造転換という課題を抱える街で、地域の中小とともに歩むこの信金の役割は、今後ますます重みを増していくと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

北九州の経済とともに

福岡ひびき信用金庫の数字は、鉄と工業で栄えた北九州という街と、そこで豊富な預金を集めながら中小事業者に貸す大型信金の歩みの、両方を映している。8,000億円近い預金を持ちながら、その半分強を地元に貸し、ものづくりの街に根を張り続けてきた。工業都市で預金を集める力と、限られた中小の貸出需要が、52.5%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。福岡ひびき信用金庫を見れば、鉄の街・北九州のものづくりの経済と、そこで中小事業者に貸す大型信金の姿が浮かぶ。福岡県の他の金融機関は、同じ県北部の遠賀信用金庫、県都の福岡銀行、北九州が地盤の北九州銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福岡県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が中位の金融機関は、地元の資金需要に応えつつ、運用とのバランスを取っている一つの目安になる。ただし、体力のある大企業が多く集まる工業都市では、預金が豊富に集まる一方で中小向けの貸出が追いつかず、預貸率が低めにとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。遠賀信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(北九州市に本店を置き、福岡県北部を地盤とする信用金庫であること、名が響灘に由来すること、複数の信用金庫の合併を重ねて県内有数の規模へ育ったこと、北九州が八幡製鉄所を起点とする「鉄の街」で政令指定都市であること、製鉄業の構造転換や人口減少の課題を抱えること)に関する記述=福岡ひびき信用金庫および各種公開情報にもとづく。
北九州の地理・経済(響灘、鉄の街、八幡製鉄所、政令指定都市、鉄鋼・化学・自動車関連、ものづくり)に関する記述=各種公開情報。

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