遠賀信用金庫——筑豊と北九州のはざまで、信金はなぜ預金の7割近くを貸せるのか
預貸率68.8%、預金2,665億円、自己資本比率14.41%。遠賀郡に本店を置く遠賀信用金庫。北九州と筑豊のはざまの地に根ざす「おんしん」が、なぜ預金の7割近くを貸せるのか。その数字と歴史を読む。
福岡県の遠賀郡に本店を置く遠賀信用金庫は、地元で「おんしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2,665億円、店舗16。遠賀郡を中心に、北九州市や中間市、宗像など、福岡県の北部一帯を地盤としている。地域に密着した中規模の信金だ。
本拠の遠賀郡は、北九州市と、かつて炭鉱で栄えた筑豊地方のはざまに位置する。遠賀川が流れるこの一帯は、かつては石炭産業と結びつき、いまは北九州都市圏のベッドタウンとして、また自動車関連をはじめとする製造業の広がりのなかで、住宅地と中小事業者が混在する地域へと姿を変えてきた。遠賀信用金庫は、こうした北九州の縁辺で、住まいと中小の商いが息づく土地に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率68.8%という、信用金庫として高めの水準だ。預金の7割近くを貸出に回している。地方の中規模信金には預貸率が低めにとどまる先も多いなかで、なぜ遠賀信用金庫はこれほど貸せるのか。同じ福岡県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。遠賀信用金庫の預金は2,665億円、貸出金は1,834億円。預貸率は68.8%で、預金の7割近くを貸出に回している。自己資本比率は14.41%と厚め、不良債権比率は3.07%。店舗数は16、中小企業等への貸出残高は1,816億円。
注目すべきは、預貸率68.8%という高さだ。同じ福岡県で、県都・福岡市を地盤とする福岡信用金庫(預貸率68.6%・預金1,342億円)と比べると、両者の預貸率はともに7割近くでよく似ている。福岡県の信金は、よく貸す部類に入る。これは、福岡という地域に、住宅取得や中小事業者の資金需要が旺盛にあることの表れだと読める。とりわけ遠賀の地は、北九州都市圏のベッドタウンとして住宅取得の需要があり、また製造業の広がりのなかで中小事業者の資金需要もある。自己資本比率14.41%という厚めの数字も、よく貸しながら経営の体力を保っていることを示す。
| 遠賀信用金庫 | 福岡信用金庫 | |
|---|---|---|
| 地盤 | 遠賀郡(県北部) | 福岡市 |
| 預金 | 2,665億円 | 1,342億円 |
| 預貸率 | 68.8% | 68.6% |
| 自己資本比率 | 14.41% | 9.36% |
| 不良債権比率 | 3.07% | 2.28% |
ともに福岡県を地盤とする二つの信金。預貸率はともに7割近くでよく似ている。遠賀信用金庫は自己資本がより厚く、よく貸しながら体力も保つ姿がうかがえる。
北九州の縁辺とともに——遠賀信用金庫の歩み
遠賀信用金庫は、遠賀郡とその周辺の事業者や住民の相互扶助の金融機関として育ってきた。商店や中小の事業者、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。かつて炭鉱と結びついた地域経済が、北九州都市圏のベッドタウンと製造業の広がりへと姿を変えるなかで、遠賀信用金庫は地域の暮らしと商いに寄り添い続けてきた。
遠賀の地は、信用金庫にとって、よく貸せる地盤だ。北九州都市圏に隣接し、住宅地としての需要があり、製造業の広がりのなかで中小事業者の資金需要もある。地方の山間部のように貸出先が乏しいのとは異なり、住まいと中小の商いに、確かな資金需要がある。だからこそ、遠賀信用金庫は預金の7割近くを貸出に回せる。この高めの預貸率は、北九州という大きな都市圏の縁辺に位置する、この土地の経済の活力を映していると読める。
68.8%を、北九州の縁辺から読む
遠賀信用金庫の預貸率68.8%という高さは、北九州都市圏の縁辺で、住まいと中小の商いに確かな資金需要があることの表れだと読める。ベッドタウンとしての住宅取得、製造業の広がりのなかでの中小事業者の運転・設備資金——こうした需要に密着して応えることで、預金の7割近くを貸出に回せる。これは、貸出先が地域に乏しく預貸率が低くとどまる山間部の信金とは、対照的な姿だ。
自己資本比率14.41%という厚めの数字は、よく貸しながらも経営の体力を保っていることを示す。不良債権比率3.07%という水準も、地域の信金として標準的だ。北九州の縁辺の資金需要によく応えながら、厚めの自己資本で体力も保つ——それが、遠賀信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ福岡県の福岡信用金庫とよく似た高めの預貸率は、福岡という活力ある地域に根ざす信金が共有する特徴だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
遠賀の経済とともに
遠賀信用金庫の数字は、北九州と筑豊のはざまで、住まいと中小の商いが息づく遠賀という土地と、そこで旺盛な需要に応えてよく貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の7割近くを地元に貸しながら、厚めの自己資本で体力も保ってきた。北九州都市圏の縁辺の活力が、68.8%という高めの預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。遠賀信用金庫を見れば、北九州の縁辺・遠賀の経済と、そこでよく貸す信金の姿が浮かぶ。福岡県の他の金融機関は、県都の福岡銀行、北九州が地盤の北九州銀行、広域店舗網の西日本シティ銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福岡県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。福岡信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(遠賀郡に本店を置き、北九州市・中間市・宗像など福岡県北部を地盤とする信用金庫であること、遠賀郡が北九州市と筑豊地方のはざまに位置し遠賀川が流れること、かつて石炭産業と結びつき、いまは北九州都市圏のベッドタウンや製造業の広がりのなかにあること)に関する記述=遠賀信用金庫および各種公開情報にもとづく。
遠賀・北九州の地理・経済(遠賀郡、遠賀川、北九州都市圏、筑豊、ベッドタウン、製造業)に関する記述=各種公開情報。