大川信用金庫——日本一の家具のまち・大川で、おおかわしんは何に貸すか
預貸率40.1%、預金1,561億円、自己資本比率17.28%、不良債権比率9.04%。福岡県大川市に本店を置く大川信用金庫。不良債権比率9.04%という高さを軸に、日本一の家具のまち・大川に根ざす「おおかわしん」が何に貸すのか。同じ福岡の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
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福岡県の大川市に本店を置く大川信用金庫は、預金1,561億円を持つ信用金庫だ。店舗11。看板などでは「おおかわ信用金庫」とひらがなで表記され、地元で「おおかわしん」と呼ばれる。大川市を中心に、筑後地方の南西部を地盤とする。日本一の家具のまち・大川に根ざす信金だ。
本拠の大川市は、福岡県の南西部、筑後川が有明海に注ぐ河口近くに位置する、日本一の家具・木工のまちだ。大川家具の歴史は室町時代後期にさかのぼり、筑後川の船大工の技術を生かした指物づくりに始まるという。かつては筑後川の若津港が、背後の穀倉地帯の米麦や、日田地方の木材の積出港として栄え、その木材と技術を土台に木工産業が発展した。釘を使わない「大川組子」の建具は、観光列車「ななつ星」やホテルの内装にも用いられる伝統技術として知られる。大川信用金庫は、こうした家具・木工の地場産業と分かちがたく結びつき、地域の中小事業者に貸してきた。家具という基幹産業に深く寄り添う信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、不良債権比率9.04%という、福岡の信金のなかで際立って高い数字だ。預貸率40.1%と貸出は預金の4割にとどまり、自己資本比率17.28%と資本は厚いが、不良債権比率は9%を超える。なぜ、家具のまちの信金は、これほど高い不良債権比率を抱えるのか。同じ福岡の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。大川信用金庫の預金は1,561億円、貸出金は625億円。預貸率は40.1%で、預金の4割を貸出に回している。自己資本比率は17.28%、そして不良債権比率は9.04%。店舗数は11。
同じ福岡県の信金と比べてみる。三池炭鉱と水郷の大牟田柳川信用金庫(預貸率46.6%・不良債権比率5.79%)、筑豊の飯塚信用金庫(預貸率58.7%・不良債権比率3.48%)、福岡市の福岡信用金庫(預貸率68.6%・不良債権比率2.28%)と並べると、大川信用金庫の不良債権比率9.04%は、福岡の信金のなかで際立って高い。預貸率40.1%という低さとあわせて見ると、家具という構造変化の波を強く受けてきた地場産業に深く貸し、その浮き沈みを引き受けてきたことの表れだと読める。一方、自己資本比率17.28%という厚い資本は、この高い不良債権を吸収できる備えだ。低く貸し、厚く備え、産地の浮沈を引き受ける——家具のまちの信金の姿が、この数字に表れている。
| 大川信用金庫 | 大牟田柳川信用金庫 | 飯塚信用金庫 | 福岡信用金庫 | |
|---|---|---|---|---|
| 本店 | 大川市 | 大牟田市 | 飯塚市 | 福岡市 |
| 不良債権比率 | 9.04% | 5.79% | 3.48% | 2.28% |
| пред貸率 | 40.1% | 46.6% | 58.7% | 68.6% |
| 自己資本比率 | 17.28% | 15.8% | 17.72% | 9.36% |
いずれも福岡県の信金。大川の不良債権比率9.04%は際立って高い。家具という地場産業の浮沈を引き受けてきた跡を映す。
家具のまちとともに——大川信用金庫の歩み
大川信用金庫は、1951年(昭和26年)5月、大川町信用組合として設立された。日本一の家具のまち・大川の木工業者を支えるために生まれた組合だった。1953年(昭和28年)4月、信用金庫法に基づき「大川信用金庫」に改組する。本店は大川市榎津に置かれ、金融機関コードは1917。家具・木工という地場産業とともに歩み、1991年(平成3年)に創立40周年、2011年(平成23年)に創立60周年を迎えた。2008年(平成20年)には、久留米市に本店を置く筑後信用金庫との対等合併で合意したが、システム調整などに時間を要することから、2011年(平成23年)に合併は解消された。以降も大川は独立した信金として、家具のまちに根を張り続けている。地域貢献事業班を設け、家具産業の本業支援や経営課題の解決に早くから取り組み、「ビジネスコーディネーター」を掲げて、金融にとどまらず地域づくりに関わってきた。
日本一の家具のまち・大川という土地は、信用金庫にとって、地場産業と運命をともにする地盤だ。家具・木工は、住宅着工の動向、輸入家具との競争、生活様式の変化といった構造変化の波を強く受ける産業である。人も事業所も減るなかで、大川信金は、この家具産業に深く貸し続けてきた。不良債権比率9.04%という高さは、産地の構造変化と浮き沈みを、信金が逃げずに引き受けてきたことの表れだと読める。預貸率40.1%という低さは、慎重に貸さざるをえない地場産業の現実を映す。一方で、自己資本比率17.28%という厚い資本は、その焦げ付きを十分に吸収できる備えだ。地場産業と運命をともにし、その浮沈を厚い資本で引き受ける——家具のまちの信金の覚悟が、この数字に表れている。近年は、大川組子やデザイン家具の新しい展開、ふるさと納税やネット販売の支援など、産地の再生に向けた取り組みも進めている。
9.04%を、家具のまちから読む
大川信用金庫の不良債権比率9.04%という際立った高さは、日本一の家具のまち・大川で、構造変化の波を強く受ける地場産業に深く貸し、その浮き沈みを引き受けてきたことの表れだと読める。家具・木工は、住宅動向や輸入競争、生活様式の変化に左右される産業だ。大川信金は、この産業と運命をともにし、慎重に貸しながらも逃げずに支えてきた。預貸率40.1%という低さは、その慎重さの表れだ。
そのうえで、自己資本比率17.28%という厚い資本を保っていることが、この信金の覚悟を物語る。高い不良債権を抱えながらも、それを十分に吸収できる資本を備え、地場産業を支え続ける。家具のまちと運命をともにし、産地の再生に向き合う——その姿勢が、9.04%という高い不良債権比率と、17.28%という厚い自己資本に表れていると読める。日本一の家具のまち・大川で、おおかわしんは筑後の経済とともに歩んでいる。不良債権比率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
福岡の経済とともに
大川信用金庫の数字は、日本一の家具のまち・大川という土地と、家具産業とともに歩み構造変化を引き受けてきた信金の歴史の、両方を映している。構造変化の波を受ける地場産業に深く貸し、その浮沈を厚い資本で引き受けてきた。家具のまちという土地柄と、地場産業と運命をともにする覚悟が、9.04%という高い不良債権比率と、17.28%という厚い自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。大川信用金庫を見れば、家具のまち・大川の経済と、そこで地場産業を支え続ける信金の姿が浮かぶ。福岡県の他の金融機関は、三池炭鉱と水郷の大牟田柳川信用金庫、筑豊の飯塚信用金庫、福岡市の福岡信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福岡県の地域金融機関のページへ。
大川信用金庫は、日本一の家具のまち・大川に根ざし、構造変化を受ける地場産業を厚い資本で支え続ける信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。大牟田柳川信用金庫・飯塚信用金庫・福岡信用金庫の数値も同出典。
沿革(1951年5月に大川町信用組合として設立されたこと、1953年4月に信用金庫法に基づき大川信用金庫に改組したこと、本店が大川市榎津にあること、看板等で「おおかわ信用金庫」と表記すること、金融機関コードが1917であること、2008年に筑後信用金庫と合併合意したが2011年に解消したこと、地域貢献事業班を設け家具産業の本業支援に取り組んでいること)=大川信用金庫および各種公開情報にもとづく。
大川・筑後の地理・産業(大川市、筑後川、有明海、若津港、大川家具、大川組子、木工、指物、日田の木材、ななつ星)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。
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