ひまわり信用金庫——浜通り・いわきで、信金は何に貸すか
預貸率37.3%、自己資本比率10.48%、不良債権比率8.76%。いわき市に本店を置くひまわり信用金庫。小名浜の信用組合を源流とし、震災を越えた浜通りのまちに根ざす信金の数字を読みます。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
福島県いわき市に本店を置くひまわり信用金庫は、預金2,545億円、貸出金948億円、店舗17。いわき市を中心に、福島県の浜通り南部を地盤とする信用金庫です。
本店のあるいわき市は、福島県の南東部、太平洋に面した浜通りの中核都市です。小名浜港を擁する水産・工業のまちであり、かつての常磐炭田を母体に発展した工業地帯、そして温泉と「フラ」で知られる観光のまちでもあります。だが、この土地を語るうえで避けられないのが、2011年の東日本大震災と原子力災害です。浜通りは津波と原発事故という二重の打撃を受け、いわきもまた避難者を受け入れながら、復興の歩みを続けてきました。この、海と産業に恵まれながら震災の傷を抱える土地柄が、ひまわり信用金庫の数字を読む鍵になります。
この信用金庫の成り立ちは、1923年に設立された小名浜の信用組合にさかのぼります。戦後の信用金庫制度のもとで小名浜信用金庫となり、1974年に植田信用金庫と合併して磐洋信用金庫に、そして1992年に平信用金庫との合併で「ひまわり信用金庫」となりました。浜通り南部の信金が寄り合って育った歩みです。2023年には創業100周年を迎えています。数字の面で目を引くのは、不良債権比率8.76%という高さと、預貸率37.3%という低さの組み合わせです。
まず、数字を並べる
ひまわり信用金庫の預金は2,545億円、貸出金は948億円、預貸率37.3%。自己資本比率は10.48%、不良債権比率は8.76%。中小企業等向けの貸出先は5,964件です。
| 預金 | 2,545億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 948億円 |
| 預貸率 | 37.3% |
| 自己資本比率 | 10.48% |
| 不良債権比率 | 8.76% |
| 中小企業等向け貸出先 | 5,964件 |
| 店舗 | 17店 |
預貸率37.3%・不良債権8.76%。震災を越えた浜通りに根ざす信金の数字を読む。
37.3%と8.76%を、浜通りから読む
まず、目を引くのは不良債権比率8.76%という高さです。これは本紀行で見てきた信用金庫のなかでも高い部類にあります。数字だけを見れば守りに不安を覚えるかもしれませんが、ここで土地の事情を抜きに断じるのは早計です。浜通りは、震災と原子力災害という、一地域金融機関の経営努力だけでは抗いがたい打撃を受けた土地です。地域の事業者が被った傷は、その地に資金を貸してきた信金の貸出の質にも、長く影を落とします。8.76%という数字は、その地域とともに在り続けてきたことの裏返しという面も持ちます。
預貸率37.3%という低さも、同じ文脈で読めます。ひまわり信用金庫が貸す相手は、いわきを中心とする浜通り南部の中小事業者です。水産・水産加工、小名浜の工業に連なる事業者、まちの建設業や商業、観光が、その融資先に含まれると考えられます。震災後の人口動態の変化や事業の再編のなかで、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率37.3%は、そうした土地の事情を映していると読めます。自己資本比率10.48%は、高い不良債権を抱えながらも、規制上の水準を満たして地域に資金を供給し続けてきたことを示しています。
もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、震災の傷を抱える浜通りという土地を抜きに、この信金の数字は読めません。高い不良債権比率は、楽観できる数字ではありません。だが、それを「経営の怠慢」とだけ読むのは、この土地が背負ってきたものを見落とすことになります。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
ひまわり信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。ひまわり信用金庫にとって、その「地元」とは、震災と原子力災害を経た浜通り南部の地域経済です。地区の外へ自由に逃れられない信金は、地域が傷つけばその傷を共に負い、地域が立ち直ろうとすればその歩みに資金を添える立場にあります。高い不良債権比率と低い預貸率は、地区とともに在り続ける協同組織金融機関の宿命を、いまの浜通りという土地の上で映した数字とも読めます。
同じ県の、金融機関と並べてみる
同じ福島県を代表する地銀として、東邦銀行(預貸率70.2%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・東邦銀行(預貸率70.2%)と、浜通り南部に根ざすこのひまわり信用金庫(預貸率37.3%)とを並べると、同じ福島でも、県全域を相手にする地銀と、特定地域に密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、東邦銀行の記事もあわせてどうぞ。
同じ浜通りには、相双地域に根ざすあぶくま信用金庫があります。預貸率32.5%のあぶくま信用金庫もまた、震災と原子力災害の影響を色濃く受けた地域の信金でした。原発事故の被災地により近い相双の信金と、いわきに根ざす信金。同じ浜通りでも、震災との距離が数字の形に影を落としています。相双の信金の姿は、あぶくま信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、震災を越えて事業を続ける浜通りの事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。預貸率が低いことは、相対的に貸し先を求めている可能性をうかがう一つの目安にはなりますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、根を張る土地を映す
預貸率37.3%という低さと、不良債権比率8.76%という高さは、震災と原子力災害を経た浜通りに根を張り、地域とともに歩んできた信金の姿を映しています。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。ひまわり信用金庫の数字は、傷を抱えながらも前を向く浜通りのまちに残った信金の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。福島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、福島県の地域金融機関のページもどうぞ。
ひまわり信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。
- → 口座を育てる
- → 積立で信用をつくる
- → 与信枠の考え方
- → 創業支援保証とは
- → セーフティネット保証とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
ひまわり信用金庫の沿革(1923年に小名浜の信用組合として設立、戦後に小名浜信用金庫へ改組、1974年に植田信用金庫と合併して磐洋信用金庫、1992年に平信用金庫と合併してひまわり信用金庫、2023年に創業100周年)に関する記述=ひまわり信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
いわき市・小名浜港・常磐炭田・観光、東日本大震災と原子力災害の影響に関する記述=各種公開情報。
東邦銀行・あぶくま信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。
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