しののめ信用金庫——富岡の大型信金は、なぜ預金の4割しか貸さないのか
預貸率40.9%、預金1兆464億円、自己資本比率8.5%。富岡市に本店を置くしののめ信用金庫。富岡製糸場で知られる西毛に根ざす信金が、なぜ預金の4割しか貸さないのか。同じ群馬県の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
群馬県の富岡市に本店を置くしののめ信用金庫は、預金1兆464億円を持つ信用金庫だ。店舗52。富岡市を中心に、群馬県の西部・南部、いわゆる西毛地域を広く地盤としている。預金1兆円を超える、群馬県内でも大型の信金だ。
本拠の富岡市は、世界遺産・富岡製糸場で知られる、群馬県西部の街だ。明治の近代化を支えた製糸業の歴史を持ち、いまも養蚕・絹の記憶を残す。周辺の西毛地域は、農業や地場の中小製造業が広がり、高崎・前橋の都市圏にも近い。一方、人口減少や産業構造の変化のなかにある。しののめ信用金庫は、こうした富岡製糸の歴史を持つ西毛に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率40.9%という低さだ。1兆円を超える預金を集めながら、貸出はその4割ほどにとどまる。なぜ、富岡の大型信金は、これほど貸さないのか。同じ群馬県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。しののめ信用金庫の預金は1兆464億円、貸出金は4,283億円。預貸率は40.9%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は8.5%、不良債権比率は5.04%。店舗数は52、中小企業等への貸出残高は3,857億円。
同じ群馬県で、高崎市を地盤とする高崎信用金庫(預貸率40.6%・自己資本比率11.42%)と比べると、預貸率はほぼ同じ4割台だ。しののめ信用金庫(40.9%)も高崎信用金庫(40.6%)も、預金の4割ほどを貸出に回している。群馬県の信金がそろって預貸率4割台にとどまるのは、西毛・高崎をはじめとする群馬の地が、預金は集まるが、それを貸し切るだけの旺盛な資金需要には限りのある土地であることを映していると読める。一方、自己資本比率はしののめ信用金庫(8.5%)が高崎信用金庫(11.42%)を下回り、不良債権比率5.04%とあわせて見ると、しののめ信用金庫はやや厳しめの環境にあると読める。
| しののめ信用金庫 | 高崎信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 富岡市 | 高崎市 |
| 預金 | 1兆464億円 | 5,261億円 |
| 預貸率 | 40.9% | 40.6% |
| 自己資本比率 | 8.5% | 11.42% |
| 不良債権比率 | 5.04% | 4.35% |
ともに群馬県を地盤とする二つの信金。預貸率はそろって4割台。群馬の地が、預金は集まるが旺盛な資金需要には限りのある土地であることが数字に表れている。
富岡製糸の西毛とともに——しののめ信用金庫の歩み
しののめ信用金庫は、西毛の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。富岡の商店、養蚕・絹にかかわった事業者、西毛の農家や中小製造業、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。しののめ信用金庫は、合併を経て、群馬県西部・南部に広く根ざす大型信金へと成長してきた。
西毛という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先には限りのある地盤だ。富岡製糸の歴史を持ち、農業や地場の中小製造業が広がるが、人口減少や産業構造の変化のなかで、新たに大きく借り入れて投資する事業者は限られる。預金は集まるが、それを貸し切るだけの旺盛な資金需要は乏しい——この構図が、40.9%という低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、運用などに向かう。
40.9%を、西毛から読む
しののめ信用金庫の預貸率40.9%という低さは、富岡製糸の歴史を持つ西毛という、貸出先の限られた地盤を映していると読める。同じ群馬県の高崎信用金庫も預貸率は4割台で、群馬の信金がそろって低い預貸率にとどまることは、地盤の性格が個別の信金の方針を超えて数字に表れていることを示す。1兆円という豊富な預金を集めながら、貸出が4割にとどまるのは、地域の資金需要の限りを映していると読める。
自己資本比率8.5%という水準は、信用金庫として国内基準の4%は上回るが、より厚い信金ほどの余裕はない。不良債権比率5.04%という数字とあわせて見ると、人口減少や産業構造の変化のなかで、地域の事業者が置かれた環境のやや厳しめな面が映っていると読める。西毛で豊富な預金を集め、限られた貸出先に貸し、残りを運用に向ける——それが、しののめ信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。富岡製糸の歴史を抱える地域の経済が、40.9%という低い預貸率に表れている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
群馬の経済とともに
しののめ信用金庫の数字は、富岡製糸の歴史を持つ西毛という土地と、そこで豊富な預金を集めながら貸出を抑えめにする大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割ほどを地元に貸しながら、残りを運用に向け、地域を支えてきた。富岡製糸の記憶を抱える西毛の経済が、40.9%という低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。しののめ信用金庫を見れば、富岡製糸の西毛の経済と、そこで貸出を抑えめにする大型信金の姿が浮かぶ。群馬県の他の金融機関は、高崎の高崎信用金庫、前橋のあかぎ信用組合、県トップの地銀群馬銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。群馬県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、群馬県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。高崎信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(富岡市に本店を置き、群馬県西部・南部の西毛地域を地盤とする信用金庫であること、合併を経て預金1兆円を超える大型信金になったこと、富岡が世界遺産・富岡製糸場で知られる製糸業の歴史を持つ街であること、西毛に農業・地場の中小製造業が広がること)に関する記述=しののめ信用金庫および各種公開情報にもとづく。
富岡・西毛の地理・産業(富岡製糸場、世界遺産、製糸業、養蚕、絹、西毛、高崎、前橋)に関する記述=各種公開情報。