¥Today ニホン銀行紀行

しまなみ信用金庫——瀬戸内の島々で、信金は何を抱えて貸すか

預貸率41.9%、預金3,766億円、自己資本比率9.97%、不良債権比率7.24%。三原市に本店を置くしまなみ信用金庫。しまなみ海道の瀬戸内の島々に根ざす信金が、何に貸すのか。同じ広島の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 広島県

広島県の三原市に本店を置くしまなみ信用金庫は、預金3,766億円を持つ信用金庫だ。店舗22。三原市を中心に、尾道市や瀬戸内の島々を含む広島県東部(備後地方)を地盤としている。

本拠の三原市と隣の尾道市は、瀬戸内海に面した港町だ。尾道からは、本州と四国を島づたいに結ぶ西瀬戸自動車道——通称しまなみ海道が伸び、向島・因島・生口島といった島々をまたいでいく。これらの島々は、かつて造船で栄え、いまも柑橘(みかん・レモン)の産地として知られる。サイクリングの聖地としても世界的に名高い。一方で、島しょ部は人口減少と高齢化が進む地域でもある。しまなみ信用金庫は、こうしたしまなみ海道の瀬戸内の島々に根ざしてきた信金だ。その名は、この地域そのものを冠している。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率41.9%という抑えめの水準と、不良債権比率7.24%という高さだ。なぜ、瀬戸内の島々の信金は、こうした数字になるのか。同じ広島を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。しまなみ信用金庫の預金は3,766億円、貸出金は1,577億円。預貸率は41.9%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は9.97%、不良債権比率は7.24%。店舗数は22、中小企業等への貸出残高は1,278億円。

同じ広島県で、軍港・造船のまち呉の呉信用金庫(預貸率62.8%・不良債権比率3.70%)や、県内最大の広島信用金庫(預貸率64.3%)と比べると、しまなみ信用金庫は、預貸率が低く、不良債権比率が高い。呉信用金庫(預貸62.8%・不良3.70%)とは対照的だ。同じ瀬戸内の造船にゆかりのある土地でも、都市部の呉と、島しょ部を含む備後とでは、信金の数字が大きく異なる。人口減少と高齢化が進む島々を抱える地盤が、抑えめの預貸率と高めの焦げ付きに表れていると読める。

広島県の信用金庫の比較(令和7年3月末)
 しまなみ信金呉信用金庫広島信用金庫
本店三原市呉市広島市
預金3,766億円8,011億円1兆6,891億円
預貸率41.9%62.8%64.3%
自己資本比率9.97%11.24%
不良債権比率7.24%3.70%

しまなみ信用金庫は、都市部の呉信用金庫や広島信用金庫と比べ、預貸率が低く不良債権比率が高い。人口減少・高齢化の進む島しょ部を抱える地盤が表れている。

瀬戸内の島々とともに——しまなみ信用金庫の歩み

しまなみ信用金庫は、備後地方の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。造船関連の事業者、柑橘の農家、漁業者、観光・サービス業、地元の商店、そして島々に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、瀬戸内の島々を含む県東部に広く根ざす信金へと歩み、現在の「しまなみ信用金庫」の名は、この地域の地盤を映している。

瀬戸内の島々という土地は、信用金庫にとって、地縁の濃い地盤であると同時に、人口減少と高齢化という構造的な課題を抱えた地域でもある。造船は時代とともに浮き沈みがあり、柑橘や漁業も担い手の確保という難しさを抱えてきた。そうした土地で、地元の中小に密着して貸す——その姿勢が、預貸率41.9%という水準を支えている。預金は集まるが、島しょ部では大規模な貸出先が限られるため、預貸率は低めになり、残りは有価証券などの運用に向かう。一方、地場産業や零細事業者の浮き沈みが、不良債権比率7.24%という高めの数字に表れていると読める。自己資本比率9.97%は、信用金庫の国内基準4%を上回る水準だ。

41.9%と7.24%を、しまなみから読む

しまなみ信用金庫の預貸率41.9%という抑えめの水準と、不良債権比率7.24%という高さは、人口減少・高齢化が進む瀬戸内の島々で、地元に貸し続けてきたことの表れだと読める。島しょ部は、預金は集まるが大規模な貸出先の少ない土地だ。しまなみ信用金庫は、その中で地元の造船・柑橘・漁業・観光の中小に着実に貸し、残りを運用に向けてきた。地縁の濃い土地で地元に寄り添うぶん、地域の事業の浮き沈みも引き受けることになる。

預貸率41.9%という抑えめの貸出と、不良債権比率7.24%という高めの焦げ付き、そしてそれを支える9.97%という資本——この組み合わせは、瀬戸内の島々という土地で、課題を抱えながらも地元に貸し続ける信金の姿を映している。地域とともにあり、地域の現実を引き受ける。それが、しまなみ信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

広島の経済とともに

しまなみ信用金庫の数字は、しまなみ海道の瀬戸内の島々という土地と、そこで地元に貸し続ける信金の歩みの、両方を映している。預金の4割ほどを地元の会員に貸し、地域の浮き沈みを引き受けながら、三原・尾道を中心とする備後の島しょ部の中小・零細事業者を支えてきた。造船・柑橘・漁業・観光という島々の経済と、人口減少・高齢化の現実が、41.9%という預貸率と7.24%という不良債権比率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。しまなみ信用金庫を見れば、瀬戸内の島々の経済と、そこで地元に貸す信金の姿が浮かぶ。広島県の他の金融機関は、軍港・造船のまちの呉信用金庫、県内最大の広島信用金庫、県のトップバンク広島銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。広島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、広島県の地域金融機関のページへ。

しまなみ信用金庫と融資・保証のはなし

しまなみ信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。人口減少・高齢化が進む島しょ部に根ざす信金では、預金は集まるが大規模な貸出先が限られ、預貸率が4割前後に下がることがある。同時に、地場産業の浮き沈みを引き受けるなかで不良債権比率が高めに出ることもある。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の貸し方とリスクの抱え方が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。呉信用金庫・広島信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(三原市に本店を置き、尾道市や瀬戸内の島々を含む広島県東部・備後地方を地盤とする信用金庫であること、合併を経て県東部に広く根ざす信金になり現在の名がその地盤を映すこと、三原・尾道が瀬戸内海に面した港町で尾道からしまなみ海道(西瀬戸自動車道)が向島・因島・生口島などの島々をまたいで伸びること、これらの島々がかつて造船で栄え柑橘の産地として知られサイクリングの聖地でもあること、島しょ部で人口減少と高齢化が進むこと)に関する記述=しまなみ信用金庫および各種公開情報にもとづく。
三原・尾道・しまなみの地理・経済(三原、尾道、しまなみ海道、向島、因島、生口島、造船、柑橘、レモン、サイクリング、備後)に関する記述=各種公開情報。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ