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呉信用金庫——造船と軍港のまちで、くれしんは何に貸すか

預貸率62.8%、預金8,011億円、自己資本比率11.24%、不良債権比率3.70%。広島県呉市に本店を置く呉信用金庫。造船と旧海軍工廠のまち・呉に根ざす「くれしん」が、何に貸すのか。同じ広島の金融機関と比べながら、その数字と歴史を読む。

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広島県の呉市に本店を置く呉信用金庫は、預金8,011億円を持つ信用金庫だ。店舗44。地元では「くれしん」と呼ばれる。注目すべきは、呉市に本店を置く唯一の金融機関だということ。地銀も他の信金も呉市内に本店を置かないなか、呉信用金庫だけが呉に本店を構え、このまちの産業と暮らしに根を張ってきた。近年は県都・広島市内への進出にも力を入れている。

本拠の呉は、瀬戸内海に面した、特別な歴史を持つまちだ。明治以降、旧海軍の一大拠点として発展し、戦艦「大和」を建造した呉海軍工廠(こうしょう)を擁する軍港都市として栄えた。戦後、その造船・鉄鋼の技術と設備は民間に引き継がれ、造船・鉄鋼・機械のものづくりのまちとして歩んできた。山が海に迫る地形に、造船所と工場、坂の住宅地が密集する。呉信用金庫は、こうした造船と軍港の歴史を持つものづくりのまち・呉に根ざし、地域の事業者と住民を支えてきた。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率62.8%という高さだ。預金の6割超を貸出に回している。なぜ、造船のまちの信金は、こうした数字になるのか。同じ広島を地盤とする金融機関とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。呉信用金庫の預金は8,011億円、貸出金は5,032億円。預貸率は62.8%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は11.24%、不良債権比率は3.70%。店舗数は44、中小企業等への貸出先は2万8千先を超える。

同じ広島県を地盤とする金融機関と比べてみる。県内最大の信金広島信用金庫(預貸率64.3%)と並べると、呉信用金庫の預貸率62.8%は近い水準で、広島の都市部の信金は、いずれもよく貸す。県を代表する広島銀行(預貸率85.8%)のような地銀ほどではないが、信金として高めの預貸率だ。造船・鉄鋼・機械のものづくりが集積する呉は、信用金庫が貸す相手の厚い土地であり、呉信用金庫は本店を置く唯一の金融機関として、このまちの事業者に深く貸してきたと読める。県都・広島市内への進出も、貸出先の厚みを広げる動きだ。

広島県の地域金融機関(令和7年3月末)
 呉信用金庫広島信用金庫広島銀行
本店呉市広島市広島市
業態信用金庫信用金庫地方銀行
預金8,011億円1兆6,891億円
預貸率62.8%64.3%85.8%
自己資本比率11.24%13.42%
不良債権比率3.70%3.02%

広島の都市部の信金はいずれもよく貸す。呉信用金庫は、ものづくりのまち・呉に本店を置く唯一の金融機関として深く貸している。

軍港から造船のまちへ——呉信用金庫の歩み

呉信用金庫は、軍港都市・呉の発展とともに歩んできた信用金庫だ。1925年(大正14年)9月、呉市信用組合として設立された。当時の呉は、海軍工廠を中心に人口が急増し、造船・鉄鋼の労働者と、それを支える商工業者が集まる、活気あるまちだった。呉信用金庫は、その庶民と中小事業者の相互扶助のための金融機関として生まれた。1943年に市街地信用組合へ転換・改組し、1951年(昭和26年)10月、信用金庫法に基づき呉信用金庫へと改組した

呉という土地は、信用金庫にとって、組合員(会員)の資金需要の厚い地盤だ。戦後、海軍工廠の造船・鉄鋼の技術と設備は民間に引き継がれ、呉は造船・鉄鋼・機械のものづくりのまちとして歩んできた。大手の造船所や鉄鋼所に連なる、無数の下請け・関連の中小事業者が、設備投資や運転資金を必要とする。呉市に本店を置く唯一の金融機関として、このまちのものづくりに深く貸す——それが呉信用金庫の役割だ。「地域社会の繁栄に貢献する」「地域社会から信頼される信用金庫を目指す」を経営理念に掲げ、呉、そして広島を元気にすることをモットーとしている。

62.8%を、呉から読む

呉信用金庫の預貸率62.8%という高さは、造船・鉄鋼・機械のものづくりのまち・呉に本店を置く唯一の金融機関として、地域の事業者に深く貸していることの表れだと読める。大手の造船所・鉄鋼所に連なる中小事業者がひしめく呉は、信用金庫が貸す相手の厚い土地だ。呉信用金庫は、このまちのものづくりに密着して貸し、預金の6割超を貸出に回している。県都・広島市内への進出も、貸出先を広げる動きだ。

不良債権比率3.70%という水準は、造船・鉄鋼という景気や市況に左右されやすい産業の浮き沈みを引き受けながら、焦げ付きを一定に抑えてきたことを映す。自己資本比率11.24%は、信用金庫として基準を満たす水準だ。軍港から造船のまちへと歩んだ呉で、本店を置く唯一の金融機関としてものづくりに深く貸す——それが、呉信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

広島の経済とともに

呉信用金庫の数字は、造船と軍港の歴史を持つ呉という土地と、そこに本店を置く唯一の金融機関として歩んだ信金の歩みの、両方を映している。預金の6割超を地域に貸し、造船・鉄鋼・機械のものづくりを支えてきた。戦艦「大和」を生んだまちの工業の厚みが、62.8%という預貸率と、8,011億円という預金規模に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。呉信用金庫を見れば、造船のまち・呉の経済と、そこに根を張る信金の姿が浮かぶ。広島県の他の金融機関は、県内最大の信金広島信用金庫、県を代表する広島銀行、山口資本傘下のもみじ銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。広島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、広島県の地域金融機関のページへ。

呉信用金庫と融資・保証のはなし

預貸率62.8%の呉信用金庫は、ものづくりの中小事業者によく貸す信用金庫です。実際に借りることを考えるなら、申込の前に手順と制度を押さえておきたいもの。融資の進め方と保証のしくみを、用語とあわせてまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。造船・鉄鋼・機械などのものづくりが集積する都市を地盤とする信用金庫は、大手企業に連なる中小事業者に深く貸し、預貸率が6割超になることがある。景気や市況に左右されやすい産業だけに、焦げ付きを示す不良債権比率や、備えを示す自己資本比率とあわせて見ることが大切になる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。広島信用金庫の数値も同出典。広島銀行の預貸率は各種公開情報にもとづく。
沿革・地域(呉市に本店を置く唯一の金融機関であること、1925年9月に呉市信用組合として設立され、1943年に市街地信用組合へ転換・改組、1951年10月に呉信用金庫へ改組したこと、「地域社会の繁栄に貢献する」を経営理念に掲げ広島市内への進出にも取り組んでいること、呉が旧海軍工廠を擁する軍港都市として発展し、戦後は造船・鉄鋼・機械のものづくりのまちとなったこと)に関する記述=呉信用金庫および各種公開情報にもとづく。
呉・広島の地理・歴史(呉、呉海軍工廠、戦艦大和、軍港、造船、鉄鋼、瀬戸内海)に関する記述=各種公開情報。

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