¥Today ニホン銀行紀行

釧路信用金庫——霧と漁港のまちで、信金は何を抱えて貸すか

預貸率47.9%、預金2,623億円、自己資本比率11.28%、不良債権比率7.75%。釧路市に本店を置く釧路信用金庫。霧と漁港のまち・釧路に根ざす信金が、何に貸すのか。同じ北海道の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 北海道

北海道の釧路市に本店を置く釧路信用金庫は、預金2,623億円を持つ信用金庫だ。店舗18。「くしろしん」の愛称で知られ、釧路市を中心に、道東の釧路・根室地方を地盤としている。

本拠の釧路市は、霧と漁港のまちだ。太平洋に面した道東最大の都市であり、かつては全国一の水揚げを誇った漁港として栄えた。いまも水産業は地域の基幹産業であり、水産加工、製紙、港湾・物流が連なる。夏には海霧(じり)が街を包み、釧路湿原という日本最大の湿原も近い。冷涼な気候と豊かな自然、そして水産のまち——釧路信用金庫は、こうした霧と漁港のまち・釧路に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、不良債権比率7.75%という高さだ。預貸率は47.9%で、預金の半分弱を貸出に回している。なぜ、漁港のまちの信金は、こうした数字になるのか。同じ北海道を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。釧路信用金庫の預金は2,623億円、貸出金は1,257億円。預貸率は47.9%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は11.28%、不良債権比率は7.75%。店舗数は18、中小企業等への貸出残高は1,018億円。

同じ北海道で、十勝の帯広信用金庫(預貸率41.8%・不良債権比率3.37%)や、製紙と港の苫小牧信用金庫(預貸率50.1%・不良債権比率3.24%)と比べると、釧路信用金庫の不良債権比率7.75%は高い。同じ道東の帯広信用金庫(3.37%)と比べても倍以上だ。水産業は、漁獲量の変動や資源の減少、燃料費の高騰といった浮き沈みのある産業であり、人口減少も進む。そうした地盤で、地元に貸し続けてきたことが、高めの不良債権比率に表れていると読める。預貸率47.9%は、道東の信金としては標準的な水準だ。

北海道の信用金庫の比較(令和7年3月末)
 釧路信用金庫帯広信用金庫苫小牧信金
本店釧路市帯広市苫小牧市
預金2,623億円8,635億円5,179億円
預貸率47.9%41.8%50.1%
自己資本比率11.28%15.40%20.49%
不良債権比率7.75%3.37%3.24%

釧路信用金庫の不良債権比率7.75%は、道内の信金の中で高め。漁獲の変動や人口減少といった水産のまちの浮き沈みを引き受けてきた跡が表れている。

霧と漁港のまちとともに——釧路信用金庫の歩み

釧路信用金庫は、道東の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。水産業者、水産加工の事業者、製紙・港湾関連の中小、地元の商店、そして道東に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、釧路・根室地方に広く根ざす信金へと歩んできた。

道東という土地は、信用金庫にとって、水産を軸とした資金需要のある地盤だ。漁業、水産加工、製紙、港湾・物流といった地場産業に連なる中小・零細事業者が点在する。水産業は、漁獲量や資源の変動、市況や燃料費の影響を受けやすく、浮き沈みのある産業だ。そうした土地で、地元の中小に密着して貸す——その姿勢が、預貸率47.9%という水準を支えている。一方、水産業や地場産業の浮き沈み、そして人口減少が、不良債権比率7.75%という高めの数字に表れていると読める。自己資本比率11.28%は、信用金庫の国内基準4%を上回り、こうした焦げ付きを吸収する水準だ。

7.75%を、釧路から読む

釧路信用金庫の不良債権比率7.75%という高さは、漁獲の変動や人口減少が進む道東の水産のまちで、地元に貸し続けてきたことの表れだと読める。水産を軸とした道東の経済は、好漁の年もあれば不漁の年もある、浮き沈みのある世界だ。釧路信用金庫は、その地盤で、地元の漁業・水産加工・関連の中小に貸し続けてきた。地域とともにあるぶん、地域の浮き沈みも引き受けることになる。

預貸率47.9%という、預金の半分弱を貸す水準と、不良債権比率7.75%という高めの焦げ付き、そしてそれを吸収する11.28%という資本——この組み合わせは、霧と漁港のまちで、浮き沈みを引き受けながらも地元に貸し続ける信金の姿を映している。地域とともにあり、地域の現実を引き受ける。それが、釧路信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

北海道の経済とともに

釧路信用金庫の数字は、霧と漁港のまち・釧路という土地と、そこで地元に貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元の会員に貸し、地域の浮き沈みを引き受けながら、釧路を中心とする道東の中小・零細事業者を支えてきた。水産を軸とした浮き沈みのある経済と、人口減少の現実が、47.9%という預貸率と7.75%という不良債権比率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。釧路信用金庫を見れば、道東の経済と、そこで地元に貸す信金の姿が浮かぶ。北海道の他の金融機関は、十勝の帯広信用金庫、製紙と港の苫小牧信用金庫、道都の北海道信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。

釧路信用金庫と融資・保証のはなし

釧路信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。水産業を基幹産業とする土地に根ざす信金では、漁獲量や市況の変動、人口減少の影響を受けやすく、地元に貸し続けるなかで不良債権比率が高めに出ることもある。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金がどれだけの備えを持つかが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。帯広信用金庫・苫小牧信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(釧路市に本店を置き、「くしろしん」の愛称で知られ、釧路・根室地方を地盤とする信用金庫であること、合併を経て道東に広く根ざす信金になったこと、釧路市が太平洋に面した道東最大の都市でかつて全国一の水揚げを誇った漁港として栄えたこと、いまも水産業が基幹産業で水産加工・製紙・港湾物流が連なること、夏に海霧が街を包み釧路湿原が近いこと)に関する記述=釧路信用金庫および各種公開情報にもとづく。
釧路・道東の地理・経済(釧路、漁港、水産、水産加工、製紙、海霧、釧路湿原、根室、道東)に関する記述=各種公開情報。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ