空知商工信用組合——炭鉱の街・美唄で、信金にならなかった信組は何に貸すか
預貸率77.9%、預金808億円、自己資本比率10.75%、不良債権比率2.59%。北海道美唄市に本店を置く空知商工信用組合。国内最大の産炭地・空知に根ざし、信用金庫に転換せず信用組合のまま歩んできた組織が、預金の8割近くを貸す理由を、同じ北海道の信組と比べながら読む。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
北海道の美唄市に本店を置く空知商工信用組合は、預金808億円を持つ信用組合だ。店舗9。「空知しんくみ」の呼び名で知られ、美唄市を本拠に、岩見沢・滝川・深川といった空知地方の都市や札幌市を中心に営業している。札幌と旭川のあいだに広がる国内最大の産炭地・空知に根ざしてきた組織だ。
本拠の美唄市は、かつて三菱・三井などの炭鉱で栄えた石炭の町だ。空知地方は国内最大の産炭地として日本の近代化を支え、美唄もその一翼を担った。三菱美唄炭鉱は戦前最高で年間189万トンの出炭を記録し、石炭を運ぶ鉄道も走った。やがてエネルギーが石炭から石油へ移り、炭鉱が次々と閉じると、空知一帯は人口減と産業構造の転換を経験した。空知商工信用組合は、こうした炭鉱の盛衰を越えてきた空知に根ざしてきた組織だ。
この信組の数字で最も目を引くのは、預貸率77.9%という、際立って高い水準だ。預金808億円に対し、貸出金は630億円。預かったお金の8割近くを貸している。北海道の協同組織金融機関では預貸率が3〜5割台にとどまることも多いなか、これは突出している。なぜ、産炭地の信組は、これほど貸すのか。同じ北海道の信組とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。空知商工信用組合の預金は808億円、貸出金は630億円。預貸率は77.9%で、預金の8割近くを貸出に回している。自己資本比率は10.75%、不良債権比率は2.59%。店舗数は9。
同じ北海道の信組と比べてみる。札幌を地盤とする札幌中央信用組合(預貸率71.5%・自己資本9.82%)、函館の函館商工信用組合(預貸率68.3%・自己資本10.36%)と並べると、空知商工信用組合の預貸率77.9%は最も高い。北海道の信組のなかでも、よく貸す部類に入る。不良債権比率2.59%は、この三者のなかでも低めだ。よく貸して、なお焦げ付きが少ない——炭鉱の盛衰を越えてきた土地で、地元の中小事業者に深く貸しながら、堅実に経営してきた姿が読み取れる。自己資本比率10.75%は突出して厚くはないが、よく貸す信組として相応の水準だ。
| 空知商工信用組合 | 札幌中央信用組合 | 函館商工信用組合 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 美唄市 | 札幌市 | 函館市 |
| 預貸率 | 77.9% | 71.5% | 68.3% |
| 自己資本比率 | 10.75% | 9.82% | 10.36% |
| 不良債権比率 | 2.59% | 1.59% | 1.82% |
いずれも北海道の信組。空知商工は規模では中ほどだが、預貸率は三者のなかで最も高い。
信金にならなかった信組——空知商工信用組合の歩み
空知商工信用組合は、1953年(昭和28年)に設立された。美唄市に本店を置き、空知地区および札幌市などを中心に営業する協同組織の金融機関だ。注目すべきは、1951年の信用金庫法制定に基づく信用金庫への転換を行わず、信用組合として営業を続けてきたことだ。多くの庶民金融機関が信用金庫へと衣替えしていったなかで、この組織は信用組合のまま歩んできた。2001年(平成13年)には、前年に経営破綻した道央信用組合(本店・滝川市)の事業を譲り受け、滝川・芦別・赤平・深川・富良野・上富良野・留萌の各支店として営業を引き継いだ。地元の中小企業者や地域の生活者が組合員となって支え合う「相互扶助」を理念に掲げている。
信用組合は、信用金庫よりもさらに地域や組合員との結びつきが強い協同組織だ。原則として組合員でなければ取引できず、その分、組合員=地元の中小事業者への融資に資金が向かいやすい。信金に転換せず信組であり続けたことと、預貸率77.9%という高さは、無関係ではないと読める。組合員である地元の中小事業者の資金需要に、深く応えてきたことの表れだ。炭鉱の街・美唄から空知一帯へ、産業構造の転換を経験した土地で、それでも地元に貸し続ける——破綻した道央信組の受け皿となったことも含め、地域の金融を担う最後の砦としての役割を果たしてきたと読める。
77.9%を、産炭地から読む
空知商工信用組合の預貸率77.9%という際立った高さは、信用組合として、組合員である地元の中小事業者の資金需要に深く応えてきたことの表れだと読める。信金に転換せず信組であり続けた選択が、組合員への融資に資金を向けやすくしている。炭鉱の盛衰を越えた空知で、貸出は地域の商いと暮らしに向かってきた。
そのうえで、不良債権比率2.59%という低さが共存していることが、この信組の性格を物語る。よく貸す金融機関は焦げ付きが増えがちだが、空知商工信用組合はよく貸して、なお焦げ付きが少ない。産業構造の転換を経験した土地で、組合員と相互に支え合いながら、堅実に貸してきた——その姿勢が、77.9%という高い預貸率と、2.59%という低い不良債権比率に表れていると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
北海道の経済とともに
空知商工信用組合の数字は、炭鉱で栄えた空知という土地と、信金に転換せず信組として歩んできた組織の歴史の、両方を映している。組合員である地元の中小事業者に深く貸し、低い焦げ付きを保ちながら、産炭地・空知の経済を支えてきた。石炭の盛衰を越えた土地で地域に貸し続ける姿が、77.9%という高い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。空知商工信用組合を見れば、産炭地・空知の経済と、そこで組合員に貸す信組の姿が浮かぶ。北海道の他の金融機関は、札幌の札幌中央信用組合、函館の函館商工信用組合、米どころ深川の北空知信用金庫、道内最大の地銀北海道銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。
空知商工信用組合は、産炭地・空知に深く根ざした信用組合です。組合員である事業者に貸す信組とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。札幌中央信用組合・函館商工信用組合の数値も同出典。
沿革(1953年に設立されたこと、美唄市に本店を置くこと、1951年の信用金庫法制定に基づく信用金庫転換を行わず信用組合として営業を続けてきたこと、2001年に経営破綻した道央信用組合の事業を譲り受けたこと、「空知しんくみ」と呼ばれること、相互扶助を理念とすること)=空知商工信用組合および各種公開情報にもとづく。
美唄・空知の地理・産業(美唄市、空知、国内最大の産炭地、三菱美唄炭鉱・三井美唄炭鉱、石炭、炭鉱鉄道、岩見沢・滝川・深川)に関する記述=各種公開情報。
本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。