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のと共栄信用金庫——能登の信金は、復興のただ中で何に貸すか

預貸率54.0%、預金3,380億円、自己資本比率12.26%、不良債権比率8.32%。七尾市に本店を置くのと共栄信用金庫。能登半島に根ざし、地震からの復興のただ中にある信金が、何に貸すのか。同じ石川の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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ニホン銀行紀行 ・ 石川県

石川県の七尾市に本店を置くのと共栄信用金庫は、預金3,380億円を持つ信用金庫だ。店舗24。「のとしん」の愛称で知られ、七尾市を中心に、能登半島を地盤としている。

本拠の七尾市は、能登半島の中核都市だ。能登島を抱く七尾湾に面し、古くは加賀藩の港町として、また和倉温泉を擁する観光地として栄えてきた。能登半島は、輪島塗や珠洲焼といった伝統工芸、漁業、農業、観光が地場の産業として根づく土地だ。一方で、人口減少と高齢化が進む地域でもある。のと共栄信用金庫は、こうした能登半島に根ざしてきた信金だ。

そして、この地は2024年1月の能登半島地震で大きな被害を受けた。のと共栄信用金庫の数字は、いま、復興のただ中にある地域の姿と切り離せない。この信金の数字で目を引くのは、不良債権比率8.32%という高さだ。預貸率は54.0%で、預金の半分強を貸出に回している。なぜ、能登の信金は、こうした数字になるのか。同じ石川を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。のと共栄信用金庫の預金は3,380億円、貸出金は1,825億円。預貸率は54.0%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は12.26%、不良債権比率は8.32%。店舗数は24、中小企業等への貸出残高は1,436億円。

同じ石川県で、能登に根ざす興能信用金庫(預貸率50.5%・不良債権比率4.82%)や、白山のふもとのはくさん信用金庫(預貸率56.8%・不良債権比率2.8%)と比べると、のと共栄信用金庫の不良債権比率8.32%は高い。同じ能登に根ざす興能信用金庫(4.82%)と比べても高めだ。預貸率54.0%は、よく貸す水準にある。能登という、人口減少と高齢化が進み、さらに地震の影響を受けた土地で、地元に貸し続けてきた——その姿が、高めの不良債権比率に表れていると読める。

石川県の信用金庫の比較(令和7年3月末)
 のと共栄信金興能信用金庫はくさん信金
本店七尾市鳳珠郡白山市
預金3,380億円2,783億円3,225億円
預貸率54.0%50.5%56.8%
自己資本比率12.26%12.25%8.79%
不良債権比率8.32%4.82%2.8%

のと共栄信用金庫の不良債権比率8.32%は、同じ能登の興能信用金庫より高い。人口減少・高齢化が進み、地震の影響を受けた土地で貸し続けてきた跡が表れている。

能登半島とともに——のと共栄信用金庫の歩み

のと共栄信用金庫は、能登半島の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。輪島塗や珠洲焼の職人、漁業者、農家、和倉温泉をはじめとする観光業、地元の商店、そして能登に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、能登半島に広く根ざす信金へと歩んできた。

能登半島という土地は、信用金庫にとって、地縁の濃い地盤であると同時に、人口減少と高齢化という構造的な課題を抱えた地域でもある。伝統工芸・漁業・農業・観光といった地場産業は、規模が大きくなく、後継者の確保や需要の変動といった難しさを抱えてきた。そうした土地で、地元の中小に密着して貸し続ける——その姿勢が、預貸率54.0%という水準を支えている。一方、地場産業や零細事業者の浮き沈み、そして2024年の地震の影響が、不良債権比率8.32%という高めの数字に表れていると読める。自己資本比率12.26%は、信用金庫の国内基準4%を上回り、こうした焦げ付きを吸収する備えとなる水準だ。

8.32%を、能登から読む

のと共栄信用金庫の不良債権比率8.32%という高さは、人口減少・高齢化が進み、さらに地震の影響を受けた能登という土地で、地元に貸し続けてきたことの表れだと読める。地縁の濃い能登で、信用金庫は地元の事業者に寄り添い、その浮き沈みをともに引き受けてきた。災害は、地域の事業者の経営に重くのしかかる。のと共栄信用金庫の数字は、そうした地域とともにある金融機関の現在地を映している。

預貸率54.0%という、よく貸す水準と、不良債権比率8.32%という高めの焦げ付き、そしてそれを吸収する12.26%という資本——この組み合わせは、能登という土地で、困難のただ中にあっても地元に貸し続ける信金の姿を映している。地域とともにあり、地域の浮き沈みを引き受ける。それが、のと共栄信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

石川の経済とともに

のと共栄信用金庫の数字は、能登半島という土地と、そこで地元に貸し続ける信金の歩みの、両方を映している。預金の半分強を地元の会員に貸し、地域の浮き沈みを引き受けながら、七尾を中心とする能登の中小・零細事業者を支えてきた。人口減少・高齢化と地震からの復興という能登の現実が、8.32%という不良債権比率と54.0%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。のと共栄信用金庫を見れば、能登の経済と、そこで困難のただ中にあっても地元に貸す信金の姿が浮かぶ。石川県の他の金融機関は、能登の興能信用金庫、白山のふもとのはくさん信用金庫、県のトップバンク北國銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。石川県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、石川県の地域金融機関のページへ。

のと共栄信用金庫と融資・保証のはなし

のと共栄信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。人口減少・高齢化が進み、災害の影響も受けた地域に根ざす信金では、地元に貸し続けるなかで地域の事業の浮き沈みを引き受け、不良債権比率が高めに出ることもある。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金がどれだけの備えを持つかが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。興能信用金庫・はくさん信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(七尾市に本店を置き、「のとしん」の愛称で知られ、能登半島を地盤とする信用金庫であること、合併を経て能登半島に広く根ざす信金になったこと、七尾市が能登半島の中核都市で能登島を抱く七尾湾に面し加賀藩の港町・和倉温泉の観光地として栄えたこと、能登半島に輪島塗・珠洲焼などの伝統工芸、漁業、農業、観光が根づき人口減少と高齢化が進むこと、2024年1月の能登半島地震で大きな被害を受けたこと)に関する記述=のと共栄信用金庫および各種公開情報にもとづく。
七尾・能登の地理・経済(七尾、能登半島、七尾湾、和倉温泉、輪島塗、珠洲焼、漁業、観光、能登半島地震)に関する記述=各種公開情報。

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