奄美信用組合——日本最南の信組は、海を越えた島で何に貸すか
預貸率57.2%、預金859億円、自己資本比率9.0%、不良債権比率1.89%。鹿児島県奄美市に本店を置く日本最南の信用組合、奄美信用組合。鹿児島から383km離れた奄美大島で、島の人びとに貸し続けてきた信組が、何に貸すのか。同じ奄美の金融機関と比べながら、その数字と歴史を読む。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
鹿児島県の奄美市に本店を置く奄美信用組合は、預金859億円を持つ信用組合だ。店舗14。日本最南の信用組合であり、奄美大島とその周辺の島々に店舗を構える。本拠の奄美市名瀬は、鹿児島港から南西へ383km、那覇港から北東へ331km——本土からも沖縄からも海で隔てられた、奄美群島の政治・経済・文化の中心地だ。奄美信用組合は、こうした海を越えた島・奄美に根ざしてきた信組だ。
本拠の奄美大島は、亜熱帯の島だ。蘇鉄が自生する山嶺が島を覆い、東は太平洋、北は東シナ海に面する。サトウキビと黒糖、大島紬、鰹をはじめとする漁業——本土とは異なる、島ならではの産業が広がる。2021年には世界自然遺産にも登録された。本土から遠く離れたこの島で、暮らしと商いを支える金融機関の一つが、奄美信用組合だ。同じ奄美市には、信用金庫である奄美大島信用金庫(あましん)もあり、島のなかで信組と信金が並び立つ。
この信組の数字は、預貸率57.2%、自己資本比率9.0%、不良債権比率1.89%。離島の金融機関として、預金の6割近くを島の人びとへの貸出に回している。なぜ、海を越えた島の信組が、こうした数字になるのか。同じ奄美の金融機関とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。奄美信用組合の預金は859億円、貸出金は491億円。預貸率は57.2%で、預金の6割近くを貸出に回している。自己資本比率は9.0%、不良債権比率は1.89%。店舗数は14。
同じ奄美市に本店を置く奄美大島信用金庫(預貸率52.2%・自己資本15.23%・不良8.73%)と比べてみる。奄美信用組合の預貸率57.2%は、島の信用金庫よりやや高い。預金規模はほぼ同じ(奄美信組859億円・奄美大島信金887億円)で、同じ島の市場を分け合う関係にある。目を引くのは、奄美信用組合の不良債権比率1.89%が、奄美大島信用金庫の8.73%と比べて格段に低いこと。離島という限られた市場のなかで、信組のほうが堅実に貸してきたことが読み取れる。一方で自己資本比率は、信金の15.23%に対し信組は9.0%と薄め。規模の近い信組と信金が、同じ島で異なる数字を見せているのは興味深い。離島の限られた市場を、二つの協同組織金融機関が支えている構図だ。
| 奄美信用組合 | 奄美大島信用金庫 | |
|---|---|---|
| 業態 | 信用組合 | 信用金庫 |
| 預金 | 859億円 | 887億円 |
| 預貸率 | 57.2% | 52.2% |
| 自己資本比率 | 9.0% | 15.23% |
| 不良債権比率 | 1.89% | 8.73% |
いずれも奄美市に本店を置く。規模はほぼ同じだが、信組のほうが預貸率は高く、不良債権比率は格段に低い。
瀬戸内信用組合から——奄美信用組合の歩み
奄美信用組合は、1956年(昭和31年)5月、奄美大島南部の瀬戸内町で「瀬戸内信用組合」として設立された。設立は、奄美群島が1953年(昭和28年)にアメリカの統治から日本へ復帰した、その3年後にあたる。本土復帰後の島の復興と発展を金融面から支えるために生まれた信組だ。1966年(昭和41年)8月、創立10周年を期に本部を瀬戸内町から名瀬市(現在の奄美市)へ移転し、奄美信用組合へと改称した。以来、奄美大島の中心地・名瀬に本店を置き、加計呂麻島などの周辺離島も含めた奄美群島の人びとに貸し続けてきた。「奄美の人びとに心から愛され、奄美群島の発展のために奉仕する」ことを経営姿勢に掲げている。
海を越えた島という土地は、信用組合にとって独特の地盤だ。本土から383km離れ、大手銀行の支店も限られる。島の金融は、地元の協同組織金融機関が担うほかない。サトウキビ・黒糖、大島紬、漁業、そして観光——島ならではの産業と、島で暮らす人びとの生活を、奄美信用組合は支えてきた。預貸率57.2%という水準は、限られた島の市場のなかで、地元の資金需要によく応えてきたことの表れだと読める。不良債権比率1.89%という低さは、島の人びとと顔の見える関係を結び、堅実に貸してきたことを映していると読める。本土復帰の3年後に生まれ、島とともに70年近くを歩んできた信組が、いまも海を越えた島で貸し続けている。
57.2%を、海を越えた島から読む
奄美信用組合の預貸率57.2%という水準は、本土から383km離れた島で、地元の産業と暮らしの資金需要に応えてきたことの表れだと読める。サトウキビ、大島紬、漁業、観光——島ならではの商いに、島の信組として貸してきた。
そのうえで、不良債権比率1.89%という低さが、この信組の性格を物語る。離島という限られた市場で、島の人びとと顔の見える関係を結び、堅実に貸してきた。大手が手の届きにくい島で、地元の協同組織金融機関が島の金融を支える——その役割を、奄美信用組合は70年近く担ってきた。日本最南の信用組合が、海を越えた島で、島の人びとに貸し続けている。それが、この信組の生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
鹿児島の経済とともに
奄美信用組合の数字は、海を越えた島・奄美という地盤と、島とともに70年近くを歩んできた信組の歴史の、両方を映している。島の産業と暮らしに堅実に貸し、低い焦げ付きを保ちながら、奄美群島の経済を支えてきた。本土から遠く離れた島の市場が、57.2%という預貸率と、1.89%という低い不良債権比率に表れている。
銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。奄美信用組合を見れば、海を越えた島・奄美の経済と、そこで島の人びとに貸す信組の姿が浮かぶ。鹿児島県の他の金融機関は、同じ島の奄美大島信用金庫、鹿児島市の鹿児島信用金庫、県内最大の地銀鹿児島銀行、第二地銀の南日本銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。鹿児島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、鹿児島県の地域金融機関のページへ。
奄美信用組合は、海を越えた島・奄美に根ざした、日本最南の信用組合です。地元の事業者に貸す信組とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。奄美大島信用金庫の数値も同出典。
沿革(1956年5月に奄美大島南部の瀬戸内町で「瀬戸内信用組合」として設立、1966年8月に創立10周年を期に本部を瀬戸内町から名瀬市へ移転し奄美信用組合へ改称したこと、日本最南の信用組合であること、「奄美の人びとに心から愛され、奄美群島の発展のために奉仕する」ことを経営姿勢に掲げること)=奄美信用組合および各種公開情報にもとづく。
奄美の地理・歴史・産業(奄美市、名瀬、奄美大島、鹿児島港から383km・那覇港から331kmの距離、亜熱帯、蘇鉄、東シナ海、太平洋、サトウキビ・黒糖、大島紬、漁業、2021年の世界自然遺産登録、奄美群島が1953年にアメリカ統治から日本へ復帰したこと)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。
本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。