鹿児島信用金庫——南国の県都で、信金はなぜ預金の7割近くを貸せるのか
預貸率68.2%、預金3,220億円、不良債権比率2.26%。鹿児島市に本店を置く鹿児島信用金庫。南九州の県都に根ざす信金「かしん」が、なぜ預金の7割近くを貸せるのか。その数字と歴史を読む。
鹿児島県の県都・鹿児島市に本店を置く鹿児島信用金庫は、地元で「かしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金3,220億円、店舗38。鹿児島市を中心に、薩摩半島の地域を地盤としている。県内有数の規模を持つ信金だ。
本拠の鹿児島は、桜島を望む南九州最大の都市だ。人口約59万を抱える県都として、商業・サービス業に厚みがあり、薩摩の歴史と文化を背景に観光業も盛んだ。周辺には、黒豚や焼酎、お茶といった南国の農畜産物の産地が広がり、食品加工業も集まる。鹿児島信用金庫は、こうした南九州の県都の経済に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率68.2%という、信用金庫として高めの水準だ。預金の7割近くを貸出に回している。なぜこれほど貸せるのか。同じ鹿児島市の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。鹿児島信用金庫の預金は3,220億円、貸出金は2,197億円。預貸率は68.2%で、預金の7割近くを貸出に回している。自己資本比率は8.54%、不良債権比率は2.26%。店舗数は38、中小企業等への貸出残高は1,987億円。
注目すべきは、預貸率68.2%という高さと、不良債権比率2.26%という低さの両立だ。同じ鹿児島市に本店を置き、より規模の大きい鹿児島相互信用金庫(預貸率64.2%・不良債権比率7.91%)と比べると、鹿児島信用金庫の預貸率はやや高く、しかも不良債権比率は大きく低い。鹿児島相互信用金庫が7.91%という高めの焦げ付きを抱えるのに対し、鹿児島信用金庫はよく貸しながら焦げ付きを2.26%に抑えている。同じ県都・鹿児島を地盤とする二つの信金でも、貸出の中身と健全性には違いがある。鹿児島信用金庫は、よく貸す積極性と手堅さを両立させていると読める。
| 鹿児島信用金庫 | 鹿児島相互信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 鹿児島市 | 鹿児島市 |
| 預金 | 3,220億円 | 5,789億円 |
| 預貸率 | 68.2% | 64.2% |
| 自己資本比率 | 8.54% | 8.22% |
| 不良債権比率 | 2.26% | 7.91% |
ともに県都・鹿児島を地盤とする二つの信金。規模は鹿児島相互信用金庫が上回るが、鹿児島信用金庫は預貸率がやや高く、焦げ付きは大きく低い。よく貸す積極性と手堅さを両立する姿が数字に出ている。
南国の県都とともに——鹿児島信用金庫の歩み
鹿児島信用金庫は、南国の県都・鹿児島の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。商業・サービス業の集まる都市の中心と、周辺の農畜産業や食品加工業——こうした地域の事業者や個人が預金を預け、必要なときに資金を借りる。鹿児島信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、県内有数の規模へと成長してきた。
鹿児島という土地は、南九州最大の都市として、人口と事業者が集まる。商業・サービス業に加え、黒豚・焼酎・お茶といった南国の産業も厚みがある。県都の都市経済と、周辺の農畜産業の両方に貸せることが、高めの預貸率を支えていると読める。そして、よく貸しながら焦げ付きを低く抑えているのは、貸出先をしっかり見極める目があることの表れだ。
68.2%を、南国の信金から読む
鹿児島信用金庫の預貸率68.2%という高さは、南九州最大の都市・鹿児島の資金需要に、よく応えてきたことの表れだと読める。県都の商業・サービス業と、周辺の農畜産業・食品加工業——多様な事業者の資金需要に密着して応えることで、預金の7割近くを貸出に回せる。これは、貸出先が地域に乏しく預貸率が低くとどまる地方の信金とは、対照的な姿だ。
そして、不良債権比率2.26%という低さは、よく貸しながらも、貸出先をしっかり見極めていることを示す。同じ鹿児島市の鹿児島相互信用金庫が高めの焦げ付きを抱えるなかで、鹿児島信用金庫は健全性を保っている。自己資本比率8.54%という水準は信用金庫として標準的だが、低い焦げ付きがその体力を裏から支える。県都の旺盛な需要によく応えながら、手堅さも失わない——それが、鹿児島信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
鹿児島の経済とともに
鹿児島信用金庫の数字は、桜島を望む南九州最大の都市・鹿児島という土地と、そこで旺盛な需要に応えてよく貸す信金の歩みの、両方を映している。県内有数の規模を持ち、預金の7割近くを地元に貸しながら、焦げ付きを低く抑えてきた。県都の都市経済と周辺の農畜産業に貸す力と、貸出先を見極める目が、68.2%という高い預貸率と2.26%という低い焦げ付きの両立に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。鹿児島信用金庫を見れば、南国の県都・鹿児島の経済と、そこでよく貸す信金の姿が浮かぶ。鹿児島県の他の金融機関は、離島の奄美大島信用金庫、県トップの地銀鹿児島銀行、中小に深く貸す南日本銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。鹿児島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、鹿児島県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。鹿児島相互信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(鹿児島市に本店を置き、薩摩半島を地盤とする信用金庫であること、鹿児島が人口約59万の南九州最大の都市で桜島を望む県都であること、黒豚・焼酎・茶などの農畜産業や観光が盛んであること)に関する記述=鹿児島信用金庫および各種公開情報にもとづく。
鹿児島の地理・経済(南九州最大の都市、桜島、県都、黒豚・焼酎・茶、観光)に関する記述=各種公開情報。