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かながわ信用金庫——横須賀の大型信金は、なぜよく貸しながら資本が薄いのか

預貸率50.6%、預金1兆4,008億円、自己資本比率7.08%、不良債権比率2.83%。横須賀市に本店を置くかながわ信用金庫。三浦半島から湘南に根ざす信金が、なぜよく貸しながら資本が薄めなのか。同じ神奈川の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 神奈川県

神奈川県の横須賀市に本店を置くかながわ信用金庫は、預金1兆4,008億円を持つ信用金庫だ。店舗50。横須賀市を中心に、三浦半島から湘南、横浜の一部までを地盤としている。預金1兆円を超える、神奈川県内でも大型の信金だ。

本拠の横須賀市は、東京湾の入口・三浦半島に位置する、軍港と漁港のまちだ。古くから港湾とともに栄え、造船・水産・関連産業が集まってきた。周辺の三浦半島は農業や観光、湘南は商業と住宅地が広がる。首都圏の南端に位置し、横浜・川崎の大都市圏とも結びつく。かながわ信用金庫は、こうした三浦半島から湘南にかけての神奈川に根ざし、地域の中小・零細事業者を支えてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率50.6%という標準的な水準と、自己資本比率7.08%という薄めの数字だ。預金の半分ほどを貸出に回しながら、資本の厚みは控えめだ。なぜ、横須賀の大型信金は、こうした数字になるのか。同じ神奈川の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。かながわ信用金庫の預金は1兆4,008億円、貸出金は7,092億円。預貸率は50.6%で、預金の半分ほどを貸出に回している。自己資本比率は7.08%、不良債権比率は2.83%。店舗数は50、中小企業等への貸出残高は6,135億円。

同じ神奈川県で、横浜市を地盤とする横浜信用金庫(自己資本比率11.09%・預貸率57.6%)と比べると、かながわ信用金庫のほうが、自己資本は薄めだ。かながわ信用金庫の自己資本比率7.08%は横浜信用金庫(11.09%)を下回る。預貸率は横浜信用金庫(57.6%)がかながわ信用金庫(50.6%)を上回り、横浜信用金庫のほうがやや多く貸している。神奈川の大型信金どうしでも、資本の厚みには差がある。かながわ信用金庫の自己資本比率7.08%は、信用金庫の国内基準4%は上回るが、厚いとはいえない水準だ。不良債権比率2.83%は低めに抑えられており、よく貸しながらも焦げ付きは抑えている。

神奈川県の二つの大型信用金庫(令和7年3月末)
 かながわ信用金庫横浜信用金庫
本店横須賀市横浜市
預金1兆4,008億円2兆704億円
預貸率50.6%57.6%
自己資本比率7.08%11.09%
不良債権比率2.83%6.03%

ともに神奈川県を地盤とする大型信金。かながわ信用金庫は自己資本が薄めだが、焦げ付きは横浜信用金庫より低い。同じ県の大型信金でも資本の厚みに差があることが数字に表れている。

三浦半島から湘南へ——かながわ信用金庫の歩み

かながわ信用金庫は、横須賀・三浦半島の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。横須賀の港湾に関わる事業者、造船・水産の関連業、三浦半島の農家、湘南の商店、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。かながわ信用金庫は、いくつもの信用金庫の合併を重ね、三浦半島から湘南に広がる大型信金へと成長してきた。県全体を意味する「かながわ」の名は、こうした広域への広がりを映している。

三浦半島から湘南という土地は、信用金庫にとって、会員の資金需要のある地盤だ。横須賀の港湾・造船・水産、三浦の農業・観光、湘南の商業と、多様な業種が広がる。首都圏の南端として、横浜・川崎の大都市圏とも結びつく。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率50.6%という水準を支えている。一方、自己資本比率7.08%という薄めの数字は、合併を重ねて規模を広げる過程や、地域の事業環境のなかで、資本の積み増しが貸出の伸びに追いついてきた途上にあることを映していると読める。

7.08%の資本を、三浦半島から読む

かながわ信用金庫の自己資本比率7.08%という薄めの数字は、三浦半島から湘南にかけて、会員の中小によく貸してきたことの裏返しでもあると読める。預金の半分ほどを地元に貸し、地域の資金需要に応えてきた。よく貸せば、そのぶん資本の厚みは相対的に薄くなる。かながわ信用金庫の7.08%は、信用金庫の国内基準4%は上回るが、厚いとはいえない水準で、横浜信用金庫の11.09%と比べても薄めだ。

もっとも、不良債権比率2.83%という低さは、よく貸しながらも相手の事業をよく見極めて、焦げ付きを抑えてきたことを示す。三浦半島から湘南で会員の中小によく貸し、低い焦げ付きを保ちながら、資本を着実に積んでいく——それが、かながわ信用金庫の数字に表れた姿だと読める。首都圏の南端に広がる大型信金の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

神奈川の経済とともに

かながわ信用金庫の数字は、三浦半島から湘南という土地と、そこで会員の中小によく貸す大型信金の歩みの、両方を映している。預金の半分ほどを地元に貸し、横須賀の港湾、三浦の農業、湘南の商業を支えてきた。よく貸すぶん資本の厚みは控えめだが、焦げ付きは低く抑えてきた。多様な業種が広がる神奈川南部の経済が、50.6%という預貸率と、7.08%という自己資本比率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。かながわ信用金庫を見れば、三浦半島から湘南の経済と、そこで会員によく貸す大型信金の姿が浮かぶ。神奈川県の他の金融機関は、横浜市の横浜信用金庫、川崎市の川崎信用金庫、同じ湘南の湘南信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。神奈川県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページへ。

自己資本比率とは 自己資本比率とは、金融機関の総資産に対する自己資本の割合。損失が出たときに、自前の資本でどれだけ吸収できるかを示す、健全性の目安の一つだ。信用金庫には国内基準で4%以上が求められる。地元の資金需要によく応えて貸出を伸ばす信用金庫は、そのぶん資本の厚みが相対的に薄くなることがある。ただし、自己資本比率の薄さは必ずしも経営の不安定を意味せず、不良債権比率とあわせて見ることで、その貸し方の健全さが見えてくる。 → あわせて「預貸率の読み方」もどうぞ

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。横浜信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(横須賀市に本店を置き、三浦半島から湘南・横浜の一部を地盤とする信用金庫であること、いくつもの信用金庫の合併を経て県内に広く根ざす大型信金になったこと、横須賀が東京湾の入口・三浦半島に位置する軍港と漁港のまちで造船・水産・関連産業が集まること、三浦半島に農業・観光、湘南に商業と住宅地が広がること)に関する記述=かながわ信用金庫および各種公開情報にもとづく。
横須賀・神奈川の地理・経済(横須賀、三浦半島、湘南、東京湾、軍港、漁港、造船、水産)に関する記述=各種公開情報。

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