横浜幸銀信用組合——コミュニティの相互金融は、なぜ預金の7割超を貸せるのか
預貸率76.0%、預金6,732億円、不良債権比率1.62%。横浜市に本店を置く横浜幸銀信用組合。在日コリアンのコミュニティを基盤に育った信用組合が、なぜ預金の7割超を貸せるのか。その成り立ちと数字を読む。
横浜市に本店を置く横浜幸銀信用組合は、預金6,732億円を持つ信用組合だ。信用組合としては全国でも有数の規模を持つ。横浜を中心に、関東一円に店舗を広げている。この信用組合は、在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)のコミュニティを基盤に育ってきたという、独自の成り立ちを持つ。
信用組合には、地域に根ざす「地域信組」や、特定の職業の人々が集う「職域信組」のほかに、特定のコミュニティを基盤とするものがある。横浜幸銀信用組合は、戦後、在日コリアンの人々が、自分たちのコミュニティのなかで資金を融通し合うために設立した信用組合を源流に持つ。これは、移民・定住者のコミュニティが、自前の相互金融を必要とした歴史の産物だと読める。
この信組の数字で目を引くのは、預貸率76.0%という高さだ。預金の7割超を貸出に回している。信用組合のなかでも、よく貸す部類に入る。そして、不良債権比率は1.62%と低い。よく貸しながら、焦げ付きも少ない。なぜか。その成り立ちとともに、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。横浜幸銀信用組合の預金は6,732億円、貸出金は5,115億円。預貸率は76.0%で、預金の7割超を貸出に回している。自己資本比率は9.87%、不良債権比率は1.62%と低い。店舗数は30、中小企業等への貸出残高は4,982億円。
際立つのは、預貸率76.0%という高さと、不良債権比率1.62%という低さの両立だ。地域信用組合のなかには、貸出先が乏しく預貸率が低くとどまる先も多いなかで、横浜幸銀信用組合は預金の7割超を貸し、しかも焦げ付きが少ない。中小企業等への貸出残高が4,982億円と、貸出金のほぼ全額を占めることからも、コミュニティ内の事業者への貸出を中心に営まれていることがうかがえる。よく貸しながら焦げ付きが少ないのは、コミュニティ内の相互の信頼と、借り手をよく知る関係にもとづく貸出だからだと読める。
| 預金 | 6,732億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 5,115億円 |
| 預貸率 | 76.0% |
| 自己資本比率 | 9.87% |
| 不良債権比率 | 1.62% |
| 中小企業等貸出残高 | 4,982億円 |
信用組合として全国有数の規模を持ち、預貸率は7割を超える。貸出金のほぼ全額が中小企業等向けで、コミュニティ内の事業者への貸出を中心に営まれていることがうかがえる。
コミュニティの相互金融として——その成り立ち
横浜幸銀信用組合の源流は、戦後、在日コリアンの人々が設立した信用組合にさかのぼる。当時、在日コリアンの人々や事業者は、既存の金融機関から融資を受けることが難しい状況に置かれることが少なくなかった。そうしたなかで、自分たちのコミュニティのなかで資金を出し合い、必要な人に融通する——その相互扶助の仕組みとして、信用組合が生まれた。
これは、移民・定住者のコミュニティが、自前の相互金融を築いてきた歴史の一例だと読める。世界の各地で、新たな土地に根を下ろした人々が、自分たちのコミュニティのなかで金融の仕組みをつくってきた。横浜幸銀信用組合もまた、そうしたコミュニティの相互金融として、戦後の在日コリアンの事業者の商いを支え、年月をかけて全国有数の規模へと育ってきた。なお、在日コリアン系の信用組合は、かつて複数が経営に行き詰まり、再編を経た歴史を持つ。現在の横浜幸銀信用組合も、そうした再編のなかで事業を引き継ぎ、規模を広げてきた経緯がある。
76.0%を、コミュニティの信組から読む
横浜幸銀信用組合の預貸率76.0%という高さは、コミュニティ内に、確かな資金需要があることの表れだと読める。コミュニティに属する事業者は、商業・サービス業を中心に、運転資金や設備資金を必要とする。信用組合は、そうした需要に応えることで、預金の7割超を貸出に回せる。コミュニティ内の借り手をよく知る関係が、貸出を後押しする。
不良債権比率1.62%という低さも、同じ理由で説明できる。借り手の人となりや商いをよく知るコミュニティ内の貸出は、焦げ付きのリスクを見極めやすい。相互の信頼と、顔の見える関係のなかでの貸し借りが、低い焦げ付きを支える。これは、コミュニティを基盤とする信用組合ならではの数字の読み方だと読める。地域に広く薄く貸すのとは異なる、密な関係のなかの金融が、76.0%という高い預貸率と1.62%という低い焦げ付きの両立を生んでいると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
コミュニティとともに
横浜幸銀信用組合の数字は、地域ではなくコミュニティに根ざすという、信用組合のもう一つのかたちを映している。在日コリアンのコミュニティを基盤に、相互の信頼のなかで預金を集め、よく貸し、焦げ付きを低く抑えてきた。その数字は、地域経済を映す地域金融機関の数字とは、別の論理で動いている。協同組織金融機関には、地域や職域に根ざすものだけでなく、こうしたコミュニティに根ざすものもあることを、この信組は教えてくれる。
銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その成り立ちと、貸し借りの相手を映す鏡だ。横浜幸銀信用組合を見れば、コミュニティの相互金融という独自の世界が浮かぶ。神奈川県の他の協同組織金融機関は、横浜の横浜信用金庫、川崎の川崎信用金庫、湘南の湘南信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。神奈川県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。
成り立ち・沿革(横浜市に本店を置く信用組合であること、在日コリアンのコミュニティを基盤に戦後設立された信用組合を源流とすること、在日コリアン系の信用組合が再編を経た歴史を持つこと、関東一円に店舗を広げていること)に関する記述=各種公開情報にもとづく事実の整理であり、特定の評価を加えるものではない。