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土佐信用組合——預貸率6.8%、貸さない信組はなぜ生まれたか

預貸率6.8%、自己資本比率10.94%、不良債権比率3.42%。土佐市に本店を置く土佐信用組合。預金の一割も貸し出さない、本紀行屈指の低預貸率の信組の数字を、土地の事情から読みます。

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高知県土佐市に本店を置く土佐信用組合は、預金364億円に対し、貸出金はわずか25億円、店舗2。土佐市を中心に、いの町・須崎市・高知市の一部を地盤とする信用組合です。

本店のある土佐市は、高知県の中部、太平洋に面したまちです。温暖な気候を生かした施設園芸や、水産がさかんな土地です。高知県は全国でも人口減少が早く、土佐市もその例にもれません。土佐信用組合は1953年に設立され、土佐の地で地域とともに歩んできた信組です。数字の面で際立つのは、預貸率6.8%という、本紀行でも屈指の低さです。

まず、数字を並べる

土佐信用組合の預金は364億円、貸出金は25億円、預貸率6.8%。自己資本比率は10.94%、不良債権比率は3.42%。中小企業等向けの貸出先は437件です。

土佐信用組合(令和7年3月末)
預金364億円
貸出金25億円
預貸率6.8%
自己資本比率10.94%
不良債権比率3.42%
中小企業等向け貸出先437件
店舗2店

預貸率6.8%。預金の一割も貸し出さない、本紀行屈指の低預貸率の信組の数字を読む。

6.8%という異様な数字を、土佐から読む

預貸率6.8%。預金として集めた364億円のうち、貸出に回しているのは25億円ほど、一割にも満たない数字です。信用組合は本来、地元の組合員から預金を集め、地元に貸して回す相互扶助の組織です。その本業の数字が6.8%というのは、控えめに言っても異様です。残りの大半はどこへ行ったのか——その答えに、この信組の置かれた事情が表れています。

ここで「貸す気のない信組だ」と急ぐと、本質を見誤ります。高知は全国でも人口減少が著しく、組合員になれる地元の中小事業者や住民が減れば、貸せる相手も構造的に細っていきます。借り手が乏しいなか、集めた預金は貸出に回りきらず、その多くは有価証券などの運用に向かうことになります。本紀行で取り上げた高知信用金庫(預貸率9.3%)と同様、人口減少地域の協同組織金融機関が、制度の枠のなかでたどり着いた一つの帰結として、6.8%という数字は読めます。不良債権比率3.42%は極端に高くはなく、自己資本比率10.94%は手堅い水準です。もちろん個別の事情も絡むため断定はできませんが、人口が細る土佐という土地を抜きに、この信組の数字は読めません。

土佐信用組合が示すのは、人口減少地域で貸し先が極端に細った、低預貸率の信組の姿です。預貸率6.8%は、怠慢ではなく、組合員になれる地元の借り手が減るなかで、集めた預金が貸出に回りきらない土地の現実の表れ。ひとつの数字の奥にある事情まで読みにいくことが、この信組を理解する鍵になります。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

信用組合が融資できる相手は原則として「組合員」に限られます。組合員になれるのは、中小企業等協同組合法などにより、その信用組合の地区内に住所や事業所がある中小事業者・勤労者などで、員外への貸出には制限があります。事業者には規模の制限もあり、大企業は組合員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地区内の組合員に絞られます。土佐信用組合にとって、その「地元」とは、人口減少が著しい高知県中部の地域経済です。問題は、その地元が縮んでいることです。組合員になれる地元の中小事業者や住民が減れば、貸せる相手も構造的に細っていきます。預貸率6.8%という数字は、貸し先が極端に乏しい土地で、集めた預金が貸出に回りきらない現実を、率直に映した帰結と読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ高知県には、預貸率9.3%という低さで「高知のゴールドマンサックス」と呼ばれる高知信用金庫があります。預貸率6.8%の土佐信用組合と高知信用金庫は、ともに人口減少地域で貸し先が細り、運用に資金を向ける協同組織金融機関です。県地銀の高知銀行(預貸率74.9%)や四国銀行(預貸率71.2%)とは対照的な数字の意味は、高知信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率6.8%という屈指の低さは、人口の細る土佐に根を張り、貸し先が乏しいなかで集めた預金を運用に向けてきた信組の姿を映しています。人口が減る時代に地域金融機関が直面する現実が、この数字に表れています。土佐信用組合の数字は、人口減少地域の信組の、いまの記録です。預貸率の読み方は預貸率の読み方を、高知県の他の金融機関は高知県の地域金融機関のページもどうぞ。

土佐信用組合と融資・保証のはなし

土佐信用組合は、預貸率が際立って低く、貸出に慎重な信用組合です。こうした金融機関とまず築きたいのは、預金や取引の実績。口座と信用を育てていくための基礎を、用語とあわせてまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
土佐信用組合の沿革(1953年設立、土佐市を中心に、いの町・須崎市・高知市の一部を地区とすること)に関する記述=土佐信用組合公開情報・各種公開情報にもとづく。
土佐市の施設園芸・水産、高知県の人口減少に関する記述=各種公開情報。
高知信用金庫・高知銀行・四国銀行の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の組合員・員外貸出に関する記述=中小企業等協同組合法ほか関係法令にもとづく一般的な整理。

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