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熊本県信用組合——11の信組が一つになった「けんしん」は、半導体に沸く熊本で何に貸すか

預貸率68.2%、預金1,072億円、自己資本比率9.56%、不良債権比率4.06%。熊本県熊本市に本店を置く熊本県信用組合。県内11の信組が合併して生まれ、宮崎県北部にも広がる県域信組「けんしん」が、半導体に沸く熊本で何に貸すのか。同じ熊本の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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熊本県の熊本市に本店を置く熊本県信用組合は、預金1,072億円を持つ信用組合だ。店舗18。「けんしん」の呼び名で知られ、熊本県一円を事業区域とし、隣県の宮崎県北部にも店舗を構える。県名を冠した、県域の信用組合だ。

本拠の熊本市は、九州中央部の県都だ。そして近年、熊本は半導体に沸く土地として全国の注目を集めている。県都に近い菊陽町に、世界的な半導体受託製造の巨大工場(JASM)が操業を開始し、関連企業の進出や雇用の増加で、熊本都市圏東部は活況を呈している。一方で、円安や物価高のなかで経営の厳しい中小企業も少なくない。熊本県信用組合は、こうした活況と困難が同居する熊本で、組合員である地域の中小事業者に貸してきた。

この信組の数字で目を引くのは、預貸率68.2%という、信組として高い水準だ。預金1,072億円に対し、貸出金は731億円。預金の7割近くを貸出に回している。なぜ、県域の信組が、これほど貸せるのか。同じ熊本県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。熊本県信用組合の預金は1,072億円、貸出金は731億円。預貸率は68.2%で、預金の7割近くを貸出に回している。自己資本比率は9.56%、不良債権比率は4.06%。店舗数は18。

同じ熊本県の信金と比べてみる。県都・熊本に本店を置く熊本信用金庫(預貸率61.9%・不良1.81%)、同じ熊本市の熊本第一信用金庫(預貸率55.4%・不良3.57%)と並べると、熊本県信用組合の預貸率68.2%は、この三者のなかで最も高い。信用組合は信用金庫よりさらに組合員の枠が狭く、地域・業域に密着した存在だが、その信組が信金よりよく貸している。これは、県内全域を地盤とし、組合員である中小事業者の資金需要によく応えてきたことの表れだと読める。一方で不良債権比率4.06%はやや高めで、自己資本比率9.56%は信金二者より薄め。よく貸す分、焦げ付きと資本のリスクを引き受けている——積極的に貸す信組の数字だ。

熊本県の協同組織金融機関(令和7年3月末)
 熊本県信用組合熊本信用金庫熊本第一信用金庫
業態信用組合信用金庫信用金庫
預貸率68.2%61.9%55.4%
自己資本比率9.56%11.38%9.56%
不良債権比率4.06%1.81%3.57%

いずれも熊本市に本店を置く。信組であるけんしんが、信金二者より高い預貸率を示す。

人吉球磨の信組から——熊本県信用組合の歩み

熊本県信用組合の母体は、1950年(昭和25年)11月に設立された人吉球磨信用組合だ。その後、牛深・大津・阿蘇・鏡・八代・三角・宇土市・松橋など、県内各地に信用組合が次々と生まれた。1985年(昭和60年)4月、これら県内11の信用組合が合併して熊本県信用組合が発足し、本店を熊本市に移した。さらに2006年(平成18年)9月には、隣県の宮崎県北部信用組合と合併し、事業区域を宮崎県北部(西臼杵郡、延岡市の一部)にも広げた。人吉球磨という県南の一隅から生まれた信組が、合併を重ねて県全域、さらに県境を越える広がりを持つに至った歴史を持つ。略称は「けんしん」、本店は熊本市中央区に置かれている。

県域の信用組合という存在は、独特の地盤を持つ。信用組合は信用金庫よりも組合員の枠が狭く、より地域・業域に密着する。だが熊本県信用組合は、県内11信組の合併によって県全域という広い基盤を得た。地域で一番身近な金融機関として、組合員の中小事業者の資金需要に深く応えてきたことが、預貸率68.2%という高い水準に表れていると読める。半導体に沸く都市圏東部の活況がある一方、物価高や賃金増加に苦しむ中小も少なくない——その両方を引き受けながら貸してきた。不良債権比率4.06%というやや高めの数字は、地域経済の浮き沈みを引き受けてきたことを映していると読める。半導体景気の追い風と、中小経営の逆風が同居する熊本で、けんしんは地域とともに歩んでいる。

68.2%を、熊本から読む

熊本県信用組合の預貸率68.2%という信組として高い水準は、県内11信組の合併で得た県全域という基盤のうえで、組合員の中小事業者によく貸してきたことの表れだと読める。人吉球磨の一隅から県全域、さらに宮崎県北部へと広がった信組が、地域に深く根ざして貸してきた。

そのうえで、不良債権比率4.06%というやや高めの数字と、自己資本比率9.56%という薄めの資本が、この信組の性格を物語る。地域の中小に深く貸し、その浮き沈みを引き受ける——半導体に沸く活況と、物価高に苦しむ困難が同居する熊本で、けんしんはそのどちらも引き受けながら貸してきた。地域で一番身近な金融機関として地域とともにある——それが、この信組の生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

熊本の経済とともに

熊本県信用組合の数字は、人吉球磨から県全域・宮崎県北部へと広がった歴史と、半導体に沸く熊本で組合員に深く貸す信組の生き方の、両方を映している。地域の中小によく貸し、その浮き沈みを引き受けながら、熊本の経済を支えてきた。県域という広い基盤と、地域への密着が、68.2%という高い預貸率に表れている。

銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。熊本県信用組合を見れば、半導体に沸く熊本の経済と、そこで組合員に貸す県域信組の姿が浮かぶ。熊本県の他の金融機関は、県都の熊本信用金庫、同じ熊本市の熊本第一信用金庫、県内最大の地銀肥後銀行、預金を超えて貸す熊本銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。熊本県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、熊本県の地域金融機関のページへ。

熊本県信用組合と融資のはなし

熊本県信用組合は、県全域を地盤とし、組合員の中小事業者に深く貸す県域の信用組合です。地元の事業者に貸す信組とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

信用組合とは 信用組合(信用協同組合)とは、組合員の相互扶助を目的とする協同組織の金融機関。信用金庫と似ているが、根拠法が異なり、原則として組合員でなければ取引できないなど、より地域・職域・業域に密着した存在だ。県名を冠する県域の信組は、県内全域の組合員を基盤に、地域の中小事業者に深く貸すことが多い。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。熊本信用金庫・熊本第一信用金庫の数値も同出典。
沿革(母体が1950年設立の人吉球磨信用組合であること、1985年に県内11信用組合が合併して熊本県信用組合が発足し本店を熊本市に移したこと、2006年に宮崎県北部信用組合と合併し宮崎県北部にも事業区域を広げたこと、略称が「けんしん」であること、本店が熊本市中央区にあること)=熊本県信用組合および各種公開情報にもとづく。
熊本の経済(熊本市、菊陽町の半導体受託製造工場JASMの操業、熊本都市圏東部の活況、物価高・賃金増加に直面する中小企業)に関する記述=各種公開情報。

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