熊本信用金庫——火の国の県都で、信金はなぜ預金の6割超を貸せるのか
預貸率61.9%、預金1,755億円、不良債権比率1.81%。熊本市に本店を置く熊本信用金庫。火の国の県都に根ざす「くましん」が、なぜ預金の6割超を貸せるのか。その数字と歴史を読む。
熊本県の県都・熊本市に本店を置く熊本信用金庫は、地元で「くましん」と呼ばれる信用金庫だ。預金1,755億円、店舗16。熊本市を中心に、その周辺を地盤としている。県都に根ざす、地域密着の信金だ。
本拠の熊本は、加藤清正が築いた熊本城で知られる、火の国・熊本の県都だ。人口約73万を抱える政令指定都市であり、九州中部の行政・商業の中心を担う。近年は、阿蘇に源を発する豊かな地下水と、半導体大手TSMCの進出に沸く県北の菊陽町をはじめ、半導体関連の投資が熊本県全体の経済を押し上げている。熊本信用金庫は、こうした活気づく火の国の県都に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率61.9%という高さと、不良債権比率1.81%という低さだ。預金の6割超を貸出に回しながら、焦げ付きは低い。なぜ、火の国の県都の信金は、これほどよく貸せるのか。同じ熊本市の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。熊本信用金庫の預金は1,755億円、貸出金は1,086億円。預貸率は61.9%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は11.38%、不良債権比率は1.81%と低い。店舗数は16、中小企業等への貸出残高は955億円。
熊本市には複数の信用金庫がある。同じ熊本市を地盤とする熊本中央信用金庫(預貸率52.2%・不良債権比率1.3%)と比べると、熊本信用金庫の預貸率61.9%は、熊本中央信用金庫(52.2%)より高く、よりよく貸している。不良債権比率は両者とも1%台と低い。同じ県都の信金でも、熊本信用金庫はより積極的に貸し、しかも焦げ付きを低く保っている。これは、半導体投資に沸く熊本の旺盛な資金需要に応えながらも、貸出先を堅実に見極めていることの表れだと読める。
| 熊本信用金庫 | 熊本中央信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 熊本市 | 熊本市 |
| 預金 | 1,755億円 | 2,061億円 |
| 預貸率 | 61.9% | 52.2% |
| 自己資本比率 | 11.38% | 10.2% |
| 不良債権比率 | 1.81% | 1.3% |
ともに熊本市を地盤とする二つの信金。熊本信用金庫はより高い預貸率でよく貸す。両者ともに焦げ付きは低く、半導体投資に沸く県都の旺盛な資金需要に応える姿が数字に表れている。
火の国の県都とともに——熊本信用金庫の歩み
熊本信用金庫は、火の国の県都・熊本の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。城下町以来の商店や事業者、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。熊本信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら歩んできた。
熊本という土地は、信用金庫にとって、近年とりわけ活気づく地盤だ。県都・熊本市の商業・サービス業に加え、半導体大手TSMCの進出に沸く県北の菊陽町をはじめ、半導体関連の投資が県全体の経済を押し上げている。関連する建設・設備・サービスの需要は、中小事業者にも波及する。活気づく県経済のなかで、貸出の機会は豊富にある——この構図が、61.9%という高い預貸率の背景にあると読める。そのなかで、貸出先を堅実に見極めることで、焦げ付きを1.81%と低く抑えている。
61.9%を、火の国の信金から読む
熊本信用金庫の預貸率61.9%という高さは、半導体投資に沸く熊本の旺盛な資金需要に、応えていることの表れだと読める。県都・熊本市の商業・サービス業の需要に加え、半導体関連の投資が県経済を押し上げ、中小事業者にも資金需要が広がる。信用金庫は、そうした需要に応えることで、預金の6割超を貸出に回せる。
不良債権比率1.81%という低さは、よく貸しながらも、貸出先を堅実に見極めていることを示す。自己資本比率11.38%という水準も、信用金庫として手堅い。活気づく火の国の県都で、旺盛な資金需要によく応えながら、焦げ付きを低く保つ——それが、熊本信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。半導体に沸く熊本の経済の追い風を受けながら、堅実に貸すこの信金の姿は、地域経済の活気が地域金融機関の数字に表れる一例だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
熊本の経済とともに
熊本信用金庫の数字は、半導体投資に沸く火の国の県都・熊本という土地と、そこで旺盛な資金需要によく応える信金の歩みの、両方を映している。預金の6割超を地元に貸しながら、貸出先を堅実に見極め、焦げ付きを低く保ってきた。活気づく熊本の経済が、61.9%という高い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。熊本信用金庫を見れば、半導体に沸く火の国の県都・熊本の経済と、そこでよく貸す信金の姿が浮かぶ。熊本県の他の金融機関は、県トップの地銀肥後銀行、福岡FG傘下の熊本銀行、天草の天草信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。熊本県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、熊本県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。熊本中央信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(熊本市に本店を置き、熊本市とその周辺を地盤とする信用金庫であること、熊本が加藤清正の熊本城で知られる火の国の県都・政令指定都市であること、県北の菊陽町への半導体大手TSMCの進出に沸くこと)に関する記述=熊本信用金庫および各種公開情報にもとづく。
熊本の地理・経済(火の国、熊本城、政令指定都市、地下水、TSMC、菊陽町、半導体)に関する記述=各種公開情報。