¥Today ニホン銀行紀行

熊本第一信用金庫——半導体に沸く県都で、もう一つの信金は何に貸すか

預貸率55.4%、預金3,043億円、自己資本比率9.56%、不良債権比率3.57%。熊本市に本店を置く熊本第一信用金庫。半導体に沸く火の国の県都で、熊本信用金庫と並び立つもう一つの信金が、何に貸すのか。その数字と歴史を読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 熊本県

熊本県の熊本市に本店を置く熊本第一信用金庫は、預金3,043億円を持つ信用金庫だ。店舗21。「だいいち」の愛称で知られ、熊本市を中心に、熊本県の中央部を地盤としている。

本拠の熊本市は、加藤清正が築いた熊本城を望む、九州中央部の県都だ。人口70万人を超える政令指定都市であり、阿蘇の伏流水に恵まれた水の都としても知られる。そしていま、熊本は全国でも有数の、資金需要の旺盛な土地になっている。世界最大の半導体受託製造企業・TSMCが県内菊陽町に進出し、関連企業の集積、工場・住宅・店舗の建設、人の流入が相次いでいる。農業県としての底堅さに、半導体をめぐる新しい資金需要が重なった。熊本第一信用金庫は、こうした半導体に沸く火の国の県都に根ざしてきた信金だ。

この熊本市には、もう一つ、市内に本店を置く信用金庫がある。熊本信用金庫(預金1,755億円・預貸率61.9%)、愛称「くましん」だ。同じ熊本市に本店を構える二つの信金が、並び立っている。熊本第一信用金庫の数字を、このもう一つの県都の信金とも比べながら読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。熊本第一信用金庫の預金は3,043億円、貸出金は1,685億円。預貸率は55.4%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は9.56%、不良債権比率は3.57%。店舗数は21、中小企業等への貸出残高は1,559億円。

同じ熊本市に本店を置く熊本信用金庫(預金1,755億円・預貸率61.9%・不良債権比率1.81%)と比べると、二つの信金は、ともに県都でよく貸すが、性格が少し異なる。規模では熊本第一信用金庫が一回り大きく、預金は1.7倍。預貸率は熊本信用金庫(61.9%)のほうが高く、熊本第一信用金庫(55.4%)を上回る。不良債権比率は熊本信用金庫(1.81%)が熊本第一信用金庫(3.57%)より低い。規模で勝る熊本第一と、預貸率と低い焦げ付きで際立つ熊本信金——同じ半導体に沸く県都で、二つの信金がそれぞれの姿で貸している。

同じ熊本市の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 熊本第一信金熊本信用金庫
本店熊本市熊本市
預金3,043億円1,755億円
預貸率55.4%61.9%
自己資本比率9.56%
不良債権比率3.57%1.81%

同じ熊本市に本店を置く二つの信金。規模は熊本第一信用金庫が上回り、預貸率と低い焦げ付きでは熊本信用金庫が際立つ。ともに半導体に沸く県都で貸す。

火の国の県都とともに——熊本第一信用金庫の歩み

熊本第一信用金庫は、熊本の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。県都の商店やサービス業、町工場、周辺の農家、そして城下町に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、熊本県中央部に根ざす信金へと歩んできた。

熊本という土地は、いま、信用金庫にとって、かつてない資金需要の高まりを迎えている。TSMCの進出を機に、半導体関連の工場・住宅・店舗の建設が相次ぎ、地元の中小事業者にも新しい商機が広がっている。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率55.4%という水準を支えている。半導体投資の波は、地元の建設業、サービス業、不動産といった中小にも及び、信用金庫の貸出にも追い風となりうる。自己資本比率9.56%は、信用金庫の国内基準4%を上回り、健全な水準だ。不良債権比率3.57%は、おおむね落ち着いた水準を保っていると読める。

55.4%を、県都から読む

熊本第一信用金庫の預貸率55.4%という水準は、半導体に沸く県都・熊本で、会員の資金需要に応えていることの表れだと読める。県都には大口の資金需要もあるが、それは地銀(肥後銀行・熊本銀行)や大手銀行が主に担う。信用金庫の地盤は、その周りにある中小・零細事業者だ。熊本第一信用金庫は、その層に密着して貸し、預金の半分強を貸出に回している。半導体投資の追い風は、その中小の商いにも及びうる。

自己資本比率9.56%という健全な資本と、不良債権比率3.57%というおおむね落ち着いた焦げ付きは、県都で中小に貸し、健全さを保ってきたことを映す。半導体に沸く県都で、もう一つの信金として、中小に密着して貸す——それが、熊本第一信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ市内に二つの信金が並び立つという構図そのものが、熊本という土地に厚い中小の層があることの証でもある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

熊本の経済とともに

熊本第一信用金庫の数字は、半導体に沸く火の国の県都という土地と、そこで中小に密着して貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の半分強を地元の会員に貸し、健全な資本を保ちながら、熊本を中心とする県中央部の中小・零細事業者を支えてきた。半導体投資に沸く県都の活気が、55.4%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。熊本第一信用金庫を見れば、半導体に沸く県都の経済と、そこで中小に貸す信金の姿が浮かぶ。熊本県の他の金融機関は、同じ熊本市の熊本信用金庫、天草の天草信用金庫、県の盟主肥後銀行もあわせてどうぞ。なお、同じ熊本市の二つの地銀を比べた特集「熊本銀行 × 肥後銀行」もあります。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。熊本県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、熊本県の地域金融機関のページへ。

熊本第一信用金庫と融資・保証のはなし

本業の事業融資に踏み込むなら、知っておきたいのが融資の進め方と保証のしくみです。創業期から事業の拡大まで、熊本で事業を営む立場で押さえておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。地銀や大手銀行も集まる県都では、大口の資金需要はそちらに向かいやすく、信用金庫は中小・零細に密着して貸す。半導体投資のような大きな追い風があると、地元の建設・サービス業などの中小にも商機が広がり、信用金庫の貸出にも影響しうる。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の貸し方が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。熊本信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(熊本市に本店を置き、「だいいち」の愛称で知られ、熊本県中央部を地盤とする信用金庫であること、合併を経て県中央部に根ざす信金になったこと、熊本市が加藤清正の熊本城を望む九州中央部の県都で人口70万人を超える政令指定都市であり阿蘇の伏流水に恵まれた水の都であること、同じ熊本市に熊本信用金庫が本店を置くこと)に関する記述=熊本第一信用金庫および各種公開情報にもとづく。
TSMCの熊本県菊陽町への進出と関連する地域経済の動向に関する記述=各種公開情報・報道。
熊本の地理・経済(熊本、熊本城、加藤清正、水の都、農業、半導体)に関する記述=各種公開情報。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ