杜の都信用金庫——県都・仙台の信金は、なぜ預金の6割超を貸せるのか
預貸率64.4%、預金6,098億円、不良債権比率2.96%。仙台市に本店を置く杜の都信用金庫。東北最大の都市・仙台に根ざす都市型信金「もりしん」が、なぜ預金の6割超を貸せるのか。その数字と歴史を読む。
宮城県の県都・仙台市に本店を置く杜の都信用金庫は、地元で「もりしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金6,098億円、店舗26。仙台市を中心に、宮城県の中部を地盤としている。県内有数の規模を持つ都市型の信金だ。
本拠の仙台は、人口約110万を抱える東北最大の都市だ。東北地方の行政・経済・文化の中心であり、「杜の都」と呼ばれる緑豊かな街並みで知られる。支店経済都市として、全国企業の東北拠点が集まり、商業・サービス業に厚みがある。一方で、地元の中小事業者も数多く集まり、活発な経済活動が営まれている。杜の都信用金庫は、こうした東北一の都市経済に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率64.4%という、信用金庫として高めの水準だ。預金の6割超を貸出に回している。東北の信金には、人口減少や産業の事情から預貸率が低めにとどまる先も多いなかで、なぜ杜の都信用金庫はこれほど貸せるのか。同じ仙台の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。杜の都信用金庫の預金は6,098億円、貸出金は3,929億円。預貸率は64.4%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は11.55%、不良債権比率は2.96%。店舗数は26、中小企業等への貸出残高は2,394億円。
注目すべきは、預貸率64.4%という高さだ。同じ仙台市に本店を置く宮城第一信用金庫(預貸率65.4%・預金1,250億円)と比べると、両者の預貸率はともに6割台で近い。規模では杜の都信用金庫が宮城第一信用金庫を大きく上回るが、仙台という東北一の都市を地盤とする信金は、ともに預金の6割超を貸せる。これは、人口110万の大都市・仙台に、旺盛な資金需要があることの表れだと読める。商業・サービス業や中小事業者が数多く集まり、運転資金や設備資金、住宅ローンなどの需要が絶えない。だからこそ、都市型の信金は高めの預貸率を保てる。
| 杜の都信用金庫 | 宮城第一信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 仙台市 | 仙台市 |
| 預金 | 6,098億円 | 1,250億円 |
| 預貸率 | 64.4% | 65.4% |
| 自己資本比率 | 11.55% | 8.49% |
| 不良債権比率 | 2.96% | 2.5% |
ともに県都・仙台を地盤とする二つの信金。規模は杜の都信用金庫が大きく上回るが、預貸率はともに6割台。東北一の都市・仙台の旺盛な資金需要が、高めの預貸率を支えている。
杜の都とともに——杜の都信用金庫の歩み
杜の都信用金庫は、県都・仙台の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。商業・サービス業の集まる都市の中心と、そこに集う中小事業者——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。杜の都信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、県内有数の規模へと成長してきた。なお、仙台を含む宮城県は、2011年の東日本大震災で被害を受けた地域でもあり、杜の都信用金庫もまた、地域の復興とともに歩んできた。
仙台という土地は、信用金庫にとって大きな地盤だ。東北最大の都市として、人口と事業者が集まり、資金需要も旺盛で、よく貸せる。東北地方の他の地域が人口減少に直面するなかで、仙台への人口集中はむしろ進んでいる。東北一の都市の経済の厚みが、高めの預貸率を支えている——この構図が、杜の都信用金庫の数字の背景にあると読める。
64.4%を、杜の都の信金から読む
杜の都信用金庫の預貸率64.4%という高さは、東北一の都市・仙台の旺盛な資金需要に、よく応えてきたことの表れだと読める。人口110万の大都市には、商業・サービス業や中小事業者が数多く集まり、運転資金や設備資金、個人向けの住宅ローンなどの需要が絶えない。信用金庫は、そうした需要に密着して応えることで、預金の6割超を貸出に回せる。これは、貸出先が地域に乏しく預貸率が低くとどまる地方の信金とは、対照的な姿だ。
自己資本比率11.55%、不良債権比率2.96%という数字は、都市型の信金として標準的な水準だ。東北一の都市経済に根ざし、よく貸しながらも手堅さを保つ——それが、杜の都信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ宮城県でも、三陸沿岸の信金が厚い自己資本と低い預貸率で守りを固めるのとは対照的に、県都の都市型信金は、旺盛な需要に応えてよく貸す。地盤とする土地の経済の違いが、預貸率の違いに表れている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
仙台の経済とともに
杜の都信用金庫の数字は、東北一の都市・仙台という土地と、そこで旺盛な需要に応えてよく貸す都市型信金の歩みの、両方を映している。県内有数の規模を持ち、預金の6割超を地元に貸しながら、手堅さも保ってきた。東北一の都市の経済の厚みが、64.4%という高めの預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。杜の都信用金庫を見れば、東北一の都市・仙台の経済と、そこでよく貸す都市型信金の姿が浮かぶ。同じ宮城県の、三陸沿岸の信金は石巻信用金庫や気仙沼信用金庫、東北最大の地銀は七十七銀行の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。宮城県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、宮城県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。宮城第一信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(仙台市に本店を置き、宮城県中部を地盤とする信用金庫であること、仙台が人口約110万の東北最大の都市で「杜の都」と呼ばれること、支店経済都市であること、宮城県が東日本大震災で被害を受けたこと)に関する記述=杜の都信用金庫および各種公開情報にもとづく。
仙台の地理・経済(東北最大の都市、杜の都、支店経済都市、商業・サービス業)に関する記述=各種公開情報。