¥Today ニホン銀行紀行

長崎三菱信用組合——造船所の職域信組から地域へ転じた「りょうしん」は、何に貸すか

預貸率55.1%、預金1,180億円、自己資本比率8.7%、不良債権比率0.74%。長崎県長崎市に本店を置く長崎三菱信用組合。三菱重工長崎造船所の職域信組として生まれ、約25年前に地域信組へ転換した「りょうしん」が、何に貸すのか。同じ長崎の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 長崎県

長崎県の長崎市に本店を置く長崎三菱信用組合は、預金1,180億円を持つ信用組合だ。店舗7。愛称は「りょうしん」。長崎市の本店を中心に、諫早・大村・佐世保・西海・雲仙など長崎県南西部に店舗を構える。その名のとおり、三菱重工長崎造船所と深い縁を持つ信用組合だ。

本拠の長崎は、三菱重工長崎造船所を擁する日本有数の造船の街だ。幕末以来の歴史を持つ造船所は、長崎の経済を支える基幹産業であり、多くの関連企業と従業員がこの街に暮らしてきた。長崎三菱信用組合は、もともとその造船所で働く人びとの福利厚生を目的に生まれた職域信用組合だった。だが、いまの「りょうしん」は、それだけにとどまらない。約25年前に地域信用組合へと転換し、長崎県内在住者なら誰でも組合員になれる地域の金融機関になった。三菱との太いつながりを活かしながら、地場の中小企業や住民にも広く貸す——それが、いまの「りょうしん」だ。

この信組の数字で最も目を引くのは、不良債権比率0.74%という際立った低さだ。預貸率55.1%、自己資本比率8.7%。預金の5割超を貸しながら、焦げ付きは1%にも満たない。なぜ、造船の街の信組が、こうした数字になるのか。同じ長崎の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。長崎三菱信用組合の預金は1,180億円、貸出金は651億円。預貸率は55.1%で、預金の5割超を貸出に回している。自己資本比率は8.7%、不良債権比率は0.74%。店舗数は7。

同じ長崎県の信金と比べてみる。諫早のたちばな信用金庫(預貸率63.5%・不良1.27%)、県北の九州ひぜん信用金庫(預貸率55.6%・不良2.84%)と並べると、長崎三菱信用組合の預貸率55.1%は標準的だが、不良債権比率0.74%は群を抜いて低い。たちばな(1.27%)や九州ひぜん(2.84%)と比べても格段に低く、極めて健全な貸出を保っている。これは、三菱重工と関連企業という強固な取引基盤を持ち、その人となりと事業を熟知したうえで貸してきたことの表れだと読める。造船所で働く人や関連企業を長年見てきた信組だからこそ、確かな相手に確かに貸せる。自己資本比率8.7%はやや薄めだが、これは焦げ付きの少なさという「質」で補っていると読める。

長崎県の協同組織金融機関(令和7年3月末)
 長崎三菱信用組合たちばな信用金庫西海みずき信用組合
業態信用組合信用金庫信用組合
預貸率55.1%63.5%89.6%
自己資本比率8.7%9.03%8.61%
不良債権比率0.74%1.27%7.11%

いずれも長崎県の機関。りょうしんの不良債権比率0.74%は際立って低く、貸出の質の高さを映す。

造船所の勤労者信組から——長崎三菱信用組合の歩み

長崎三菱信用組合は、1953年(昭和28年)1月、「三菱造船株式会社長崎造船所勤労者信用組合」として設立された。戦後復興期、造船所で働く人びとが「困っている仲間を助けよう」と相互扶助の協同組織をつくったのが始まりだ。1954年(昭和29年)に三菱長崎造船所信用組合、1971年(昭和46年)に長崎三菱信用組合と名を変えた。2001年(平成13年)には、経営破綻した長崎第一信用組合の事業を引き継いだ。そして2010年(平成22年)、本店を長崎市飽の浦町から水の浦町に新築・移転している。

この信組の歩みで特筆すべきは、職域信組から地域信組への転換だ。前身は三菱重工長崎造船所に勤める人を対象とした職域信用組合だったが、約25年前に地域信用組合へと転換し、いまでは長崎県内在住者なら誰でも組合員になれる。造船という長崎の基幹産業を熟知し、三菱との太いつながりで情報を持ちながら、地場の中小企業にも広く貸す——「造船や機械、プラントと関連業種を得意分野としながら、地域経済の下支えをしていく」のが、いまの「りょうしん」の姿だ。一つの企業が倒れれば雇用が失われ、人が県外へ流出してしまう。そうなる前に、ともに解決策を考えて地域を支えたい——そうした思いが、預貸率55.1%という貸出と、不良債権比率0.74%という質の高さを支えていると読める。造船所で培った確かな目利きが、地域への融資にも活きている。

0.74%を、長崎から読む

長崎三菱信用組合の不良債権比率0.74%という際立った低さは、三菱重工と関連企業という強固な基盤を持ち、その事業と人となりを熟知したうえで確かに貸してきたことの表れだと読める。造船の街で長年、働く人や関連企業を見てきた信組だからこそ、焦げ付きの少ない健全な貸出を保てる。

そのうえで、預貸率55.1%という貸出が共存していることが、この信組の性格を物語る。職域から地域へ転換し、確かな相手に確かに貸す——その姿勢が、5割超の預貸率と、1%に満たない不良債権比率に表れている。造船という長崎の基幹産業を熟知した目利きと、地域全体を支えようとする使命感。その両方が、「りょうしん」=良心という愛称にこめられていると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

長崎の経済とともに

長崎三菱信用組合の数字は、造船の街・長崎という地盤と、職域信組から地域信組へ転じた歴史の、両方を映している。三菱との太いつながりを活かしながら、地場の中小にも広く貸し、極めて低い焦げ付きを保ってきた。造船所で培った確かな目利きが、55.1%という預貸率と、0.74%という低い不良債権比率に表れている。

銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。長崎三菱信用組合を見れば、造船の街・長崎の経済と、そこで確かに貸す信組の姿が浮かぶ。長崎県の他の金融機関は、諫早のたちばな信用金庫、佐世保の西海みずき信用組合、県内最大の地銀十八親和銀行、SBIグループの長崎銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。長崎県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、長崎県の地域金融機関のページへ。

長崎三菱信用組合と融資のはなし

長崎三菱信用組合は、造船所の職域信組から地域信組へ転じ、確かな目利きで貸す信用組合です。地元の事業者に貸す信組とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

不良債権比率とは 不良債権比率とは、貸出金の総額のうち、返済が滞るなどして回収に懸念のある債権が占める割合。低いほど、貸出の焦げ付きが少なく、貸し方が健全であることを示す。1%に満たない水準は、取引先の事業と人となりを熟知し、確かな相手に貸してきたことをうかがわせる。預貸率とあわせて見ることで、その信組の貸し方の質が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。たちばな信用金庫・西海みずき信用組合の数値も同出典。
沿革(1953年に「三菱造船株式会社長崎造船所勤労者信用組合」として設立されたこと、1954年に三菱長崎造船所信用組合、1971年に長崎三菱信用組合へ改称したこと、2001年に長崎第一信用組合の事業を引き継いだこと、2010年に本店を長崎市飽の浦町から水の浦町へ移転したこと、約25年前に職域信用組合から地域信用組合へ転換し長崎県内在住者なら組合員になれること、愛称が「りょうしん」であること)=長崎三菱信用組合および各種公開情報にもとづく。
長崎の産業(長崎市、三菱重工長崎造船所、造船業、関連企業)に関する記述=各種公開情報。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ