奈良信用金庫——金魚のまち大和郡山で、薄い自己資本で貸す信金は何を支えるか
預貸率52.1%、預金3,478億円、自己資本比率8.43%、不良債権比率2.56%。大和郡山市に本店を置く奈良信用金庫。金魚のまち・大和郡山に根ざし、薄めの自己資本で貸す信金が、何に貸すのか。同じ奈良の金融機関と比べながら、その数字と歴史を読む。
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奈良県の大和郡山市に本店を置く奈良信用金庫は、預金3,478億円を持つ信用金庫だ。店舗15。「ならしん」の愛称で知られ、大和郡山市を中心に、奈良盆地(県北西部)を地盤としている。
本拠の大和郡山市は、金魚のまちとして全国に知られる。江戸期、郡山藩の武士の副業として始まった金魚の養殖が地場産業として根づき、いまも全国有数の金魚の産地だ。城下町としての歴史を持ち、奈良市と大阪のあいだに位置することから、近代以降は工業団地も整備され、ベッドタウンとしても発展した。古都・奈良の盆地に広がる、農・商・工とくらしの土地——奈良信用金庫は、こうした金魚のまち・大和郡山に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率8.43%という薄めの水準だ。これまで見てきた信金の多くが10%を超えるなか、8.43%はやや薄い。一方、預貸率は52.1%で、預金の半分強を貸出に回している。不良債権比率は2.56%と低い。なぜ、金魚のまちの信金は、薄めの自己資本で貸すのか。同じ奈良を地盤とする金融機関とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。奈良信用金庫の預金は3,478億円、貸出金は1,811億円。預貸率は52.1%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は8.43%、不良債権比率は2.56%。店舗数は15、中小企業等への貸出残高は1,442億円。
同じ奈良県で、大和盆地の大和信用金庫(預貸率51.1%)や、奈良中央の奈良中央信用金庫(預貸率41.0%・自己資本比率17.12%)と比べると、奈良信用金庫は、預貸率は近いが、自己資本比率が薄い。奈良中央信用金庫(17.12%)が厚い資本を積むのに対し、奈良信用金庫は8.43%とおよそ半分だ。とはいえ、不良債権比率2.56%は低く、焦げ付きは抑えられている。薄めの資本ながら、低い焦げ付きで、預金の半分強を貸す——それが、この信金の数字の姿だ。
| 奈良信用金庫 | 大和信用金庫 | 奈良中央信金 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 大和郡山市 | 桜井市 | 橿原市 |
| 預金 | 3,478億円 | 7,217億円 | 5,568億円 |
| 預貸率 | 52.1% | 51.1% | 41.0% |
| 自己資本比率 | 8.43% | — | 17.12% |
| 不良債権比率 | 2.56% | — | 4.42% |
奈良信用金庫は、預貸率は県内の信金と近いが、自己資本比率は薄め。一方で不良債権比率は低く、焦げ付きは抑えられている。
金魚のまちとともに——奈良信用金庫の歩み
奈良信用金庫は、奈良盆地の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。金魚の養殖業者、工業団地の中小製造業、地元の商店、農家、そしてベッドタウンに住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、奈良盆地に根ざす信金へと歩んできた。
大和郡山という土地は、信用金庫にとって、農・商・工とくらしの混ざり合う地盤だ。金魚の養殖という独特の地場産業に加え、奈良市と大阪のあいだという立地を生かした工業団地、住宅地の広がりがある。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率52.1%という水準を支えている。自己資本比率8.43%は、信用金庫の国内基準4%を上回るが、厚いとは言えない水準だ。一方、不良債権比率2.56%という低さは、焦げ付きを抑えながら堅実に貸してきたことを映す。薄めの資本でも、焦げ付きが低ければ、健全に貸し続けられる——その姿が、この数字に表れていると読める。
8.43%を、大和郡山から読む
奈良信用金庫の自己資本比率8.43%という薄めの水準は、金魚のまち・大和郡山で、低い焦げ付きを保ちながら、預金の半分強を貸してきたことの表れだと読める。自己資本は厚いほど守りに強いが、薄くても、貸出先の焦げ付きが低ければ、経営は健全に保たれる。奈良信用金庫の不良債権比率2.56%という低さは、その裏づけだ。地元の中小に堅実に貸し、焦げ付きを抑えることで、薄めの資本でも安定した経営を続けてきた。
預貸率52.1%という、預金の半分強を貸す水準と、不良債権比率2.56%という低い焦げ付き、そして8.43%という薄めの資本——この組み合わせは、金魚のまちで、堅実に貸し、焦げ付きを抑えてきた信金の姿を映している。厚い資本で守るのではなく、低い焦げ付きで健全さを保つ。それが、奈良信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
奈良の経済とともに
奈良信用金庫の数字は、金魚のまち・大和郡山という土地と、そこで堅実に貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の半分強を地元の会員に貸し、低い焦げ付きを保ちながら、大和郡山を中心とする奈良盆地の中小・零細事業者を支えてきた。金魚の養殖と工業団地とくらしの混ざり合う経済が、52.1%という預貸率と2.56%という低い不良債権比率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。奈良信用金庫を見れば、金魚のまちの経済と、そこで堅実に貸す信金の姿が浮かぶ。奈良県の他の金融機関は、大和盆地の大和信用金庫、奈良中央の奈良中央信用金庫、県唯一の地銀南都銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。奈良県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、奈良県の地域金融機関のページへ。
本業の事業融資に踏み込むなら、知っておきたいのが融資の進め方と保証のしくみです。創業期から事業の拡大まで、奈良で事業を営む立場で押さえておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。
- → 創業融資の受け方
- → 事業計画書の作り方
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- → 当座貸越とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。大和信用金庫・奈良中央信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(大和郡山市に本店を置き、「ならしん」の愛称で知られ、奈良盆地(県北西部)を地盤とする信用金庫であること、合併を経て奈良盆地に根ざす信金になったこと、大和郡山市が金魚のまちとして全国に知られ江戸期に郡山藩の武士の副業として始まった金魚の養殖が地場産業として根づき全国有数の金魚の産地であること、城下町の歴史を持ち奈良市と大阪のあいだに位置して工業団地が整備されベッドタウンとして発展したこと)に関する記述=奈良信用金庫および各種公開情報にもとづく。
大和郡山・奈良の地理・経済(大和郡山、金魚、養殖、城下町、奈良盆地、工業団地、ベッドタウン)に関する記述=各種公開情報。
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