新潟縣信用組合——越後の大型信組は、なぜ預金の4割しか貸さないのか
預貸率43.2%、預金4,345億円、自己資本比率9.72%。新潟市に本店を置く新潟縣信用組合。越後の地に根ざす大型信組が、なぜ預金の4割しか貸さないのか。その数字と歴史を読む。
新潟県の新潟市に本店を置く新潟縣信用組合は、預金4,345億円を持つ信用組合だ。店舗43。新潟市を中心に、越後・新潟県の広い範囲を地盤としている。県名を冠する、新潟県を代表する大型の信用組合だ。
本拠の新潟は、信濃川と阿賀野川が日本海に注ぐ越後平野の中心都市だ。古くから日本海側の港湾都市として栄え、北前船の寄港地として、また越後米の集散地として発展した。いまも本州日本海側で有数の都市として、行政・商業・物流の中心を担う。周辺の越後平野は、米どころとして全国に知られる穀倉地帯だ。新潟縣信用組合は、こうした越後の地に根ざし、県内に広く店舗を構えてきた信用組合だ。
この信組の数字で目を引くのは、預貸率43.2%という低さだ。4,345億円という大きな預金を集めながら、貸出はその4割ほどにとどまる。なぜ、越後の大型信組は、これほど貸さないのか。県内に43もの店舗を広げながら、預貸率が4割台にとどまる理由を、数字から読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。新潟縣信用組合の預金は4,345億円、貸出金は1,879億円。預貸率は43.2%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は9.72%、不良債権比率は3.64%。店舗数は43、中小企業等への貸出残高は1,562億円。
注目すべきは、店舗43という多さと、預貸率43.2%という低さの組み合わせだ。県名を冠する信用組合として、新潟県の広い範囲に43もの店舗を構え、各地で預金を集めている。一方で、信用組合が貸す相手は、組合員である中小・零細事業者に限られる。県内に広く店舗を構えて預金を集めるが、それを貸し切るだけの貸出先には限りがある——この構図が、43.2%という低い預貸率の背景にあると読める。米どころ・越後の地で、農業や地場の中小事業者に貸しながらも、集めた預金のすべてを貸し切るには至っていないと読める。
| 預金 | 4,345億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,879億円 |
| 預貸率 | 43.2% |
| 自己資本比率 | 9.72% |
| 不良債権比率 | 3.64% |
| 店舗数 | 43 |
| 中小企業等貸出残高 | 1,562億円 |
県名を冠する信用組合として、新潟県内に43店舗を広げて預金を集める。一方、組合員への貸出は預金の4割ほどにとどまり、越後の地で預金を集める力と貸出先の限りが数字に表れている。
越後の地とともに——新潟縣信用組合の歩み
新潟縣信用組合は、越後の地の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。新潟の商店、越後平野の農家、地域の中小事業者、そして住民——こうした人々が組合員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。新潟縣信用組合は、合併を経て、新潟県内に広く店舗を構える大型の信用組合へと成長してきた。
越後・新潟という土地は、信用組合にとって、預金を集めやすい一方で、貸出先には限りのある地盤だ。本州日本海側で有数の都市・新潟と、米どころの越後平野は、豊富な預金をもたらす。しかし、信用組合が貸す相手は組合員である中小・零細事業者に限られ、米どころの地で大企業や大きな工業地帯の集積は限られる。県内に広く店舗を構えて預金を集めるが、それを貸し切るだけの貸出先は乏しい——この構図が、43.2%という低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、運用などに向かう。
43.2%を、越後の地から読む
新潟縣信用組合の預貸率43.2%という低さは、県内に広く店舗を構えて預金を集めながら、組合員への貸出先には限りがあることの表れだと読める。県名を冠する信用組合として、新潟県の広い範囲で預金を集める力は強い。一方、貸す相手は組合員の中小・零細事業者に限られ、米どころの地ではその範囲にもおのずと限界がある。よく預金を集めるほど、預貸率は下がりやすい。これは、地方の県を地盤とする大型信用組合に共通して見られる姿だと読める。
自己資本比率9.72%という水準は、信用組合として手堅く、不良債権比率3.64%という数字も、極端に高いわけではない。越後の地で広く預金を集め、組合員の中小に貸し、貸し切れない分を運用に向ける——それが、新潟縣信用組合の数字に表れた生き方だと読める。同じ新潟県では、県西端の糸魚川を地盤とする糸魚川信用組合が、より小さな規模で別の地域を支えている。県全体を地盤とする大型信組と、一地域に密着する小さな信組——新潟県の信用組合は、規模も地盤も異なる姿で地域を支えている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
新潟の経済とともに
新潟縣信用組合の数字は、米どころ・越後という土地と、そこで県内に広く店舗を構えて預金を集める大型信組の歩みの、両方を映している。預金の4割ほどを組合員に貸しながら、残りを運用に向け、新潟県を代表する信用組合として在り続けてきた。越後の地で預金を集める力と、貸出先の限りが、43.2%という低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。新潟縣信用組合を見れば、米どころ・越後の経済と、そこに広く根ざす大型信組の姿が浮かぶ。新潟県の他の金融機関は、県西端の糸魚川信用組合、県トップの地銀第四北越銀行、第二地銀の大光銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。新潟県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、新潟県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沿革・地域(新潟市に本店を置き、越後・新潟県の広い範囲を地盤とする信用組合であること、合併を経て県内に広く店舗を構える大型信組になったこと、新潟が信濃川・阿賀野川が日本海に注ぐ越後平野の中心都市で北前船の寄港地・越後米の集散地として栄えたこと、越後平野が米どころであること)に関する記述=新潟縣信用組合および各種公開情報にもとづく。
新潟・越後の地理・経済(越後平野、信濃川、阿賀野川、日本海、北前船、米どころ、穀倉地帯)に関する記述=各種公開情報。