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水島信用金庫——巨大コンビナートの街で、みずしんは誰に貸すか

預貸率37.0%、預金2,521億円、自己資本比率12.15%、不良債権比率4.17%。岡山県倉敷市に本店を置く水島信用金庫。岡山県の製造品出荷額の半分を占める水島臨海工業地帯を抱えながら、倉敷市内のみに店舗を置く「みずしん」は、預金の4割しか貸さない。なぜか。同じ岡山の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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岡山県の倉敷市に本店を置く水島信用金庫は、預金2,521億円を持つ信用金庫だ。店舗16。「みずしん」の呼び名で知られ、その16店舗すべてが倉敷市内にある。一つの市のみに展開する、全国的にも珍しい「1市完結」の信金だ。本拠の水島地区には、岡山県の製造品出荷額のおよそ半分を占める水島臨海工業地帯が広がる。みずしんは、こうした巨大コンビナートの街・倉敷水島に根ざしてきた信金だ。

本拠の水島地区は、もともと漁業と干拓農業の農漁村だった。戦後、岡山県が海面を埋め立てて工業用地を造成し、石油精製・鉄鋼・石油化学などの大企業を誘致した。いまや水島臨海工業地帯は岡山県経済の中核をなし、全国有数の巨大工業地帯へと成長している。だが、ここで一つの問いが立つ。これほどの工業地帯を足元に抱えながら、水島信用金庫の預貸率は37.0%——預金の4割弱しか貸していない。なぜ、巨大コンビナートの街の信金が、これほど貸さないのか。同じ岡山県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。水島信用金庫の預金は2,521億円、貸出金は932億円。預貸率は37.0%で、預金の4割弱しか貸出に回していない。自己資本比率は12.15%、不良債権比率は4.17%。店舗数は16、すべて倉敷市内にある。

同じ岡山県の信金と比べてみる。同じ倉敷市の玉島信用金庫(預貸率41.7%・自己資本15.21%)、岡山市を地盤とするおかやま信用金庫(預貸率41.2%・自己資本11.81%)と並べると、水島信用金庫の預貸率37.0%は、岡山の信金のなかでも低めの水準だ。岡山県の信金は預貸率4割前後にとどまるものが多く、水島はそのなかでもやや低い。巨大工業地帯を抱える街の信金でありながら、貸出は預金の4割弱にとどまる。これは、水島臨海工業地帯の大企業に貸しているわけではないことを示している。コンビナートの石油・鉄鋼・化学といった大企業は、信用金庫ではなく、メガバンクや地方銀行が融資の主な担い手だ。信金法の制約もあり、大企業は信金の取引先ではない。水島信用金庫が貸すのは、工業地帯そのものではなく、その周りで暮らし、働く地元の中小事業者や住民だ。

岡山県の信用金庫(令和7年3月末)
 水島信用金庫玉島信用金庫おかやま信用金庫
本店倉敷市倉敷市岡山市
預貸率37.0%41.7%41.2%
自己資本比率12.15%15.21%11.81%
不良債権比率4.17%5.56%5.55%

いずれも岡山県の信金。水島は預貸率が最も低いが、不良債権比率も三者のなかで最も低い。

水島信用組合から——水島信用金庫の歩み

水島信用金庫は、1950年(昭和25年)6月、中小企業等協同組合法に基づき水島信用組合として設立された。同年7月に開業し、1952年(昭和27年)5月、信用金庫法に基づいて水島信用金庫に改組した。同年8月、本店を倉敷市水島の現在地に移している。以来、戦後の水島臨海工業地帯の発展とともに、倉敷市内に店舗を広げてきた。倉敷市内のみに16店舗を構え、職員も倉敷出身者が多い。「地域社会との共存共栄」を基本理念に掲げ、地元の祭り(水島港まつり・倉敷天領夏祭り)への参加や子ども食堂の手伝いなど、地域に密着した活動を続けている。

巨大コンビナートの街という土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。工業地帯の中核を担うのは石油・鉄鋼・化学の大企業だが、それらは信金の取引先ではない。信用金庫が向き合うのは、その工業地帯を支える地元の中小事業者や、そこで働く人びとの暮らしだ。下請け・関連の中小企業、商店、住民——みずしんは、コンビナートそのものではなく、その周辺の地域経済に貸してきた。預貸率37.0%という低めの水準は、巨大工業地帯を抱えながらも、信金が向き合えるのは地元の中小事業者・住民に限られることの表れだと読める。一方で、預金は工業地帯の活況を背景に厚く積み上がる。預金は集まるが、信金として貸せる相手は中小に限られる——その構造が、低めの預貸率に表れていると読める。不良債権比率4.17%が同県の信金のなかで最も低いことは、堅実に貸してきたことを映していると読める。

37.0%を、水島から読む

水島信用金庫の預貸率37.0%という低めの水準は、巨大コンビナートの街でありながら、信金が貸せる相手は工業地帯の大企業ではなく、地元の中小事業者や住民に限られることの表れだと読める。岡山県経済の中核をなす水島臨海工業地帯を足元に抱えながら、その大企業融資はメガバンクや地銀が担い、みずしんは地域の暮らしと中小の商いに貸してきた。

そのうえで、自己資本比率12.15%という厚さと、同県の信金で最も低い不良債権比率4.17%が共存していることが、この信金の性格を物語る。工業地帯の活況で集まる厚い預金を抱えつつ、貸出は地元の中小に堅実に向ける——その姿勢が、37.0%という低めの預貸率と、低い焦げ付きに表れていると読める。預貸率が低いこと自体は、その信金が悪いことを意味しない。土地に巨大企業があっても、信金が向き合えるのは中小であるという業態の枠が、この数字を形づくっている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

岡山の経済とともに

水島信用金庫の数字は、巨大コンビナートの街・倉敷水島という土地と、そこで地元の中小に貸してきた信金の生き方の、両方を映している。工業地帯の大企業ではなく、その周りの中小事業者と住民に堅実に貸しながら、倉敷の地域経済を支えてきた。巨大工業地帯と信金業態の枠の組み合わせが、37.0%という低めの預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。水島信用金庫を見れば、巨大コンビナートの街の経済と、そこで地元の中小に貸す信金の姿が浮かぶ。岡山県の他の金融機関は、同じ倉敷の玉島信用金庫、岡山市のおかやま信用金庫、県内最大の地銀中国銀行、第二地銀のトマト銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。岡山県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、岡山県の地域金融機関のページへ。

水島信用金庫と融資のはなし

水島信用金庫は、巨大工業地帯の街・倉敷水島に深く根ざした信用金庫です。地元の中小事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。足元に巨大企業があっても、信用金庫が貸せる相手は中小事業者に限られるため、預金が厚く積もる土地では預貸率が低めに出ることがある。低いこと自体は良し悪しを意味せず、不良債権比率や自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の姿が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。玉島信用金庫・おかやま信用金庫の数値も同出典。
沿革(1950年6月に中小企業等協同組合法に基づき水島信用組合として設立、同年7月に開業、1952年5月に信用金庫法に基づき水島信用金庫に改組、同年8月に本店を倉敷市水島の現在地に移転したこと、16店舗すべてが倉敷市内にあり一つの市のみに展開する珍しい信金であること、通称「みずしん」、「地域社会との共存共栄」を基本理念とすること)=水島信用金庫および各種公開情報にもとづく。
水島・倉敷の地理・産業(倉敷市、水島地区、水島臨海工業地帯、高梁川河口の埋立造成、石油精製・鉄鋼・石油化学などの誘致企業、岡山県の製造品出荷額のおよそ半分を占めること、戦前は漁業・干拓農業の農漁村だったこと)に関する記述=各種公開情報。
信用金庫が大企業ではなく中小事業者を主な取引先とすること=信用金庫法等にもとづく一般的な制度説明。

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