コザ信用金庫——沖縄でただ一つの信金は、基地の街で何に貸すか
預貸率68.5%、中小先1.3万件。沖縄市に本店を置くコザ信用金庫。沖縄県内で唯一の信用金庫が、米軍基地を抱える本島中部に根ざし、預金の7割近くを貸す姿を、沖縄という土地から読みます。
沖縄県沖縄市に本店を置くコザ信用金庫は、地元で「コザしん」と呼ばれる信用金庫です。預金2,527億円、貸出金1,732億円、店舗20。沖縄県内で唯一の信用金庫であり、県都・那覇市ではなく、本島中部の沖縄市に本店を構えています。
本拠地の沖縄市は、かつて「コザ市」と呼ばれた、沖縄本島中部の中心都市です。嘉手納基地をはじめとする米軍基地が周辺に広がり、戦後はアメリカ文化の影響を色濃く受けた、独特の歴史を持つ街です。エイサーやロックの街としても知られ、観光・サービス業、飲食、小売、そして基地に関連する経済が、地域の暮らしと結びついてきました。本土とは異なる歴史と経済を歩んできたこの土地柄が、コザ信用金庫の数字を読む鍵になります。
コザ信用金庫は、米国施政下の1954年に胡差(こざ)商工信用協同組合として設立され、1971年にコザ信用金庫へ改組しました。2002年には、経営危機に陥った沖縄信用金庫を救済合併し、本島南部にも店舗網を広げました。こうして、沖縄県内で唯一の信用金庫となったのです。数字の面で目を引くのは、預貸率68.5%という高さです。
まず、数字を並べる
コザ信用金庫の預金は2,527億円、貸出金は1,732億円、預貸率68.5%。自己資本比率は11.65%、不良債権比率は1.3%と低い。中小企業等向けの貸出先は1万2千件を超えます。
| 預金 | 2,527億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,732億円 |
| 預貸率 | 68.5% |
| 自己資本比率 | 11.65% |
| 不良債権比率 | 1.3% |
| 中小企業等向け貸出先 | 12,798件 |
| 店舗 | 20店 |
預貸68.5%・不良債権1.3%。県内唯一の信金が、本島中部で貸す数字。
68.5%を、沖縄という土地から読む
預貸率68.5%は、信用金庫のなかでは高めの水準です。本紀行で見てきた地方の信金の多くが、預貸率3割から5割ほどで運用に頼るなか、コザ信用金庫は集めた預金の7割近くを貸出に回している。運用に逃げず、地域に積極的に貸している信金です。不良債権比率1.3%という低さとあわせて読むと、堅実に、かつ積極的に地域へ資金を供給してきた姿が見えてきます。
コザ信用金庫が貸す相手は、本島中部を中心とする沖縄の中小事業者と個人です。中小企業等向けの貸出先が1万2千件を超えることが、その性格をよく表しています。沖縄は、本土に比べて大企業の集積が乏しく、観光・サービス業や小売、建設といった中小・零細事業者が経済の芯を成す。そうした無数の事業者に、県内唯一の信金として深く向き合ってきたことが、預貸率68.5%という高さを支えていると読めます。沖縄の経済は、観光を中心に近年成長してきた面があり、地域に資金需要があることも、この高めの預貸率の背景にあるとみられます。
不良債権比率1.3%という低さは、堅実な与信の積み重ねの表れと読めます。県内唯一の信金として、地域の事業者を長く見てきた目利きが働いている可能性があります。自己資本比率11.65%という相応の厚みとあわせて、積極的に貸しながらも健全性を保つ経営がうかがえます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、本土とは異なる歴史と経済を歩んできた沖縄という土地、そして県内唯一の信金という立場を抜きに、この数字は読めません。
同じ沖縄で、地銀と並べてみる
本紀行には、同じ沖縄県の沖縄海邦銀行も登場しています。沖縄海邦銀行は、沖縄の地方銀行のひとつでした。県内唯一の信金として中小に深く貸すコザ信用金庫(預貸率68.5%・店舗20)と、地銀である沖縄海邦銀行とを並べると、本土から遠く離れた沖縄で、地銀と県内唯一の信金が、それぞれの立場で地域経済を支えていることが見えてきます。沖縄の地銀の姿は、沖縄海邦銀行の記事もあわせてどうぞ。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
コザ信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。コザ信用金庫にとって、その「地元」とは、米軍基地を抱える本島中部を芯とする沖縄の地域経済です。県内唯一の信金として、地区の中小に深く向き合うという役割を、長く担ってきたといえます。
借り手にとっての意味
県内唯一の信用金庫は、沖縄の中小事業者や個人にとって、地銀と並ぶ身近で頼りになる存在です。創業支援にも取り組み、地域の事業の芽を育てようとする姿勢も見られます。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、沖縄の経済を映す
預貸率68.5%という高さと、1万2千を超える中小貸出先は、本土とは異なる歴史を歩み、中小・零細が経済の芯を成す沖縄に根ざし、県内唯一の信金として地域に深く貸してきた姿を映しています。運用に逃げる信金もあれば、コザ信用金庫のように積極的に地域へ貸す信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。コザ信用金庫の数字は、基地の街に立つ沖縄唯一の信金「コザしん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。沖縄県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、沖縄県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
コザ信用金庫の沿革・地盤(1954年に胡差商工信用協同組合として設立、1971年にコザ信用金庫へ改組、沖縄市本店、沖縄県内で唯一の信用金庫であること、2002年に沖縄信用金庫を救済合併し本島南部に店舗網を広げたこと、創業支援への取り組み)に関する記述=コザ信用金庫および各種公開情報にもとづく。
沖縄市・沖縄本島中部の歴史と経済(旧コザ市、米軍基地、戦後のアメリカ文化の影響、観光・サービス業、中小・零細が経済の中心であること)に関する記述=各種公開情報。
沖縄海邦銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。