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大阪厚生信用金庫——なにわの信金は、なぜ厚い資本で4割台しか貸さないのか

預貸率44.5%、預金1兆5,825億円、自己資本比率17.11%。大阪市に本店を置く大阪厚生信用金庫。なにわに根ざす信金が、なぜ厚い自己資本を持ち、預金の4割台しか貸さないのか。同じ大阪の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 大阪府

大阪府の大阪市に本店を置く大阪厚生信用金庫は、預金1兆5,825億円を持つ信用金庫だ。店舗30。大阪市を中心に、大阪府内を地盤としている。預金1兆5千億円を超える、大阪府内でも大型の信金だ。

本拠の大阪は、いうまでもなく西日本最大の商工業都市だ。古くから「天下の台所」と呼ばれた商都であり、卸・小売・製造・サービスと、あらゆる業種の中小事業者が密集する。大阪厚生信用金庫は、こうした商工業者が密集するなにわに根ざし、地域の中小・零細事業者を支えてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率44.5%という低さと、自己資本比率17.11%という厚さだ。1兆5千億円を超える預金を集めながら、貸出はその4割台にとどまり、自己資本は際立って厚い。商工業者が密集する大阪に根ざしながら、なぜこれほど貸さず、これほど資本を厚く積むのか。同じ大阪の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。大阪厚生信用金庫の預金は1兆5,825億円、貸出金は7,040億円。預貸率は44.5%で、預金の4割台を貸出に回している。自己資本比率は17.11%と厚く、不良債権比率は4.96%。店舗数は30、中小企業等への貸出残高は6,891億円。

同じ大阪市で、より大きな規模を持つ大阪信用金庫(預貸率62.6%・自己資本比率14.39%)と比べると、両者は対照的だ大阪厚生信用金庫の預貸率44.5%は大阪信用金庫(62.6%)を大きく下回り、自己資本比率17.11%は大阪信用金庫(14.39%)を上回る。同じなにわの商工業者を地盤とする信金でも、大阪信用金庫はよく貸し、大阪厚生信用金庫は貸出を抑えて厚い資本を積む。これは、大阪厚生信用金庫が、商工業者の密集する大阪にありながら、貸出を堅実に絞り、運用などで利益を積んで厚い資本を蓄えてきたことの表れだと読める。同じ土地でも、それぞれの信金が選んだ経営の方針が、対照的な数字に表れていると読める。

大阪市の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 大阪厚生信用金庫大阪信用金庫
本店大阪市大阪市
預金1兆5,825億円2兆5,353億円
預貸率44.5%62.6%
自己資本比率17.11%14.39%
不良債権比率4.96%6.86%

同じ大阪市を地盤とする二つの信金。大阪厚生信用金庫は貸出を抑えて厚い資本を積み、大阪信用金庫はよく貸す。同じ土地でも、それぞれが選んだ経営の方針が対照的な数字に表れている。

なにわとともに——大阪厚生信用金庫の歩み

大阪厚生信用金庫は、なにわの中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。商都の卸・小売の事業者、地場の製造業、サービス業、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。大阪厚生信用金庫は、複数の信用金庫の合併を経て、預金1兆5千億円を超える大型信金へと成長してきた。

大阪という土地は、信用金庫にとって、商工業者の密集する地盤だ。「天下の台所」と呼ばれた商都として、あらゆる業種の中小事業者がひしめく。貸出先には事欠かない土地だが、大阪厚生信用金庫は、集めた預金を無理に貸し切るのでなく、貸出を堅実に絞り、運用などで利益を積むという方針をとってきたと読める。そのぶん、預貸率は44.5%と低くなる一方、貸出に回りきらない預金は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、17.11%という厚い自己資本となってきたと読める。

17.11%の資本を、なにわから読む

大阪厚生信用金庫の自己資本比率17.11%という厚さは、商工業者の密集する大阪にありながら、貸出を堅実に絞り、運用などで着実に利益を積んできたことの表れだと読める。同じ大阪市の大阪信用金庫が預貸率62.6%でよく貸すのとは対照的に、大阪厚生信用金庫は預貸率44.5%にとどめ、厚い資本を積む。これは、地盤の資金需要の問題というより、堅実を旨とする経営の方針の表れだと読める。

不良債権比率4.96%という数字は、大阪の中小事業の浮き沈みを映すが、17.11%という厚い自己資本が十分に吸収できる。なにわで商工業者に貸しつつ、貸出を堅実に絞り、運用で利益を積み、厚い資本で守りを固める——それが、大阪厚生信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。よく貸す大阪信用金庫とは対照的なこの姿は、同じ土地でも信金によって経営の方針が分かれることを示している。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

大阪の経済とともに

大阪厚生信用金庫の数字は、商工業者の密集するなにわという土地と、そこで貸出を抑えめにしながら厚い自己資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割台を地元に貸しながら、運用で利益を積み、厚い自己資本で守りを固めてきた。「天下の台所」と呼ばれた大阪の経済が、44.5%という預貸率と、17.11%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。大阪厚生信用金庫を見れば、なにわの経済と、そこで厚い資本を積む大型信金の姿が浮かぶ。大阪府の他の金融機関は、よく貸す大阪信用金庫大阪シティ信用金庫、北摂の北おおさか信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。大阪府の他の金融機関と並べて眺めたい方は、大阪府の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。商工業者が密集し、貸出先に事欠かない土地でも、貸出を堅実に絞り、運用などで利益を積む方針をとれば、預貸率は低くなる一方、厚い自己資本を蓄えられる。同じ土地の信用金庫でも、それぞれの経営方針によって預貸率は大きく変わる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。大阪信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(大阪市に本店を置き、大阪府内を地盤とする信用金庫であること、複数の信用金庫の合併を経て預金1兆5千億円を超える大型信金になったこと、大阪が「天下の台所」と呼ばれた西日本最大の商工業都市で卸・小売・製造・サービスの中小事業者が密集すること)に関する記述=大阪厚生信用金庫および各種公開情報にもとづく。
大阪・なにわの地理・経済(大阪市、天下の台所、商都、卸、小売、製造業、サービス業)に関する記述=各種公開情報。

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