川口信用金庫——鋳物のまちの信金は、なぜよく貸しながら焦げ付きが低いのか
預貸率56.4%、預金9,985億円、不良債権比率1.97%。川口市に本店を置く川口信用金庫。鋳物のまち・川口に根ざす「かわしん」が、なぜよく貸しながら焦げ付きを低く保つのか。その数字と歴史を読む。
埼玉県の川口市に本店を置く川口信用金庫は、地元で「かわしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金9,985億円、店舗45。川口市を中心に、埼玉県南部から東京の一部までを地盤としている。預金1兆円に迫る、埼玉県内でも大型の信金だ。
本拠の川口市は、荒川を隔てて東京に接する、埼玉県南部の工業都市だ。古くから鋳物のまちとして知られ、鋳物・機械・金属加工の中小事業者が層をなしてきた。近年は都心への近接性からマンションや住宅地も増え、ベッドタウンとしての性格も強まっている。鋳物のものづくりと、首都圏のベッドタウン——この二つの顔を持つ川口に、川口信用金庫は根ざしてきた。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率56.4%という標準からやや高めの水準と、不良債権比率1.97%という低さだ。預金の6割近くを貸出に回しながら、焦げ付きは低い。なぜ、鋳物のまちの信金は、よく貸しながら焦げ付きを低く保つのか。数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。川口信用金庫の預金は9,985億円、貸出金は5,636億円。預貸率は56.4%で、預金の6割近くを貸出に回している。自己資本比率は11.83%、不良債権比率は1.97%と低い。店舗数は45、中小企業等への貸出残高は5,022億円。
同じ川口市には、もう一つ青木信用金庫(預貸率52.5%・不良債権比率3.62%)という信用金庫がある。両者を比べると、川口信用金庫の預貸率56.4%は青木信用金庫(52.5%)をやや上回り、不良債権比率1.97%は青木信用金庫(3.62%)を下回る。同じ鋳物のまち・川口を地盤とする二つの信金でも、川口信用金庫は、よく貸しながら焦げ付きをより低く抑えている。これは、川口信用金庫が、鋳物・金属加工の事業者との長い関係のもとで、貸出先を堅実に見極めてきたことの表れだと読める。ものづくりの集積する川口は、信用金庫にとって貸出先に事欠かない一方、相手の事業をよく知ることで焦げ付きを抑えられる土地だと読める。
| 川口信用金庫 | 青木信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 川口市 | 川口市 |
| 預金 | 9,985億円 | 7,949億円 |
| 預貸率 | 56.4% | 52.5% |
| 自己資本比率 | 11.83% | 9.89% |
| 不良債権比率 | 1.97% | 3.62% |
同じ川口市を地盤とする二つの信金。川口信用金庫はよく貸しながら焦げ付きをより低く抑える。鋳物のまちの事業者との関係のもとで貸出先を堅実に見極めてきた歩みが数字に表れている。
鋳物のまち・川口とともに——川口信用金庫の歩み
川口信用金庫は、鋳物のまち・川口の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。鋳物の工場、金属加工の事業者、地域の商店、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。川口信用金庫は、ものづくりの川口とともに歩み、預金1兆円に迫る大型信金へと成長してきた。
川口という土地は、信用金庫にとって、ものづくりの事業者の資金需要の厚い地盤だ。鋳物・機械・金属加工の中小事業者が層をなし、設備投資や運転資金の需要がある。地元のものづくりの事業者に密着し、会員との長い関係のもとで深く貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率56.4%という水準を支えている。そして、相手の事業をよく知ることで、貸出先を堅実に見極め、不良債権比率1.97%という低い焦げ付きを保ってきたと読める。
1.97%を、鋳物のまちから読む
川口信用金庫の不良債権比率1.97%という低さは、鋳物のまち・川口で、ものづくりの事業者との長い関係のもとで貸出先を堅実に見極めてきたことの表れだと読める。信用金庫は、会員という限られた範囲に貸すぶん、相手の事業をよく知る立場にある。川口信用金庫は、その強みを生かして、よく貸しながらも焦げ付きを低く抑えてきた。預貸率56.4%という水準は、ものづくりの資金需要によく応えていることを示す。
自己資本比率11.83%という水準も、信用金庫として手堅い。鋳物のまちでものづくりの事業者に深く貸し、関係のもとで焦げ付きを低く抑え、堅実に資本を積む——それが、川口信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。よく貸すが堅実、という両立は、ものづくりの集積する土地に根ざす信用金庫の一つのかたちだと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
埼玉の経済とともに
川口信用金庫の数字は、鋳物のまち・川口という土地と、そこでものづくりの事業者に深く貸しながら焦げ付きを低く保つ大型信金の歩みの、両方を映している。預金の6割近くを地元に貸しながら、関係のもとで焦げ付きを低く抑え、堅実に資本を積んできた。ものづくりの集積する川口の経済が、56.4%という預貸率と、1.97%という低い焦げ付きに表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。川口信用金庫を見れば、鋳物のまち・川口の経済と、そこでものづくりに貸す大型信金の姿が浮かぶ。埼玉県の他の金融機関は、県内最大の信金埼玉縣信用金庫、飯能の飯能信用金庫、県トップの地銀武蔵野銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。埼玉県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、埼玉県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。青木信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(川口市に本店を置き、埼玉県南部から東京の一部を地盤とする信用金庫であること、川口が荒川を隔てて東京に接する鋳物のまちで、鋳物・機械・金属加工の中小事業者が層をなすこと、近年は都心近接のベッドタウンの性格も強まっていること)に関する記述=川口信用金庫および各種公開情報にもとづく。
川口の地理・産業(荒川、鋳物、機械、金属加工、ものづくり、ベッドタウン)に関する記述=各種公開情報。