清水銀行——港町から生まれた静岡3番手の地銀は、独立を保って何に貸すか
預貸率78.9%、店舗79。静岡市清水区に本店を置く清水銀行。6つの銀行が合併した駿州銀行を源流とし、清水の港町に根ざして堅実経営を続ける静岡県3番手の地方銀行。清水エスパルスのスポンサーとしても知られる。その数字と歴史を読む。
静岡市清水区。富士山を望み、まぐろの水揚げと茶の積み出しで栄えた清水港を抱えるこの港町に、清水銀行の本店はある。静岡県を地盤とする地方銀行で、県内には全国屈指の優良地銀と呼ばれる静岡銀行があり、独自路線で知られるスルガ銀行がある。清水銀行は、その二行に次ぐ、静岡県で3番手の地方銀行として歩んできた。
静岡県は、東西に長く、製造業の集積する豊かな県だ。県都・静岡市から、楽器とオートバイの浜松、製紙の富士、漁業の焼津まで、個性ある産業が点在する。多くの銀行や金融機関がひしめいた土地で、その多くが県のトップ・静岡銀行に集約されていったなか、清水の港町には、いまも独立した一つの地方銀行が根を張っている。
清水銀行は、その規模に比べて、全国的な知名度が高い。理由は、サッカーにある。Jリーグの清水エスパルスの、創立時からのスポンサーなのだ。サッカーどころ・清水の象徴であるチームを、地元の銀行が支え続けてきた。その地元への密着が、この銀行の性格をよく表している。数字とともに、その姿を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。清水銀行の預金は1兆5,984億円、貸出金は1兆2,617億円。預貸率は78.9%で、預金の8割近くを貸出に回している。自己資本比率は8.35%、不良債権比率は1.12%と低い。店舗数は79、中小企業等への貸出残高は1兆78億円にのぼる。
目を引くのは、預貸率78.9%という高さと、不良債権比率1.12%という低さの両立だ。よく貸しながら、焦げ付きは低く抑えている。県のトップ・静岡銀行が預貸率89.6%と際立って高いのに比べると控えめだが、第3位の地銀として、地元によく貸しながら堅実さも保つ——その性格が、この数字に表れている。
| 清水銀行 | 静岡銀行 | |
|---|---|---|
| 種別 | 地方銀行 | 地方銀行 |
| 預金 | 15,984億円 | 119,847億円 |
| 貸出金 | 12,617億円 | 107,350億円 |
| 預貸率 | 78.9% | 89.6% |
| 不良債権比率 | 1.12% | 0.85% |
県を代表するのは全国屈指の優良地銀静岡銀行。預金量で7倍以上の差がある。県東部の沼津にはスルガ銀行と静岡中央銀行もあり、静岡は地銀が複数並び立つ土地だ。そのなかで清水銀行は、清水の港町に根ざす3番手として独立を保つ。
六つの銀行が一つに——「駿州銀行」から始まった
清水銀行の創業は、1928年(昭和3年)にさかのぼる。この年、富士川銀行、由比銀行、江尻銀行、蒲原銀行、庚子銀行、岩淵銀行という6つの銀行が合併し、駿州銀行が設立された。いずれも、清水を中心とする駿河湾沿岸の地に根ざした、地元の銀行だった。小さな地元銀行が力を合わせて、一つの大きな銀行になる——昭和初期の金融再編のなかで生まれた銀行である。
その後、1932年に旧清水銀行を合併し、1948年(昭和23年)に、いまの清水銀行へと商号を変えた。以来、清水の港町を本拠に、静岡県中部に根を張ってきた。清水市時代から引き継ぐ形で、静岡市と富士市の指定金融機関——公金を扱う銀行——も務めている。通帳やカードに描かれた天女は、地元・三保の松原に伝わる羽衣伝説にちなんだもので、港町の銀行らしい意匠だ。
2002年には、経営破綻した中部銀行の事業の一部を引き受けた。このとき、清水銀行のほか、県東部の地銀や他行も受け皿となり、破綻した地元銀行の店舗と顧客を分け合って受け止めた。地域金融の安定を、地元の銀行どうしで支えた一幕だった。
78.9%を、独立を保つ3番手から読む
清水銀行の預貸率78.9%は、地方銀行のなかでよく貸す部類に入る。全国屈指の優良地銀である静岡銀行の89.6%には及ばないが、第3位の地銀として、集めた預金の8割近くを地元に貸している。この数字の背景には、静岡県中部という、製造業の集積した豊かな土地がある。清水港の物流、地元の中小製造業、家計の需要——貸す相手が一定数いる土地であることが、高めの預貸率を支えている。
そして、これだけ貸しながら不良債権比率は1.12%と低い。これは、港町に根ざして地元を知り抜いた、堅実経営の表れだと読める。県内貸出シェアは7%ほどと、規模では大手に大きく水をあけられているが、無理に背伸びをせず、地元に着実に貸す。県トップの静岡銀行や、独自路線のスルガ銀行とは異なる、第3位の地銀ならではの堅実が、この数字にはある。自己資本比率8.35%という水準は、規模の小ささを映しつつも、健全さは保たれている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
清水の港とともに
清水銀行の数字は、まぐろと茶の港・清水という土地と、独立を保って地元に貸し続ける3番手の地銀の堅実の、両方を映している。6つの小さな地元銀行が一つになって生まれ、港町に根を張り、破綻した銀行を引き受け、サッカーのまちを支えながら、いまも独立した地方銀行として歩んでいる。規模を競うのではなく、地元とともにある——その姿が、78.9%という数字と1.12%という低い焦げ付きに表れている。
銀行の数字は、その土地の経済と、その銀行の生き方を映す鏡だ。清水銀行を見れば、港町・清水と、独立を保って堅実に貸す地方銀行の姿が浮かぶ。同じ静岡県の銀行とあわせて眺めたい方は、県トップの静岡銀行の記事や、県東部のスルガ銀行・静岡中央銀行の記事もどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。静岡銀行の数値も同出典。
沿革(1928年に富士川銀行・由比銀行・江尻銀行・蒲原銀行・庚子銀行・岩淵銀行の6行が合併して駿州銀行が設立されたこと、1932年の旧清水銀行の合併、1948年の清水銀行への商号変更、静岡県で静岡銀行・スルガ銀行に次ぐ3番手の地銀であること、静岡市・富士市の指定金融機関であること、2002年に経営破綻した中部銀行の事業の一部を引き受けたこと、清水エスパルスの創立時からのスポンサーであること、通帳・カードの天女が三保の松原の羽衣伝説にちなむこと、県内貸出シェアが約7%であること)に関する記述=清水銀行および各種公開情報にもとづく。
静岡県の地理・産業(東西に長い県土、清水港、製造業の集積、静岡・浜松・富士・焼津などの都市)に関する記述=各種公開情報。