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静清信用金庫——静岡市のもう一つの信金は、なぜ厚い資本で4割台しか貸さないのか

預貸率42.9%、預金9,874億円、自己資本比率17.25%、不良債権比率2.77%。静岡市に本店を置く静清信用金庫。静岡市に根ざす信金が、なぜ厚い自己資本を持ちながら4割台しか貸さないのか。同じ静岡市の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 静岡県

静岡県の県都・静岡市に本店を置く静清信用金庫は、預金9,874億円を持つ信用金庫だ。店舗42。静岡市を中心に、静岡県中部を地盤としている。預金1兆円に迫る、静岡県内でも大型の信金だ。名前の「静清(せいしん)」は、かつての静岡市と清水市の地域をあわせた呼び名に由来する。

本拠の静岡市は、徳川家康ゆかりの城下町として開けた、静岡県の県都だ。県庁所在地として行政・商業の中心を担い、清水港を擁する物流・水産の拠点、そして周辺には茶の産地が広がる。温暖な気候のもと、商業・サービス業に加え、地場の中小製造業や食品産業が層をなす。静清信用金庫は、こうした家康ゆかりの県都・静岡に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率17.25%という厚さと、預貸率42.9%という低めの水準だ。厚い資本を持ちながら、預金の4割台しか貸出に回していない。なぜ、静岡市の信金は、こうした数字になるのか。同じ静岡市を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。静清信用金庫の預金は9,874億円、貸出金は4,236億円。預貸率は42.9%で、預金の4割台を貸出に回している。自己資本比率は17.25%と厚く、不良債権比率は2.77%。店舗数は42、中小企業等への貸出残高は3,690億円。

同じ静岡市を地盤とするしずおか焼津信用金庫(預貸率50.1%・自己資本比率13.94%)と比べると、静清信用金庫のほうが、貸出を抑えめにして、より厚い資本を持つ。静清信用金庫の預貸率42.9%はしずおか焼津信用金庫(50.1%)を下回り、自己資本比率17.25%はしずおか焼津信用金庫(13.94%)を上回る。同じ県都・静岡市に本店を置く二つの信金でも、静清信用金庫はより堅実に、貸出を絞って厚い資本を積む姿勢が数字に表れている。不良債権比率2.77%という低さも、堅実な貸し方を映していると読める。

静岡市を地盤とする二つの信用金庫(令和7年3月末)
 静清信用金庫しずおか焼津信用金庫
本店静岡市静岡市
預金9,874億円1兆8,490億円
預貸率42.9%50.1%
自己資本比率17.25%13.94%
不良債権比率2.77%3.14%

ともに県都・静岡市に本店を置く二つの信金。静清信用金庫は貸出を抑えめにして、より厚い資本を積む。同じ土地でも信金ごとに貸し方が異なることが数字に表れている。

家康の県都・静岡とともに——静清信用金庫の歩み

静清信用金庫は、静岡・清水の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。静岡の商店、清水港に関わる物流・水産の事業者、茶業者、地場の中小製造業、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。静清信用金庫は、静岡と清水の地域に根ざし、合併を経て、県都・静岡を代表する信金の一つへと成長してきた。

静岡という土地は、信用金庫にとって、温暖で安定した、堅実な地盤だ。県都として商業・サービス業が集積し、清水港の物流・水産、周辺の茶業、地場の中小製造業が広がる。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで堅実に貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率42.9%という水準の背景にある。預金は集まるが、それを無理に貸し切るのでなく、相手の事業をよく見極めて堅実に貸し、貸出に回りきらない分を運用などに向けて利益を資本へ積む。その積み重ねが、17.25%という厚い自己資本となってきたと読める。

17.25%の資本を、県都・静岡から読む

静清信用金庫の自己資本比率17.25%という厚さと、預貸率42.9%という低めの水準は、家康ゆかりの県都・静岡という堅実な地盤で、貸出を抑えめにして利益を着実に資本へ積んできたことの表れだと読める。温暖で安定した静岡は、預金が集まりやすい一方、無理に貸出を伸ばすよりも堅実な経営を選ぶ素地がある。静清信用金庫は、相手の事業をよく見極めて堅実に貸し、不良債権比率2.77%という低い焦げ付きを保ちながら、厚い資本を積んできた。

同じ静岡市のしずおか焼津信用金庫が預貸率50.1%とより貸出を伸ばすのに対し、静清信用金庫は42.9%とより抑えめだ。これは、同じ土地でも信金ごとに経営の選択が異なることを示す。家康の県都・静岡で、会員の中小に堅実に貸し、低い焦げ付きと厚い資本を保つ——それが、静清信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。堅実を旨とする静岡の信金の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

静岡の経済とともに

静清信用金庫の数字は、家康ゆかりの県都・静岡という土地と、そこで貸出を抑えめにしながら厚い資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割台を地元に貸しながら、残りを堅実に運用し、低い焦げ付きと厚い資本で守りを固めてきた。清水港の物流・水産、茶業、地場の中小製造業が広がる静岡の経済が、42.9%という預貸率と、17.25%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。静清信用金庫を見れば、家康の県都・静岡の経済と、そこで堅実に貸す大型信金の姿が浮かぶ。静岡県の他の金融機関は、同じ静岡市のしずおか焼津信用金庫、東部の三島信用金庫、中東遠の島田掛川信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。

自己資本比率とは 自己資本比率とは、金融機関の総資産に対する自己資本の割合。損失が出たときに、自前の資本でどれだけ吸収できるかを示す、健全性の目安の一つだ。信用金庫には国内基準で4%以上が求められる。温暖で安定した堅実な地盤を持つ信用金庫は、預金が集まる一方、無理に貸出を伸ばすよりも相手をよく見極めて堅実に貸し、利益を資本へ積むことで、厚い自己資本と低い不良債権比率を保つことがある。預貸率とあわせて見ることで、その信金の経営の性格が見えてくる。 → あわせて「預貸率の読み方」もどうぞ

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。しずおか焼津信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(静岡市に本店を置き、静岡県中部を地盤とする信用金庫であること、名称が旧静岡市と旧清水市の地域をあわせた「静清」に由来すること、合併を経て県都・静岡を代表する信金の一つになったこと、静岡が徳川家康ゆかりの城下町・県庁所在地で、清水港を擁する物流・水産の拠点であり茶の産地が広がること)に関する記述=静清信用金庫および各種公開情報にもとづく。
静岡の地理・経済(静岡、清水、徳川家康、城下町、県庁所在地、清水港、物流、水産、茶)に関する記述=各種公開情報。

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