鹿沼相互信用金庫——木工のまち・鹿沼で、信金は何に貸すか
預貸率47.2%、自己資本比率9.44%、不良債権比率2.34%。鹿沼市に本店を置く鹿沼相互信用金庫。大正期の鹿沼相互金庫を源流とし、木工・建具のまちに根ざす信金の数字を、堅実に貸すという視点から読みます。
- 2026.07.08【保証協会】外食団体、「セーフティネット保証1号」の適用を要請。全東信の破綻が理由、連鎖倒産防止。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
栃木県鹿沼市に本店を置く鹿沼相互信用金庫は、預金2,260億円、貸出金1,067億円、店舗12。鹿沼市を中心に、宇都宮市・日光市・栃木市の一部までを地盤とする信用金庫です。
本店のある鹿沼市は、栃木県のほぼ中央、日光連山の南麓に開けたまちです。古くから木工と建具のまちとして知られ、組子細工や建具、家具などの木工業が地場産業として根を張ってきました。日光東照宮の造営に集まった職人の技が、土地に木工の伝統を残したとも言われます。日光例幣使街道の宿場として栄えた歴史を持ち、絢爛な彫刻屋台が繰り出す秋祭り、そして園芸植物のさつき(皐月)の名産地としても知られる——この、木と職人の手仕事が息づく土地柄が、鹿沼相互信用金庫の数字を読む鍵になります。
この信用金庫の成り立ちは、1925年に設立された「有限責任信用組合鹿沼相互金庫」にさかのぼります。戦中・戦後の制度改正を経て、1951年に信用金庫法に基づき「鹿沼相互信用金庫」となりました。「相互」という名は、地域の人々が資金を融通しあう相互扶助の組織として出発した歩みを映しています。数字の面で目を引くのは、不良債権比率2.34%という低さと、自己資本比率9.44%という、信用金庫としてはやや薄めの守りの組み合わせです。
まず、数字を並べる
鹿沼相互信用金庫の預金は2,260億円、貸出金は1,067億円、預貸率47.2%。自己資本比率は9.44%、不良債権比率は2.34%。中小企業等向けの貸出先は9,253件です。
| 預金 | 2,260億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,067億円 |
| 預貸率 | 47.2% |
| 自己資本比率 | 9.44% |
| 不良債権比率 | 2.34% |
| 中小企業等向け貸出先 | 9,253件 |
| 店舗 | 12店 |
預貸率47.2%・不良債権2.34%。木工のまちに根ざし、薄めの守りで堅実に貸す信金の数字を読む。
47.2%と2.34%を、木工のまちから読む
預貸率47.2%は、信用金庫としては中庸の水準です。本紀行で見てきた、預貸率が3割台にとどまる地方の信金と比べれば、しっかり貸している方に入ります。目を引くのは、その貸出の質です。不良債権比率2.34%は、地方の信用金庫のなかでも低い部類で、自己資本比率9.44%というやや薄めの守りとあわせて読むと、ひとつの輪郭が浮かびます。守りを厚く積み上げて備えるよりも、集めた資金を地元にしっかり回し、かつ焦げ付かせない——そうした堅実に貸す信金の姿です。
鹿沼相互信用金庫が貸す相手は、鹿沼市を中心とする地元の中小事業者です。木工・建具・家具の職人や事業者、まちの建設業、商業、そして周辺の農業が、その融資先に含まれると考えられます。9,253件という中小企業等向けの貸出先の多さは、地域の小さな事業者の一軒一軒に資金を届けてきた歴史の厚みを思わせます。木工という地場産業が、規模は大きくないながらも土地に根を張って続いてきたことが、預貸率47.2%という中庸の水準と、不良債権2.34%という低さを支えていると読めます。
もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、木と職人の手仕事が息づく鹿沼という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。薄めの自己資本は、見方を変えれば、資金を抱え込まず地元に回してきたことの裏返しとも読めます。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
鹿沼相互信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。鹿沼相互信用金庫にとって、その「地元」とは、木工・建具を地場産業とし、職人の手仕事が続く鹿沼市を中心とした地域経済です。「相互金庫」を源流とし、地域の人々が資金を融通しあう相互扶助から出発したこの信金にとって、地元の小さな事業者に資金を回すことは、制度の枠であると同時に、成り立ちそのものでもあります。9,253件という貸出先の多さは、その出自を映した数字と読めます。
同じ県の、金融機関と並べてみる
同じ栃木県を代表する地銀として、足利銀行(預貸率78.7%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・足利銀行(預貸率78.7%)と、木工のまち鹿沼に根ざすこの鹿沼相互信用金庫(預貸率47.2%)とを並べると、同じ栃木でも、県全域を相手にする地銀と、特定のまちに密着する信金とで、貸す範囲も性格も異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、足利銀行の記事もあわせてどうぞ。
同じ栃木県の県都・宇都宮には、栃木信用金庫があります。預貸率49.2%の栃木信用金庫と、預貸率47.2%の鹿沼相互信用金庫は、近い水準で地元に貸す信金どうしです。県都の信金と、木工のまちの信金。同じ栃木でも、それぞれの土地に根ざす信金の姿は、栃木信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、木工・建具という手仕事を担う鹿沼の小さな事業者にとって、土地の事情と地場産業を知る信金の存在は心強いものです。中庸の預貸率と低い不良債権は、堅実に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、根を張る土地を映す
預貸率47.2%という中庸の水準と、不良債権比率2.34%という低さは、木工のまち鹿沼に根を張り、地元の職人や事業者に資金を回してきた信金の姿を映しています。守りを厚く積む信金もあれば、薄めの守りで堅実に貸す信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。鹿沼相互信用金庫の数字は、木と手仕事のまちに根ざす信金の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。栃木県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、栃木県の地域金融機関のページもどうぞ。
鹿沼相互信用金庫は、地元にしっかり貸す信用金庫です。実際に借入れを考えるなら、土台になるのは事業の中身を伝える準備と、保証制度の理解。借りる側が知っておきたい融資・保証の基礎をまとめました。
- → 創業融資の受け方
- → 事業計画書の書き方
- → 信用保証協会とは
- → セーフティネット保証とは
- → 当座貸越とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
鹿沼相互信用金庫の沿革(1925年に有限責任信用組合鹿沼相互金庫として設立、制度改正を経て1951年に鹿沼相互信用金庫へ)、鹿沼市・宇都宮市・日光市・栃木市の一部を事業区域とすること、本店所在地に関する記述=鹿沼相互信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
鹿沼市の木工・建具業、日光例幣使街道の宿場、彫刻屋台、さつきに関する記述=各種公開情報。
足利銀行・栃木信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。
本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。