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栃木銀行——無尽から育った「とちぎん」は、県境を越えて何に貸すか

預貸率70.3%、預金3.1兆円。宇都宮市に本店を置く栃木銀行「とちぎん」。三つの無尽会社の合併から育った第二地銀が、栃木と埼玉東部という二つの地盤で貸す姿を読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 栃木県

栃木県宇都宮市に本店を置く栃木銀行は、地元で「とちぎん」と呼ばれる第二地方銀行です。預金3兆1,211億円、貸出金2兆1,928億円、店舗83。栃木県には足利銀行というトップバンクがありますが、栃木銀行は県内2番手として独自の地盤を持ち、なかでも県境を越えた埼玉県東部に多くの店舗を展開していることが大きな特徴です。

本拠地の栃木県は、関東平野の北部に位置し、農業と内陸工業がともに厚い県です。県都・宇都宮を中心に、自動車・機械などの製造業が集まり、いちごをはじめとする農業も全国有数です。さらに、栃木銀行が地盤とする埼玉県東部は、首都圏のベッドタウンとして人口と事業者が集まる土地です。栃木と埼玉という二つの地盤を持つ——この県境をまたぐ展開が、栃木銀行の数字を読む鍵になります。

栃木銀行の歩みは、無尽から始まります。1942年(昭和17年)12月、農商無尽・富源無尽・足利無尽の3社が合併して、資本金50万円の栃木無尽株式会社が創立されました。その後、1952年に栃木相互銀行へ転換し、1989年に普通銀行へ転換して現在の栃木銀行となりました。無尽(庶民の相互金融)を源流とし、相互銀行を経て普通銀行になるという、第二地方銀行に典型的な成り立ちです。自主経営を貫きながら、栃木県内を中心に、埼玉県東部に多数の店舗を展開してきました。数字の面で目を引くのは、預貸率70.3%という水準です。

まず、数字を並べる

栃木銀行の預金は3兆1,211億円、貸出金は2兆1,928億円、預貸率70.3%。自己資本比率は9.85%、不良債権比率は2.12%。中小企業等向けの貸出残高は1兆5,555億円にのぼります。

栃木銀行(令和7年3月末)
預金3兆1,211億円
貸出金2兆1,928億円
預貸率70.3%
自己資本比率9.85%
不良債権比率2.12%
中小企業等向け貸出残高15,555億円
店舗83店

預金3.1兆円・預貸70.3%。県境を越えて埼玉に展開する第二地銀の数字。

70.3%を、二つの地盤から読む

預貸率70.3%は、地方銀行として標準的な水準です。集めた預金の7割を貸出に回している。第二地方銀行のなかでは、際立って高くも低くもない、堅実な水準です。注目すべきは、この貸出が栃木県内だけでなく、県境を越えた埼玉県東部にも広がっているという点です。

栃木県には足利銀行という県内シェアの高いトップバンクがあります。そのなかで第二地銀の栃木銀行は、地元・栃木で足利銀行と競いつつ、首都圏のベッドタウンとして成長する埼玉県東部に活路を求めてきた。越谷市に9拠点を構えるなど、埼玉での展開は単なる飛び地ではなく、明確な戦略です。人口と事業者の集まる埼玉東部に貸し先を広げることが、県の経済規模だけに頼らない貸出を支えていると読めます。宇都宮を中心とする製造業、農業、そして埼玉東部の都市型の商工業・住宅ローンが、その貸出の中心です。中小企業等向けの貸出残高1兆5,555億円という規模は、二つの地盤の事業者の資金需要を引き受けてきた証です。

不良債権比率2.12%は、地銀として標準的な水準です。栃木と埼玉という二つの地盤に貸し先が分かれ、業種も製造業・農業・都市型サービス業へと分散していることが、リスクの分散につながっていると読めます。自己資本比率9.85%という相応の厚みとあわせて、第二地銀として堅実な経営がうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、県境を越えて埼玉に展開する第二地銀という立場を抜きに、この数字は読めません。

栃木銀行が示すのは、トップバンクの隣で、第二地銀が県境を越えて活路を開く姿です。地元・栃木に加え、首都圏のベッドタウンである埼玉東部に深く展開する。預貸率70.3%という堅実な水準は、その二つの地盤を映していると読めます。

同じ県のトップバンクと並べてみる

本紀行には、栃木県のトップバンクも登場しています。足利銀行です。足利銀行は一時国有化という試練を越え、めぶきフィナンシャルグループの一翼を担う栃木の雄で、預貸率は78.7%でした。トップバンクの足利銀行が県内を広くおさえるのに対し、第二地銀の栃木銀行は埼玉という県外の地盤を育てることで存在感を保ってきた——同じ県の一番手と二番手が、それぞれ異なる戦略で生きていることが見えてきます。県内最大の地銀の姿は、足利銀行の記事もあわせてどうぞ。同じ宇都宮を本拠とする両行は、地元で長く競い合ってきました。

借り手にとっての意味

第二地銀は、トップバンクとは異なる距離感で地域の事業者に向き合う選択肢です。栃木と埼玉の二つの地盤を持つことは、両県にまたがって事業を営む企業にとって心強いものです。預貸率は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、県境を越える戦略を映す

預貸率70.3%という水準は、無尽から育った第二地銀が、地元・栃木にとどまらず、首都圏のベッドタウンである埼玉東部に地盤を広げてきた姿を映しています。県内で完結する地銀もあれば、栃木銀行のように県境を越えて活路を求める地銀もある。数字は、その金融機関がどんな立場で、どんな戦略を選んできたかを語ります。栃木銀行の数字は、トップバンクの隣で独自の道を歩む第二地銀の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歴史の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。栃木県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、栃木県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
栃木銀行の沿革(1942年12月に農商無尽・富源無尽・足利無尽の3社合併で栃木無尽として創立、1952年に栃木相互銀行へ転換、1989年に普通銀行へ転換して栃木銀行となる)、本店所在地(宇都宮市)、栃木県内を中心に埼玉県東部に多数の店舗を展開すること、自主経営を貫いてきたことに関する記述=栃木銀行および各種公開情報にもとづく。
栃木県・埼玉県東部の経済(内陸工業・農業、首都圏のベッドタウン)に関する記述=各種公開情報。
足利銀行の位置づけ=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末および本紀行既出記事。

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