目黒信用金庫——「個人」に貸す希な信金は、中目黒で何を守るか
預貸率54.5%、預金1,932億円、自己資本比率15.23%、不良債権比率0.26%。東京都目黒区中目黒に本店を置く目黒信用金庫。不良債権比率0.26%という際立った健全性を保ち、利益より地域貢献を優先してきた信金が、何を守るのか。同じ都内の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
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東京都の目黒区に本店を置く目黒信用金庫は、預金1,932億円を持つ信用金庫だ。店舗11。中目黒に本店を構え、目黒区を中心に城南・城西の住宅地に店舗を置く。区の名を冠した、目黒に根ざす信金だ。
本拠の目黒区は、東京23区の南西部に位置する落ち着いた住宅都市だ。中目黒・自由が丘・学芸大学といった人気の街を抱え、商店街と住宅が密に重なる。大きな工業地帯や大企業の集積はないが、暮らしと小さな商いが厚く積み重なった土地だ。目黒信用金庫は、こうした住宅都市・目黒に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で最も目を引くのは、不良債権比率0.26%という、際立った低さだ。預貸率は54.5%、自己資本比率は15.23%と厚い。焦げ付きがほとんどなく、資本も厚い。なぜ、目黒の信金は、これほど健全なのか。同じ都内の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。目黒信用金庫の預金は1,932億円、貸出金は1,052億円。預貸率は54.5%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は15.23%、不良債権比率は0.26%。店舗数は11。
同じ都内の信金と比べてみる。城南の老舗芝信用金庫(預貸率52.5%・自己資本13.87%)、世田谷の世田谷信用金庫(預貸率57.2%・不良2.26%)と並べると、預貸率54.5%は都市型信金として標準的な水準にある。だが、不良債権比率0.26%は、都内の信金のなかでも飛び抜けて低い。世田谷信用金庫の2.26%、芝信用金庫の2.39%と比べても、桁が違う。しかも自己資本比率15.23%は三者のなかで最も厚い。焦げ付きがほとんどなく、資本も最も厚い——目黒信用金庫の健全性は際立っている。この数字の背景には、この信金の独特の貸し方がある。一般に信金の貸出は事業者向けが中心で、なかでもコスト効率の高い不動産向けを優先する信金が多いが、目黒信用金庫は「不動産」より「個人」向け貸出が多いという、全国的にも希な構成を持つ。
| 目黒信用金庫 | 芝信用金庫 | 世田谷信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 目黒区 | 港区 | 世田谷区 |
| 預貸率 | 54.5% | 52.5% | 57.2% |
| 自己資本比率 | 15.23% | 13.87% | 8.5% |
| 不良債権比率 | 0.26% | 2.39% | 2.26% |
いずれも東京の都市型信金。目黒は不良債権比率が飛び抜けて低く、自己資本比率も三者のなかで最も厚い。
目黒信用組合から——目黒信用金庫の歩み
目黒信用金庫は、1923年(大正12年)8月に「有限責任目黒信用組合」として設立された。設立の翌月には関東大震災が東京を襲っており、震災からの復興とともに歩みはじめた信金だ。1953年(昭和28年)6月、信用金庫法に基づいて目黒信用金庫に改組した。2001年(平成13年)にはわかば信用金庫から荏原支店を譲り受けている。本店は中目黒に置かれ、目黒区を中心とした住宅地に根ざしてきた。
この信金が際立つのは、その経営姿勢だ。不況により地域サービスを縮小させる信用金庫がある中で、目黒信用金庫は利益よりも地域貢献を優先する営業方針を維持してきた。信用金庫に本来求められる役割を守る、という姿勢だ。貸出の構成も独特で、コスト削減のために「個人」より「不動産」向け貸出を優先する信金が多いなか、目黒信用金庫は「不動産」よりも「個人」向け貸出が多いという、希な存在だ。手間のかかる個人への貸出に向き合い、地域の一人ひとりと付き合う——その丁寧な貸し方が、不良債権比率0.26%という際立った低さと、15.23%という厚い資本を支えていると読める。派手に儲けるより、地域とともに健全であり続ける。それが、この信金の選んだ生き方だと読める。
0.26%を、中目黒から読む
目黒信用金庫の不良債権比率0.26%という際立った低さは、利益より地域貢献を優先し、手間のかかる個人にも丁寧に向き合ってきた貸し方の表れだと読める。住宅都市・目黒の暮らしと小さな商いに、一つひとつ向き合ってきた信金だ。
預貸率54.5%という標準的な水準と、15.23%という厚い資本が共存していることも、この信金の性格を物語る。無理に貸出を伸ばさず、堅実に貸し、資本を厚く保つ。儲けの最大化ではなく、地域とともにある健全さを守る——その姿勢が、0.26%という驚くほど低い焦げ付きと、厚い資本に表れていると読める。信用金庫が本来担うべき役割を、目黒の住宅地で静かに守り続けている信金だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
東京の経済とともに
目黒信用金庫の数字は、住宅都市・目黒という地盤と、そこで地域貢献を優先してきた信金の生き方の、両方を映している。手間のかかる個人にも丁寧に貸し、際立った健全性と厚い資本を保ちながら、中目黒の暮らしを支えてきた。利益より地域を選ぶ姿勢が、0.26%という低い不良債権比率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。目黒信用金庫を見れば、住宅都市・目黒の経済と、そこで地域貢献を優先する信金の姿が浮かぶ。東京の他の金融機関は、城南の老舗芝信用金庫、世田谷の世田谷信用金庫、人を見て貸す巨大信金城南信用金庫、多摩の雄多摩信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。
目黒信用金庫は、住宅都市・目黒に根ざし、地域貢献を優先してきた信用金庫です。地元の住民と事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。芝信用金庫・世田谷信用金庫の数値も同出典。
沿革(1923年8月に「有限責任目黒信用組合」として設立、1953年6月に信用金庫法に基づき目黒信用金庫に改組、2001年にわかば信用金庫から荏原支店を譲り受けたこと、本店が中目黒にあること、利益より地域貢献を優先する営業方針を維持していること、「不動産」より「個人」向け貸出が多い希な信金であること)=目黒信用金庫および各種公開情報にもとづく。
目黒区の地理(目黒区、中目黒、自由が丘、学芸大学、住宅都市、城南・城西)に関する記述=各種公開情報。関東大震災が1923年9月に発生したことは歴史的事実。
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