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世田谷信用金庫——ボロ市の城下町に立つ「せたしん」は、都市で何に貸すか

預貸率57.2%、預金2,661億円、自己資本比率8.5%、不良債権比率2.26%。東京都世田谷区に本店を置く世田谷信用金庫。ボロ市の城下町に根ざし、住宅都市・世田谷で創立100年を超えた信金が、何に貸すのか。同じ城南・城西の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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東京都の世田谷区に本店を置く世田谷信用金庫は、預金2,661億円を持つ信用金庫だ。店舗14。「せたしん」の呼び名で知られ、世田谷区を中心とした城西地区に店舗を構え、一部は神奈川県側にも及ぶ。本店は世田谷のボロ市通りに面し、世田谷代官屋敷の向かいに立つ。区の名を冠した、世田谷を代表する信金だ。

本拠の世田谷区は、東京23区で最も人口の多い区であり、閑静な住宅地が広がる住宅都市として知られる。本店の立つ世田谷の一帯は、彦根藩世田谷領の代官を務めた大場家の代官屋敷が残る古い町で、毎年12月と1月に開かれる「ボロ市」は400年以上の歴史を持つ。商店街と住宅、そして点在する中小の事業所——巨大都市・東京のなかで、生活と商いが密に重なる土地だ。世田谷信用金庫は、こうした住宅都市・世田谷に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字は、預貸率57.2%自己資本比率8.5%、不良債権比率2.26%。預金の6割近くを貸出に回し、資本は標準的、焦げ付きは低い。同じ規模の都市型信金として、ごく堅実な数字だ。なぜ、住宅都市の信金は、こうした数字になるのか。同じ東京の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。世田谷信用金庫の預金は2,661億円、貸出金は1,523億円。預貸率は57.2%で、預金の6割近くを貸出に回している。自己資本比率は8.5%、不良債権比率は2.26%。店舗数は14、中小企業等への貸出残高は1,488億円で、貸出金のほぼ全額を占める。

同じ都内の都市型信金と比べてみる。城南のさわやか信用金庫(預貸率59.5%・自己資本9.74%)、城南の老舗芝信用金庫(預貸率52.5%・自己資本13.87%)と並べると、世田谷信用金庫の預貸率57.2%は、東京の住宅・商業地で貸す信金として標準的な水準にある。中小企業等への貸出残高1,488億円が貸出金のほぼ全額を占める点が目を引く。住宅都市の信金でありながら、貸出はほぼ事業者へ向かっている。不良債権比率2.26%は三者のなかでも低めで、巨大都市の安定した商圏で、堅実に貸してきた姿が読み取れる。自己資本比率8.5%は芝信用金庫(13.87%)ほど厚くはないが、国内基準を十分に満たす水準だ。

東京都の都市型信用金庫(令和7年3月末)
 世田谷信用金庫さわやか信用金庫芝信用金庫
本店世田谷区港区港区
預貸率57.2%59.5%52.5%
自己資本比率8.5%9.74%13.87%
不良債権比率2.26%3.1%2.39%

いずれも東京の都市型信金。世田谷は規模では小さめだが、不良債権比率は三者のなかでも低い。

世田谷信用販売購買組合から——世田谷信用金庫の歩み

世田谷信用金庫は、1921年(大正10年)4月12日に「有限責任世田谷信用販売購買組合」として設立された。1935年(昭和10年)に世田谷信用組合系の組織に改組し、1950年(昭和25年)に世田谷信用組合、1952年(昭和27年)に信用金庫法に基づいて世田谷信用金庫となった。1986年(昭和61年)には愛称を「サバンク世田谷」に変更したが——「サバンク」はSUBURBAN(郊外の)BANKの略だという——あまり浸透せず、現在は従来の「せたしん」の愛称に戻っている。2021年(令和3年)4月、金庫創立100周年を迎えた。本店はボロ市通りに面し、世田谷代官屋敷の向かいに立つ。

住宅都市・世田谷という土地は、信用金庫にとって安定した地盤だ。人口は23区で最多、住宅地に商店街が点在し、中小の事業所も多い。派手な工業や大企業の集積はないが、生活と商いが厚く積み重なった土地——そこで、地元の商店や中小事業者に貸し続けてきたのが世田谷信用金庫だ。預貸率57.2%という水準は、住宅都市の安定した資金需要に応えてきたことの表れだと読める。中小企業等への貸出が貸出金のほぼ全額を占めることは、この信金が住宅都市にありながら、事業者金融を本分としてきたことを示していると読める。不良債権比率2.26%という低さは、巨大都市の安定した商圏で堅実に貸してきたことを映していると読める。

57.2%を、住宅都市から読む

世田谷信用金庫の預貸率57.2%という水準は、住宅都市・世田谷の安定した商圏で、地元の中小事業者に堅実に貸してきたことの表れだと読める。23区で最も人口の多い区の、商店街と住宅が密に重なる土地で、貸出は地域の商いに向かってきた。

規模では大型信金に及ばないが、不良債権比率2.26%という低さと、中小企業等向けが貸出金のほぼ全額を占める構成が、この信金の性格を物語る。巨大都市のなかの一区に深く根を張り、事業者金融に徹してきた——その姿勢が、57.2%という標準的な預貸率と、低い焦げ付きに表れていると読める。自己資本比率8.5%は突出して厚くはないが、堅実な経営を支える水準だ。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

東京の経済とともに

世田谷信用金庫の数字は、ボロ市の城下町という古い土地と、住宅都市・世田谷で100年を歩んできた信金の歴史の、両方を映している。地元の中小事業者に堅実に貸し、低い焦げ付きを保ちながら、巨大都市の一区を支えてきた。住宅と商店街が重なる土地の安定が、57.2%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。世田谷信用金庫を見れば、住宅都市・世田谷の経済と、そこで地域に貸す信金の姿が浮かぶ。東京の他の金融機関は、城南のさわやか信用金庫、城南の老舗芝信用金庫、人を見て貸す巨大信金城南信用金庫、多摩の雄多摩信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。

世田谷信用金庫と融資のはなし

世田谷信用金庫は、住宅都市・世田谷に深く根ざした信用金庫です。地元の中小事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。住宅都市の信金では、安定した商圏のなかで6割近くを貸出に回すことがある。中小企業等向け貸出の比率や不良債権比率とあわせて見ることで、その信金の姿が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。さわやか信用金庫・芝信用金庫の数値も同出典。
沿革(1921年4月12日に「有限責任世田谷信用販売購買組合」として設立されたこと、1950年に世田谷信用組合に改組、1952年に信用金庫法に基づき世田谷信用金庫となったこと、1986年に愛称を「サバンク世田谷」(SUBURBAN BANKの略)に変更したが現在は「せたしん」に戻っていること、2021年4月に創立100周年を迎えたこと、本店がボロ市通りに面し世田谷代官屋敷の向かいに立つこと)=世田谷信用金庫および各種公開情報にもとづく。
世田谷の地理・歴史(世田谷区、ボロ市、世田谷代官屋敷、彦根藩世田谷領、城西地区、住宅都市、23区最多の人口)に関する記述=各種公開情報。

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