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山梨県民信用組合——甲斐の県域信組は、何を抱えて貸すか

預貸率53.2%、預金3,665億円、自己資本比率8.12%、不良債権比率6.63%。甲府市に本店を置く山梨県民信用組合。甲斐の国・山梨を県域とする信組が、よく貸しながら何を抱えるのか。同じ山梨の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 山梨県

山梨県の甲府市に本店を置く山梨県民信用組合は、預金3,665億円を持つ信用組合だ。店舗23。甲府市を中心に、山梨県の各地を広く地盤としている。その名のとおり、甲斐の国・山梨を県域とする信用組合だ。

本拠の甲府市は、武田信玄ゆかりの城下町として開けた、山梨県の県都だ。甲府盆地を中心に、ぶどう・桃をはじめとする果樹栽培が盛んな農業地帯が広がり、ワインの産地としても知られる。周辺には宝飾・水晶加工の地場産業や中小製造業もある。四方を山に囲まれた甲斐の国は、独自の経済圏をなしてきた。山梨県民信用組合は、こうした甲斐の国・山梨に根ざし、県内の中小・零細事業者を支えてきた信用組合だ。

この信組の数字で目を引くのは、預貸率53.2%という標準的な水準と、不良債権比率6.63%というやや高めの数字だ。預金の半分を貸出に回す一方、焦げ付きはやや高い。なぜ、甲斐の県域信組は、こうした数字になるのか。同じ山梨の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。山梨県民信用組合の預金は3,665億円、貸出金は1,949億円。預貸率は53.2%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は8.12%、不良債権比率は6.63%。店舗数は23、中小企業等への貸出残高は1,457億円。

同じ山梨県で、甲府市を地盤とする甲府信用金庫(預貸率42.6%・自己資本比率19.05%)と比べると、山梨県民信用組合のほうが、よく貸す一方、資本は薄く、焦げ付きは高い。山梨県民信用組合の預貸率53.2%は甲府信用金庫(42.6%)を上回り、より多く貸している。一方、自己資本比率は山梨県民信用組合(8.12%)が甲府信用金庫(19.05%)を大きく下回り、不良債権比率は山梨県民信用組合(6.63%)が甲府信用金庫(4.82%)を上回る。同じ甲斐の国を地盤としても、信組と信金で貸し方と備えは対照的だ。信用組合の山梨県民信用組合は、組合員に密着してよく貸すぶん、地域の事業者の浮き沈みを引き受け、焦げ付きもやや高めになっていると読める。

甲府市を地盤とする信組と信金(令和7年3月末)
 山梨県民信用組合甲府信用金庫
本店甲府市甲府市
預金3,665億円5,389億円
預貸率53.2%42.6%
自己資本比率8.12%19.05%
不良債権比率6.63%4.82%

甲斐の国を地盤とする信組と信金。山梨県民信用組合はよく貸し、資本は薄く、焦げ付きはやや高い。信組と信金で貸し方と備えが対照的なことが数字に表れている。

甲斐の国・山梨とともに——山梨県民信用組合の歩み

山梨県民信用組合は、甲斐の国の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。甲府の商店、甲府盆地の果樹農家、ワインや宝飾・水晶加工の事業者、地場の中小製造業、そして住民——こうした人々が組合員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。山梨県民信用組合は、県内の複数の信用組合の合併を経て、山梨県を広く県域とする信用組合へと成長してきた。

山梨という土地は、信用組合にとって、組合員の資金需要のある地盤だ。甲府盆地の果樹・ワイン、宝飾・水晶加工の地場産業、中小製造業と、独自の業種が広がる。組合員という限られた範囲に密着し、深く貸す——この信用組合ならではの貸し方が、預貸率53.2%という水準を支えている。信用組合は、信用金庫よりもさらに組合員に密着し、銀行が手の届きにくい小規模な事業者に貸す。一方、四方を山に囲まれ人口減少も進む甲斐の国では、地域の事業者の浮き沈みを受けやすく、不良債権比率6.63%という数字に、それが映っていると読める。

6.63%を、甲斐の国から読む

山梨県民信用組合の不良債権比率6.63%というやや高めの数字は、甲斐の国で、組合員に密着してよく貸すなかで、地域の中小・零細事業者の浮き沈みを引き受けてきたことの表れだと読める。甲府盆地の果樹・ワイン、宝飾・水晶加工が広がる山梨は、信用組合が貸す相手のある土地だが、四方を山に囲まれ人口減少も進むなかで、返済の滞る先も出やすい。山梨県民信用組合は、預貸率53.2%で預金の半分強を地元に貸し、地域の事業を支えるぶん、焦げ付きも一定程度抱えてきた。

自己資本比率8.12%という水準は、信用組合の国内基準4%は上回るが、同じ甲府の甲府信用金庫(19.05%)と比べると薄い。よく貸すぶん資本の厚みは控えめで、6.63%という焦げ付きとあわせて見ると、地域に深く貸す信用組合の姿が浮かぶ。甲斐の国を県域に、組合員に密着してよく貸し、地域の浮き沈みを引き受ける——それが、山梨県民信用組合の数字に表れた生き方だと読める。地域に深く根ざす信用組合の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

山梨の経済とともに

山梨県民信用組合の数字は、甲斐の国・山梨という土地と、そこで組合員に密着してよく貸す信組の歩みの、両方を映している。預金の半分強を地元の組合員に貸し、甲府盆地の果樹・ワイン、宝飾・水晶加工、中小製造業を支えてきた。よく貸すぶん焦げ付きはやや高めだが、甲斐の国に深く根ざして歩んできた。四方を山に囲まれた甲斐の国の経済が、53.2%という預貸率と、6.63%という焦げ付きに表れている。

銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。山梨県民信用組合を見れば、甲斐の国・山梨の経済と、そこで組合員に密着して貸す信組の姿が浮かぶ。山梨県の他の金融機関は、厚い資本の甲府信用金庫、県内のもう一つの信金山梨信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。山梨県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、山梨県の地域金融機関のページへ。

不良債権比率とは 不良債権比率とは、貸出金などの債権のうち、返済が滞るなどして回収に懸念のある債権の占める割合。比率が高いほど、焦げ付きのリスクを抱えていることを示す。ただし、比率の高さは必ずしも貸し方の甘さを意味しない。組合員という限られた範囲に密着して貸す信用組合は、地域の中小・零細事業者の浮き沈みを引き受けるぶん、焦げ付きを一定程度抱えやすい。自己資本比率とあわせて見ることで、その焦げ付きを吸収できる備えがあるかが見えてくる。 → あわせて「預貸率の読み方」もどうぞ

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。甲府信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(甲府市に本店を置き、山梨県を広く県域とする信用組合であること、県内の複数の信用組合の合併を経て県域の信用組合になったこと、甲府が武田信玄ゆかりの城下町・県都で甲府盆地を中心にぶどう・桃などの果樹栽培が盛んでワインの産地として知られること、宝飾・水晶加工の地場産業があること、四方を山に囲まれた甲斐の国が独自の経済圏をなすこと)に関する記述=山梨県民信用組合および各種公開情報にもとづく。
甲府・山梨の地理・経済(甲府、甲斐、武田信玄、城下町、甲府盆地、果樹、ぶどう、桃、ワイン、宝飾、水晶)に関する記述=各種公開情報。

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