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大企業と取引するには——「与信される前提」を、先に持っておく

調査会社を使って、取引先の素性を確かめる。前にそんな話をしました。今度は、その立場を裏返します。大企業や自治体と取引しようとすれば、今度はあなたが調べられる側です。与信される側だという前提を、先に持っておく。その構えと、整えておくべき実体の話を掘り下げます。

TIPS-C ・ 初めての銀行取引HowTo

はじめに——これは「地方の金融機関」共通の話

ここで述べる手続き・心得は、地方金融機関のいずれでも共通するフローだと思ってください。都市銀行(メガバンク)を別にすれば、地域の金融機関との付き合い方は、おおむね同じ作法で通ります。そして今回の話は、金融機関にとどまらず、あなたが取引したいと願う大きな相手すべてに通じます。

立場が、入れ替わる

別のところで、合う銀行を探すために調査会社を窓口として使う話をしました。取引先の威勢のよさが本物か、調査会社のチケットで確かめる、とも書きました。あれは、あなたが「調べる側」に立つ話です。

ここでは、立場が入れ替わります。大企業や自治体と取引しようとなれば、今度はあなたが調べられる側になる。相手は、まさにあなたがやろうとしたのと同じことを、あなたに対してやるのです。帝国データバンク(TDB)や東京商工リサーチ(TSR)で、あなたの会社を観る。

考え方としては、いずれ与信される、という前提を、先に持っておく。そして、相手が必要であろう情報は、透明性を高めて、先に公開しておく。先にTDBやTSRへ素性を開示しておけば、相手の調査の手間が省け、話が早く進むことも多いのです。

ここで思い出してほしいことがあります。この連載で繰り返してきた信用づくりは、積立で財務の余力を示すこと、まめさで人物の信を積むこと——形は違っても、ぜんぶ一本につながっています。その積み重ねが、ここでまとめて、与信という形で読まれる。今は小さくても、準備だけは今から要る、というのはそういうことです。

何で読まれるのか——TDBの評点、ひとつの目安

では、具体的に何を見られるのか。一つの目安として、TDBの評点でいえば、五十点があるかないかは大きな分かれ目になります。

TDBは、資金面の健全性を強く意識して点をつける傾向があるように見えます。つまり、どれだけ将来性を語っても、そこが弱いと、なかなかいい点は得られない。具体的には、次のあたりが、それなりに重いテーマになります。

「資本の欠損」について、会計のことばで簡単に説明します。会社は、株主が払い込んだお金(資本金など)を元手に始まります。ところが赤字が続くと、その損失が積み重なって(繰越利益剰余金のマイナス)、元手を食いつぶしていく。純資産が資本金を下回った状態が、資本の欠損です。さらに進んで、純資産そのものがマイナスになると、債務超過——会社の財産をすべて売り払っても、借金を返しきれない状態です。貸借対照表の純資産の部に、その累積した赤字が表れます。相手は、ここを見ています。

点が足りなくても、もう一つの評点がある

では、財務がまだそこに届かない人は、門前払いなのか。そうとも限りません。

財務的に少々の不安があっても、社会でのレピュテーション(評判)が、評点に加算されていきます。つまり、人望が厚いかどうか。地域や業界で誠実にまめに振る舞ってきた人——窓口づくりの話に当てはまる人は、人物面のスコアが高く出ます。財務の点と、人物の点。この合算で、五十点は、嘘をつかずに超えられる課題だと思います。だからこそ、嘘でごまかすのでなく、クリアできる経営そのものを意識したほうがいい。

もう一つ、評判については補足しておきます。SNSの評判や口コミは、大企業や自治体の側がしっかり見ています。今の時代、取引相手を決める前に、ネット上の評判をスクリーニングするのは当たり前になりました。TDBのような調査会社も、今どきであれば見てはいるでしょう。ただし、それが評点という数字にどこまで反映されるかは、未知数です。よほどの悪評で、しかもそれが事実で、具体性があり、調査員の取材実感が伴っているのでない限り、点数そのものには、あまり大きくは響かないと思われます。とはいえ、取引相手の目に直接さらされる以上、評判を粗末にしてよい理由には、なりません。

「誰と取引しているか」が、次の信用を呼ぶ

ここからが、大企業取引の本当の旨味です。一度どこかと取引できれば、その実績そのものが、次の扉を開きます。

考えてみてください。聞いたこともない個人事業主との取引を二十件こなして得た百万円と、NTTやトヨタから継続的に得ている百万円。同じ百万円でも、貸し手や次の取引先の目には、まるで違って映ります。後者は、何よりの安定感に見える。これは理屈である前に、人間の心理です。今の時代なら、GoogleやYouTubeから毎月まとまった入金が続いている、というのも、銀行はしっかり評価してきます。

相手は結局、「この売上は、いったいいつまで続くのだろうか」という目で、あなたを観察しています。その問いに答えるのが、目に見える流行であり、取引先の規模と安定感です。店舗や配信ビジネスなら流行が、企業相手(ToB)のビジネスなら取引先の規模が、いちばん分かりやすい目安になります。

そして、その実績は、ちゃんと見える形で残ります。大口の取引は、通帳の履歴に出る。さらに、融資を申し込むときや、新しい相手に商品を売り込むとき、「天下の大企業○○と取引しています」「あの会社の製品に、うちのものが使われています」と言えることの効果は、絶大です。一社との実績が、看板になる。

では、その最初の一社を、どう取るか

とはいえ、実績ゼロから最初の大企業取引を取るのは、正直、非常に難しい。そのうえで、経験から言える入口が、二つあります。

このどちらかが、自分から飛び込みで売り込みに行くより、はるかに速い。ただし、これを起こすには、相手の社内の人や、その取引先の目に、あなたが「見つかる」必要があります。だからこそ、メディアへの露出や広告の戦略が効いてくる。思い描いた道筋を、あの手この手で現実の形にしていく——その手間を惜しまないことです。

つまずきやすいところ——保証金と、継続性

動く前に、知っておくべき現実が一つ。場合によっては、保証金が要ります。

とくに、あなたが買う側として——つまり大企業を仕入れ先にしたい場合は、保証金はほぼ必要になると思っておいたほうがいい。それを織り込んで資金を考えておくことです。逆に、あなたが売る側のときは、保証やメンテナンスをこの先も続けられるか、という継続性が、必ず議題に上がります。ここでものを言うのが、またしてもTDBなどの評点、とりわけ財務の堅牢さです。「この会社、来年もちゃんと存在しているか」を、相手は気にする。無駄遣いの習慣を改めろと繰り返してきたのは、突き詰めれば、この一点のためです。

もう一つ。自治体と取引する場合、土木建設業などでは、経営事項審査(経審)の点が重要になります。これは業種の違う者が軽々しく口を挟める領域ではありません。経審のスコアを上げたいなら、それを専門にするコンサルタントを探すこと。これは、その道のプロに任せる話です。

大企業と取引するとは、関係でも勢いでもなく、与信に耐える実体を、先に持っておくこと。財務の堅牢さも、人物の信も、一日では積めません。だからこそ、今が小さくても、準備は今から始めるのです。
本記事は一般的な商取引・信用調査の考え方を示すものです。TDB・TSRの評点の基準や算定方法は各社の非公開の判断を含み、本文中の目安(評点や流動性比率の水準など)は筆者の経験にもとづく推定です。経営事項審査・保証金・与信の取扱いは、業種・相手先・時期によって異なります。具体的な対応は、各調査会社・取引先、および経審など専門領域については専門のコンサルタントにご確認ください。

あなたは、それをどれくらいのスパンで実現するかを逆算し、必要のないことを切り捨てる準備が、できていますか。

大企業との取引も、与信に耐える実体も、思いつきでは届きません。いつまでに、どこへ立つのか。そこから逆算したとき、本当に要ることだけを、わき目もふらず実行し続けられるか。その一点に、たいていは懸かっています。

提供:¥Today

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