自分に向いている銀行の見つけ方——調査会社を、窓口として使う
経営するということは、必然的に、合理性や論理性の追求を徹底するということです。メインバンクを選ぶ——その致命的な経営判断の一部に、合理性をどう適用するか。その手段の一つを、ここで提示します。
はじめに——これは「地方の金融機関」共通の話
ここで述べる手続き・心得は、地方金融機関のいずれでも共通するフローだと思ってください。都市銀行(メガバンク)を別にすれば、地域の金融機関との付き合い方は、おおむね同じ作法で通ります。
先に言っておきます。この記事は、あなた向けではないかもしれない
この話が役に立つのは、年商が一億円を超えて、次のステップをまじめに考える必要性が実感できる段階になってきた会社です。
これから創業する方、まだ決算を一度も終えていない方、年商がそこに届かない方——あなたが行く先は、迷う必要がありません。近所の信用金庫と、政策金融公庫です。まずは創業融資の相談から始めてください。
では、なぜ一億円を超えた会社が、いまさら銀行を探し直すのか。たいてい、理由ははっきりしています。商売が伸びて、借りたい額が、付き合ってきた信用金庫の支店長の決裁権を超えてきた。あるいは、公庫だけでは、いざというときの動きが鈍い。月商が膨らんできた結果、月末の残高が心許ない、年商ベースで考えると流動性比率に問題がある——そう感じ始めたときです。ここまで地道に積んできた積立や返済の記録は、もう立派な実績として、数字に残っています。それを手土産に、もう一段上の相手のところへ、軸足を移していく。そういう局面の話です。
その辺を歩き回るのが、なぜ無駄なのか
合う銀行を探そうとして、目についた銀行になんとなく相談してみる人がいます。やめたほうがいい。不思議なもので、そういう人は、たいてい都市銀行へ行ってしまいます。
たとえば、年商一億円ほどの会社が、大きな都市銀行の窓口に座ったとします。応対してくれた相手は、丁寧です。けれど、その丁寧さの奥で、あなたという客の重みは、ほとんどゼロに近い。向こうが日々相手にしているのは、桁の二つ三つ違う会社だからです。そこであなたが一生懸命に事業を語っても、熱意は宙に浮きます。
逆もあります。そもそも、いまは新しい貸し先を増やす気のない銀行というのも、確かにあるのです。そういう支店に申し込めば、相手は穏やかに、けれど確実に、話を引き延ばして、やがてうやむやにします。あなたは何週間かを失う。回る前に、せめて「ここは脈がありそうか」の当たりだけでもつけておけば、その時間は丸ごと節約できたはずです。
銀行を見るとき、本当に見るべき三つ
当たりをつけるために、何を見るのか。突き詰めると、三つです。
一つ、規模が釣り合っているか。借りたい額と事業の身の丈に、その銀行が合っているか。預貸率のような表に出ている数字は、その入口になります。でも預貸率は、あくまで表面的な目安にすぎません。実態がどうなのかという情報を持っていない人が、たとえば「ここは運用で稼いでいるから、そもそも貸し出しをする必然性が全くない銀行だ」といった判断を、自力で下せるでしょうか。表の数字の奥は、なかなか見えないのです。
二つ、いま、貸したがっているか。同じ銀行でも、積極的に貸し先を探している時期と、絞っている時期があります。ダメな時期は、何をしてもダメなのであって、結果の出ないことに時間を浪費しても、意味がありません。
三つ、担当者と、肌が合うか。これがいちばん大事で、いちばん厄介です。なぜなら、誰が自分の担当になるかは、申し込んでみるまで分からないからです。会ったこともない相手の人柄を、先回りして知ることはできない。——だとすれば、どうするか。あなたのことも、その銀行のことも、両方を知っている誰かに、間に立ってもらえばいい。ここで、調査会社が効いてきます。
銀行の「裏側」を知っている相手が、すぐそこにいる
銀行は、お金を貸す前に、その会社が本当に大丈夫かを調べます。自分たちで全部は調べきれないから、外部のプロに「あの会社、実際どうなの」と素性を調べさせる。その調べを請け負っているのが、信用調査会社です。代表が、帝国データバンク(以下、TDB)と、東京商工リサーチ(以下、TSR)。
断っておくと、実際に使ってきたのはTDBのほうで、TSRの中身は細かくは分かりません。ただ、両社は同じ商売をしている、ほぼ瓜二つの競合です。だから、ここで書くことと同じようなことが、TSRでもできると考えてもらっていい。以下、TDBで話します。
ここがポイントです。銀行があなたを調べるとき、その調査をしているのがTDBなら、TDBは「どの銀行が、どんな会社を、どう見ているか」を、あいだに立って一番よく知っていることになる。銀行の値踏みの現場に、毎日立ち会っている相手なのです。つまり、あなたが相手からどう見えるかを考えながら、相性を判断して手伝ってくれるわけです。
では、どう動くか
難しいことはありません。順番にいきます。
- TDBに、調査チケットの購入を申し込む。これが入口です。申し込むと、TDBの担当者が、あなたの会社へやってきます。
- 購入時に、取引内容を打ち合わせて、付き合える範囲でチケットを引き受ける。調査一回につき一枚を消費するチケットを、たしか十五枚ほどから販売していたはずです。背伸びせず、自分が使い切れる範囲で持つ。そして、その機会に、自社の情報もTDBに登録しておいてもらうといい。
- 取材を受け、その場で、はっきり相談する。「いま、うちに合う金融機関を探している」と。資金需要はこれくらいで、自分はこういう経営をしている人間だ、と率直に伝える。その人柄と需要にマッチしそうな銀行を、プロの目で探してほしい、と。
登録というのは、要するに、自社の情報をディスクロージャーしてしまう、ということです。隠すのではなく、進んで素性を明かす。これ自体が、これから大きな取引先と組むための信用を、先に積んでおくことになります。
また、銀行の側もTDBを使っているので、そのエリアで新しい貸し先を探している銀行の営業マンが、登録されたあなたの会社を、向こうから見つけてくれることがある。こちらから探しに行くだけでなく、見つけてもらう側にも回れる、ということです。
なお、「TDBを使えば、自社の点数(評点)が分かる」と思っている人がいますが、自分の会社の点数を、自分で見ることはできません。どうしても知りたければ、知り合いの会社に頼んで、あなたの会社を調べてもらってください。
TDBを使う目的は、いまの時点では、合う銀行を探してもらうこと。そして将来的には、与信が必要になったとき、買っておいたチケットを使って、取引先をしっかり与信すること、そして自分自身が与信される時のために、情報をあらかじめ公開しておくことです。ただでさえ不安な月末の残高を、これ以上減らさないために——取引先の威勢のよさが本物か、見せかけか、きちんと確かめる癖も、いまのうちにつけてしまいましょう。
そして、最後にものを言うのは、結局「人」です
ここまで、規模だ、営業姿勢だと、仕組みの話をしてきました。でも、本当に大事なことを、最後に言います。多くの人が、これを甘く見すぎている。
結局、最後にものを言うのは、担当者と、あなたの、人としての相性です。
あなたを嫌いな人間は、あなたの話を信じません。肌の合わない担当者に当たれば、まず間違いなくそうなる。「この人は返せる」という判定が、おりない。貸さない方向に話が傾くか、貸すにしても、額を削れるだけ削った、しょっぱい話しか出てこない。
融資の稟議書を書くのも、それに判を押すのも、最後は生身の人間です。あなたがどれだけ数字を整え、計画を練り上げても、向き合う相手があなたを気に入らなければ、その努力は伝わりにくくなる。だからこそ、両方を知っていて、話の帰趨を予測できる人に相談する姿勢が、重要なのです。
あなたは、相手との「相性」を、数字や計画と同じくらい、本気で見ていますか。
提供:¥Today