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中日信用金庫——名古屋の都市信金「ちゅうしん」は、何に貸すか

預貸率52.7%、預金3,419億円、自己資本比率11.21%、不良債権比率4.13%。愛知県名古屋市北区に本店を置く中日信用金庫。名古屋の都市信金「ちゅうしん」が、何に貸すのか。同じ愛知の信金と比べながら、その数字と歩みを読む。

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ニホン銀行紀行 ・ 愛知県

愛知県の名古屋市北区清水に本店を置く中日信用金庫は、預金3,419億円を持つ信用金庫だ。店舗21。地元で「ちゅうしん」と呼ばれ、名古屋市とその隣接21市町を地盤とする。名古屋という大都市に根ざす都市型の信金だ。

本拠の名古屋市は、中部地方の中心都市であり、トヨタを頂点とする自動車産業をはじめ、日本有数のものづくりが集まる中京圏の核だ。中日信用金庫が地盤とするのは、この名古屋市と、清須・北名古屋・小牧・春日井・一宮といった隣接する尾張の市町である。大都市とその周辺には、中小の製造業、卸売・小売、飲食・サービス、個人事業主が密に集まる。中日信用金庫は、こうした名古屋圏の中小事業者と個人に貸してきた。「狭域高密度」を掲げ、限られた地域に深く根を張る都市信金だ。

この信金の数字を見ると、預貸率52.7%という、信金として高めの水準が目を引く。預金の半分強を貸出に回している。名古屋という大都市の信金は、何に貸しているのか。同じ愛知の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。中日信用金庫の預金は3,419億円、貸出金は1,802億円。預貸率は52.7%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は11.21%、不良債権比率は4.13%。店舗数は21。

同じ愛知県の信金と比べてみる。同じ名古屋市に本店を置く愛知信用金庫(預貸率49.0%・自己資本比率14.68%)、やきものの里の瀬戸信用金庫(預貸率51.2%・自己資本比率13.22%)、自動車のまちの豊田信用金庫(預貸率50.6%・自己資本比率10.15%)と並べると、中日信用金庫の預貸率52.7%は、愛知の都市部の信金のなかでやや高めだ。名古屋という大都市の中小事業者に、預金の半分強を積極的に貸している。一方、自己資本比率11.21%は、瀬戸・愛知信金よりやや薄め、豊田信金よりやや厚いという中位の水準だ。大都市で貸出をよく伸ばしつつ、資本は中位を保つのが、この信金の数字の姿だ。不良債権比率4.13%は、都市部の信金としてはやや高めにある。

愛知県・名古屋圏の信用金庫(令和7年3月末)
 中日信用金庫愛知信用金庫瀬戸信用金庫豊田信用金庫
本店名古屋市名古屋市瀬戸市豊田市
預貸率52.7%49.0%51.2%50.6%
自己資本比率11.21%14.68%13.22%10.15%
不良債権比率4.13%3.44%2.66%2.93%

いずれも愛知県の信金。中日は名古屋圏の中小に積極的に貸し、預貸率はやや高め。資本は中位を保つ。

西春日井信用組合から——中日信用金庫の歩み

中日信用金庫は、1952年(昭和27年)1月、西春日井郡新川町(現在の清須市)に「西春日井信用組合」として設立された。名古屋の北西、尾張の地に生まれた組合だった。1954年(昭和29年)4月、信用金庫法に基づいて「中日信用金庫」に改組する。1988年(昭和63年)には名古屋市全域へ営業地区を広げ、名古屋とその周辺に根を張る都市型信金へと育った。本店は名古屋市北区清水に置かれ、略称は「ちゅうしん」。近年は「想いをつなぐ 共につくる未来」をパーパス(存在意義)に掲げ、寄付型定期預金やフードバンクへの寄付、コンサートや寄席の開催など、地域への貢献にも取り組んでいる。

中日信用金庫の歩みには、近年、大きな出来事があった。2022年(令和4年)9月30日、東海財務局は、コロナ禍で業績が落ち込んだ企業向けの国の支援策「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保融資)をめぐる不正を理由に、中日信用金庫に業務改善命令を出した。ゼロゼロ融資をめぐる金融機関への行政処分としては全国で初めてのことだった。同金庫の発表によれば、不正は計79件あり、保証の基準を満たすために取引先の業績を偽って申請するなどして、60社に計約15億円を不正に融資していたという。これを受けて、山田功理事長が引責し、2023年(令和5年)6月の総代会終了時に辞任した。これらはいずれも、同金庫の公表と、日本経済新聞・朝日新聞をはじめとする複数の報道によって明らかにされた公開の事実である。その後、中日信用金庫は再発防止と業務改善に取り組み、新たなパーパスのもとで地域金融機関としての再出発を図っている。

名古屋という大都市を地盤とする都市信金にとって、地域の中小事業者への貸出は事業の根幹だ。預貸率52.7%という高めの水準は、その積極的な貸出姿勢の表れである。同時に、その姿勢が過去に行政処分という形で問われた経緯も、この信金の歩みの一部として公開されている。不良債権比率4.13%という、都市部の信金としてやや高めの数字も、こうした融資の歩みと無縁ではないと読める。数字の背後にある事実を正確に押さえることが、地域金融機関を理解する出発点になる。

52.7%を、名古屋から読む

中日信用金庫の預貸率52.7%という高めの水準は、名古屋という大都市で、中小事業者に積極的に貸してきたことの表れだと読める。大都市とその周辺には中小の製造業・商業・サービスが密に集まり、資金需要も厚い。中日信金は、その需要に応え、預金の半分強を地域に貸す。

そのうえで、この信金の歩みには、ゼロゼロ融資をめぐる全国初の行政処分という出来事が含まれる。これは公開された事実であり、その後の業務改善と再出発もまた、同金庫の歩みの一部だ。名古屋の都市信金として地域に積極的に貸しながら、過去の経緯を踏まえて再発防止に取り組む——その現在地が、52.7%という預貸率と、4.13%という不良債権比率に表れていると読める。名古屋で、ちゅうしんは中京圏の経済とともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

愛知の経済とともに

中日信用金庫の数字は、名古屋という大都市の経済と、西春日井の信用組合に始まり都市信金へと育ち、近年の行政処分を経て再出発を図る歩みの、両方を映している。大都市の中小事業者に積極的に貸しながら、過去の経緯を踏まえた業務改善に取り組んでいる。名古屋圏という土地柄と、その歩みが、52.7%という預貸率と、11.21%という中位の自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。中日信用金庫を見れば、名古屋圏の経済と、そこで中小に貸す都市信金の姿が浮かぶ。愛知県の他の金融機関は、同じ名古屋の愛知信用金庫、やきものの里の瀬戸信用金庫、自動車のまちの豊田信用金庫、中部最大級の岡崎信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛知県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページへ。

中日信用金庫と融資のはなし

中日信用金庫は、名古屋という大都市に根ざし、中小事業者に積極的に貸す都市型の信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。大都市を地盤とする都市型の信金では、中小事業者の資金需要が厚く、預貸率が5割を超えることがある。ただし、貸出の伸びは融資審査の質とあわせて見る必要がある。預貸率の高さは積極的な貸出姿勢を示す一方、その健全性は不良債権比率や自己資本比率とあわせて評価することが大切だ。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。愛知信用金庫・瀬戸信用金庫・豊田信用金庫の数値も同出典。
沿革(1952年1月に西春日井郡新川町〔現・清須市〕に「西春日井信用組合」として設立されたこと、1954年4月に信用金庫法に基づき中日信用金庫に改組したこと、1988年に名古屋市全域へ営業地区を拡張したこと、本店が名古屋市北区清水にあること、略称が「ちゅうしん」であること、名古屋市と隣接21市町を地盤とすること、パーパス「想いをつなぐ 共につくる未来」を掲げていること)=中日信用金庫および各種公開情報にもとづく。
2022年9月30日に東海財務局がゼロゼロ融資をめぐり中日信用金庫に業務改善命令を出したこと(ゼロゼロ融資をめぐる行政処分として全国初であること、計79件の不正、60社に計約15億円の不正融資、山田功理事長が2023年6月の総代会終了時に辞任したこと)=中日信用金庫の公表および日本経済新聞・朝日新聞・時事通信ほか複数の報道にもとづく公開情報。
名古屋・愛知の地理・経済(名古屋市、北区清水、西春日井、清須市、尾張、自動車産業、ものづくり、中京圏)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。

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