福島銀行——SBIと組んだ「ふくぎん」は、クラウドの勘定系で何に貸すか
預貸率75.5%、店舗54。福島市に本店を置く福島銀行。湯本信用無尽を源流とし、業績低迷からSBIの「第4のメガバンク構想」第二弾の出資先となった第二地方銀行。クラウド勘定系で再生に挑む、その数字と歴史を読む。
福島県の県都・福島市に、福島銀行の本店はある。地元では「ふくぎん」と呼ばれる、福島県を地盤とする第二地方銀行だ。福島県には、県トップバンクの地方銀行・東邦銀行があり、福島銀行はそれに次ぐ立場で県の金融を支えてきた。
福島県は、東北の玄関口にあたる広い県だ。太平洋に面した浜通り、県都を含む中通り、そして会津——三つの地域からなり、それぞれに異なる経済と風土を持つ。2011年の東日本大震災と原発事故という大きな試練を経て、いまも復興の途上にある土地でもある。その福島の経済を、東邦銀行や信用金庫とともに、福島銀行は担ってきた。
この銀行を、いま全国の地方銀行が注目している。理由は、ある大きな構想の一員になったからだ。インターネット金融大手・SBIが掲げる「第4のメガバンク構想」——その最初期の出資先の一つが、この福島銀行だった。地方の小さな第二地銀が、ネット金融の力を借りて再生に挑む。その姿を、数字とともに読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。福島銀行の預金は7,626億円、貸出金は5,760億円。預貸率は75.5%で、預金の7割台半ばを貸出に回している。自己資本比率は8.67%、不良債権比率は1.93%。店舗数は54、中小企業等への貸出残高は4,634億円にのぼる。福島県内のほか、栃木・茨城・宮城・埼玉といった近県にも支店を構えている。
規模としては、県トップの東邦銀行とは大きな差がある。預金で見れば、東邦銀行が県全体を覆う大手であるのに対し、福島銀行はそれに次ぐ第二地銀という立ち位置だ。だが、預貸率75.5%という数字は、東邦銀行(70.2%)を上回る。規模では及ばずとも、貸出には積極的——その姿勢が数字に表れている。
| 福島銀行 | 東邦銀行 | |
|---|---|---|
| 種別 | 第二地方銀行 | 地方銀行 |
| 預金 | 7,626億円 | — |
| 貸出金 | 5,760億円 | — |
| 預貸率 | 75.5% | 70.2% |
| 自己資本比率 | 8.67% | — |
県のトップは東邦銀行。規模では大きく上回るが、預貸率では福島銀行のほうが高い。規模に頼れない第二地銀が、よく貸すことで存在感を示す構図だ。福島県には、このほか大東銀行という第二地銀もある。
「湯本信用無尽」から始まった——温泉地に生まれた銀行
福島銀行の創業は、1922年(大正11年)、湯本信用無尽株式会社として、現在のいわき市湯本で設立されたことに始まる。湯本は、古くからの温泉地として知られる土地だ。無尽とは、人々が金を出し合い、くじや入札で順番に融通し合う、庶民の相互金融のしくみ。温泉地の商人や住民の相互扶助から、この銀行は出発した。
その後、1939年(昭和14年)に福島無尽を吸収合併し、福島無尽金庫へと商号を変えて、本店を県都・福島市に移した。戦後、相互銀行法のもとで福島相互銀行となり、1989年(平成元年)に普通銀行へ転換して、いまの福島銀行となった。庶民の無尽から、相互銀行を経て、普通銀行へ——多くの第二地方銀行と同じ道を、福島銀行も歩んできた。戦前から続く金融機関として、地元福島の経済界と深い関わりを持ってきた銀行である。
SBIと組む——「第4のメガバンク構想」の一員に
福島銀行の近年を語るうえで、欠かせないのがSBIホールディングスとの提携だ。きっかけは、業績の低迷だった。2019年、インターネット金融大手のSBIホールディングスは、業績が振るわなかった福島銀行と資本業務提携を結ぶと発表した。
この提携は、SBIの北尾吉孝社長が掲げた「第4のメガバンク構想」の第二弾と位置づけられた。経営に苦しむ地方銀行にSBIが出資し、システムや運用のノウハウを提供して再生を図る——という構想である。SBIは福島銀行の筆頭株主となり、その後、地銀連合の枠組みのなかで、福島銀行はSBIグループの一員として再建を進めることになった。地方の小さな第二地銀が、ネット金融の資本と技術を取り込んで生き残りを図る。その先駆けの一つが、福島銀行だった。
その象徴が、システムの刷新だ。福島銀行は2024年、SBIグループなどと組んで、新しい勘定系システムを稼働させた。注目されたのは、その動作基盤にクラウド(米アマゾンのAWS)を採用した点である。銀行の根幹である勘定系をクラウド上で動かすのは、当時としては先進的な試みだった。コストを抑え、デジタル化を一気に進める——規模で大手に及ばない第二地銀が、技術で活路を開こうとする姿が、ここに表れている。
75.5%を、再生に挑む第二地銀から読む
福島銀行の預貸率75.5%は、第二地方銀行として標準からやや高めの水準だ。同じ福島の県トップ・東邦銀行を上回るこの数字は、規模で大手に及ばない第二地銀が、貸すことで存在感を保とうとする姿勢の表れだと読める。福島県内のみならず、栃木・茨城・宮城・埼玉といった近県にも支店を広げ、貸し先を求めてきた。
その経営は、いまSBIとの提携のもとで再生の途上にある。業績の低迷から、ネット金融の資本と技術を取り込み、クラウドで勘定系を刷新する。地方の小さな銀行が、自前の力だけでなく、外部の資本と技術を借りて生き残りを図る——福島銀行の数字と歩みは、人口減と低金利のなかで地方銀行が直面する課題と、その一つの答えの形を映している。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
福島の経済とともに
福島銀行の数字は、震災と復興を経た福島という土地と、SBIと組んで再生に挑む第二地銀の歩みの、両方を映している。温泉地の無尽から始まり、相互銀行を経て、いまネット金融の力を借りて生き残りを図る。規模では県トップに及ばずとも、よく貸し、近県にも広がり、技術で活路を開こうとする。その姿は、地方銀行のいまを象徴する一つの事例だと読める。
銀行の数字は、その土地の経済と、その銀行が選んだ道を映す鏡だ。福島銀行を見れば、復興の途上にある福島と、再編のうねりのなかで生き残りを図る地方銀行の姿が浮かぶ。同じ福島県の銀行とあわせて眺めたい方は、県トップの東邦銀行の記事や、もう一つの第二地銀・大東銀行の記事もどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福島県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。東邦銀行の預貸率も同出典。
沿革(1922年の湯本信用無尽株式会社設立〔現在のいわき市湯本〕、1939年の福島無尽吸収合併と福島無尽金庫への商号変更・本店の福島市移転、戦後の福島相互銀行への転換、1989年の普通銀行転換で福島銀行、貸出金規模で県トップの東邦銀行に次ぐ存在であること、栃木・茨城・宮城・埼玉の近県への支店展開)に関する記述=福島銀行および各種公開情報にもとづく。
SBIとの提携(2019年のSBIホールディングスとの資本業務提携、北尾吉孝社長の「第4のメガバンク構想」第二弾と位置づけられたこと、SBIが筆頭株主となったこと、SBIグループ〔SBI地銀ホールディングス〕の枠組みでの再建)、2024年の次世代勘定系システムの稼働とクラウド〔AWS〕の採用に関する記述=各種報道および公開情報にもとづく。
福島県の地理・産業(浜通り・中通り・会津の三地域、東日本大震災と原発事故からの復興)に関する記述=各種公開情報。