¥Today ニホン銀行紀行

相双五城信用組合——原発避難を越えた相双で、信組は何を抱えて貸すか

預貸率42.6%、自己資本比率37.92%、不良債権比率8.16%。相馬市に本店を置く相双五城信用組合。相双信組と五城信組の合併で生まれ、原発避難を越えた浜通り北部に根ざす信組の数字を読みます。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 福島県

福島県相馬市に本店を置く相双五城信用組合は、預金862億円、貸出金367億円、店舗14。相馬市を中心に、福島県浜通り北部の相双地域を地盤とする信用組合です。

地盤とする相双(相馬・双葉)は、福島県の太平洋沿岸北部。相馬野馬追で知られる相馬地方と、東京電力福島第一原子力発電所を抱える双葉地方からなります。この信用組合は、2013年に相双信用組合と五城信用組合が合併して発足しました。前身の両組合とも、東日本大震災と原子力災害の被災地を営業区域とし、双葉郡内の浪江・大熊・富岡の店舗は避難区域指定で長く休業を余儀なくされ、近年順次再開してきました。震災と原発事故を正面から引き受けてきた信組です。数字の面で際立つのは、自己資本比率37.92%という、信用組合として桁違いの厚さと、不良債権比率8.16%という高さの組み合わせです。

まず、数字を並べる

相双五城信用組合の預金は862億円、貸出金は367億円、預貸率42.6%。自己資本比率は37.92%、不良債権比率は8.16%。中小企業等向けの貸出先は2,065件です。

相双五城信用組合(令和7年3月末)
預金862億円
貸出金367億円
預貸率42.6%
自己資本比率37.92%
不良債権比率8.16%
中小企業等向け貸出先2,065件
店舗14店

自己資本37.92%・不良債権8.16%。原発避難を越えた相双に根ざす信組の数字を読む。

37.92%と8.16%を、相双から読む

不良債権比率8.16%という高さは、楽観できる数字ではありません。だが、ここで土地の事情を抜きに断じるのは早計です。相双は、原子力災害という、一金融機関の努力では抗いがたい打撃を受けた土地です。避難で事業の基盤そのものを失った事業者は数多く、その傷は貸出の質に長く影を落とします。8.16%は、その地とともに在り続けてきたことの重みでもあります。

そして、それと並ぶのが自己資本比率37.92%という桁違いの厚さです。原発事故への賠償や各種の支援、預金の集中などを背景に、結果として極めて厚い自己資本を抱える形となっています。預貸率42.6%という控えめな水準は、避難と人口流出で地区の借り手が大きく細るなか、集めた資金を貸し切れない相双の現実を映しています。傷を抱え、厚い守りを持ちながら、それでも地区に残って貸し続ける——そこにこの信組の姿が表れています。もちろん個別の事情も絡むため断定はできませんが、原発避難を越えた相双という土地を抜きに、この信組の数字は読めません。

相双五城信用組合が示すのは、原子力災害を引き受けた土地に残り、傷と厚い守りを抱えてなお貸し続ける信組の姿です。不良債権8.16%は土地が背負ったものの重みであり、自己資本37.92%という桁違いの厚さは、その傷のなかで地域を支え続けるための備えです。数字の奥にある土地の事情まで読みにいくことが、この信組を理解する鍵になります。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

信用組合が融資できる相手は原則として「組合員」に限られます。組合員になれるのは、中小企業等協同組合法などにより、その信用組合の地区内に住所や事業所がある中小事業者・勤労者などで、員外への貸出には制限があります。事業者には規模の制限もあり、大企業は組合員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。相双五城信用組合にとって、その「地元」とは、避難と帰還の途上にある相双の地域経済です。地区の外へ自由に逃れられない信組は、地域が傷つけばその傷を共に負い、地域が立ち直ろうとすればその歩みに資金を添える立場にあります。休業した避難区域の店舗を順次再開してきたことも、地区とともに在り続ける協同組織金融機関のありようを、相双という土地の上で示しています。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ福島県を代表する地銀として、東邦銀行(預貸率70.2%)も本紀行に登場しています。同じ浜通りには、相双に根ざすあぶくま信用金庫(預貸率32.5%)や、いわきのひまわり信用金庫(預貸率37.3%)もあります。震災と原発事故を引き受けた浜通りの金融機関の姿は、各記事もあわせてどうぞ。

数字は、根を張る土地を映す

自己資本比率37.92%という桁違いの厚さと、不良債権比率8.16%という高さは、原発避難を越えた相双に根を張り、傷を抱えながらも地域とともに歩んできた信組の姿を映しています。相双五城信用組合の数字は、相馬野馬追の地と、避難を経た双葉の地を併せ持つ信組の、いまの記録です。預貸率の読み方は預貸率の読み方を、福島県の他の金融機関は福島県の地域金融機関のページもどうぞ。

相双五城信用組合と融資・保証のはなし

相双五城信用組合は、地域に根ざした信用組合です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
相双五城信用組合の沿革(2013年に相双信用組合と五城信用組合が合併して発足、避難区域の店舗を順次再開してきたこと、相馬市を中心に浜通り北部を地区とすること)に関する記述=相双五城信用組合公開情報・各種公開情報にもとづく。
相双地域の相馬野馬追、東日本大震災と原子力災害・避難の影響に関する記述=各種公開情報。
東邦銀行・あぶくま信用金庫・ひまわり信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の組合員・員外貸出に関する記述=中小企業等協同組合法ほか関係法令にもとづく一般的な整理。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ