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関信用金庫——刃物のまち・関で、せきしんは一度も合併せず何に貸してきたか

預貸率42.3%、預金3,105億円、自己資本比率13.89%、不良債権比率4.41%。岐阜県関市に本店を置く関信用金庫。刃物のまち・関に根ざし、創立以来一度も合併していない「せきしん」が、何に貸してきたのか。同じ岐阜の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 岐阜県

岐阜県の関市に本店を置く関信用金庫は、預金3,105億円を持つ信用金庫だ。店舗13。地元で「せきしん」と呼ばれ、関市を中心に、美濃市・美濃加茂市・各務原市・下呂市・岐阜市の一部を事業区域とする。刃物のまち・関に根ざす信金だ。

本拠の関市は、岐阜県のほぼ中央、長良川と津保川にはさまれた地に広がる。鎌倉時代以来の刀鍛冶の伝統を受け継ぎ、「関の孫六」で知られる日本刀の名産地として栄えてきた。その技は近代以降、ポケットナイフや包丁、カミソリ、爪切りといった刃物産業へと受け継がれ、関は「刃物のまち」として世界的に知られる。いまも刃物関連の中小事業者が数多く集まる、ものづくりのまちだ。関信用金庫は、こうした刃物と長良川のまち・関に根ざし、地域の中小事業者と住民に貸してきた。

この信金の歴史には、際立った一点がある。1908年(明治41年)の創立以来、一度も他の金融機関と合併していない——全国でも数少ない、純血の老舗信金なのだ。預貸率は42.3%で、預金の4割強を貸出に回している。自己資本比率は13.89%。合併せず歩んできた信金は、何に貸してきたのか。同じ岐阜の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。関信用金庫の預金は3,105億円、貸出金は1,312億円。預貸率は42.3%で、預金の4割強を貸出に回している。自己資本比率は13.89%、不良債権比率は4.41%。店舗数は13。

同じ岐阜県の信金と比べてみる。県内最大で岐阜市を地盤とする岐阜信用金庫(預貸率56.4%・預金2兆6,598億円)、東濃地方の東濃信用金庫(預貸率45.6%・自己資本比率17.49%)、西濃の大垣西濃信用金庫(預貸率45.4%)と並べると、関信用金庫の預貸率42.3%は、岐阜の信金のなかではやや低めだ。県都・岐阜でよく貸す岐阜信金(56.4%)に対し、関は4割台にとどまる。自己資本比率13.89%は、岐阜信金(9.98%)より厚く、堅実な水準だ。刃物産業の中小に貸しながら、無理に貸出を伸ばさず、資本を堅実に保つ——合併せず身の丈で歩んできた信金らしい姿がうかがえる。不良債権比率4.41%は標準的で、堅実に貸してきたことをうかがわせる。

岐阜県の信用金庫(令和7年3月末)
 関信用金庫岐阜信用金庫東濃信用金庫大垣西濃信用金庫
本店関市岐阜市多治見市大垣市
預貸率42.3%56.4%45.6%45.4%
自己資本比率13.89%9.98%17.49%14.64%
不良債権比率4.41%2.56%6.1%3.88%

いずれも岐阜県の信金。関は預貸率がやや低めだが、自己資本は県都の岐阜信金より厚い。身の丈で歩む堅実さを映す。

関信用購買組合から——関信用金庫の歩み

関信用金庫は、1908年(明治41年)9月18日、「有限責任関信用購買組合」として設立された。創立時の事務所は、関の旧家・纐纈家住宅(現在の関市古民家にぎわい施設)の一角に置かれたという。1944年(昭和19年)に市街地信用組合へ転換して関信用組合に改組し、1952年(昭和27年)3月、信用金庫法に基づき関信用金庫となった。本店は関市に置かれ、略称は「せきしん」。2024年(令和6年)9月には創立116周年を迎えた。

この信金の最大の特徴は、創立から1世紀以上、他の金融機関と合併等を一切行っていないことだ。戦後、多くの信金が合併で規模を広げてきたなかで、関信金は単独で歩み続けてきた。これは、刃物のまち・関という地盤が、無理に規模を追わなくても成り立つだけの厚みを持っていたことの表れであり、同時に、身の丈に合った堅実経営を貫いてきた姿勢の表れでもあると読める。預貸率42.3%というやや低めの水準は、刃物産業の中小に着実に貸しながらも、貸出を無理に伸ばさない慎重さを映している。自己資本比率13.89%という堅実な資本は、合併に頼らず単独で健全性を保ってきた、その積み重ねの結果だと読める。不良債権比率4.41%という標準的な数字も、堅実な貸出姿勢を裏づけている。

42.3%を、刃物のまちから読む

関信用金庫の預貸率42.3%というやや低めの水準は、刃物のまち・関で、ものづくりの中小に着実に貸しながらも、貸出を無理に伸ばさず身の丈で歩んできたことの表れだと読める。県都・岐阜の信金がよく貸して5割を超えるなか、関は4割台にとどまる。預金は着実に集まり、その4割強を地域に貸す。

そのうえで、自己資本比率13.89%という堅実な資本を保っていることが、この信金の性格を物語る。創立から1世紀以上、合併に頼らず単独で歩み、資本を堅実に積んできた。規模を追わず、刃物のまちとともに身の丈で生きる——その一貫した姿勢が、42.3%という預貸率と、13.89%という堅実な自己資本に表れていると読める。刃物のまち・関で、せきしんは100年を超えて地域経済とともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

岐阜の経済とともに

関信用金庫の数字は、刃物のまち・関という土地と、創立から1世紀以上を合併せず単独で歩んできた歴史の、両方を映している。ものづくりの中小に着実に貸しながら、規模を追わず、資本を堅実に積んできた。刃物と長良川のまちという土地柄と、純血の老舗信金としての一貫性が、42.3%という預貸率と、13.89%という堅実な自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。関信用金庫を見れば、刃物のまち・関の経済と、そこで身の丈で歩む老舗信金の姿が浮かぶ。岐阜県の他の金融機関は、県内最大の岐阜信用金庫、東濃の東濃信用金庫、西濃の大垣西濃信用金庫、高山の高山信用金庫、県内最大の地銀十六銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。岐阜県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、岐阜県の地域金融機関のページへ。

関信用金庫と融資のはなし

関信用金庫は、刃物のまち・関に根ざし、ものづくりの中小に身の丈で貸す信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。4割台という水準は、地域の中小に着実に貸しながらも、貸出を無理に伸ばさない堅実な経営の表れであることが多い。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の貸し方と備えのバランスが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。岐阜信用金庫・東濃信用金庫・大垣西濃信用金庫の数値も同出典。
沿革(1908年9月18日に「有限責任関信用購買組合」として設立されたこと、創立時の事務所が纐纈家住宅の一角に置かれたこと、1952年3月に信用金庫法に基づき関信用金庫となったこと、本店が関市にあること、関市を中心に美濃・美濃加茂・各務原・下呂などを事業区域とすること、略称が「せきしん」であること、2024年9月に創立116周年を迎えたこと、創立以来一度も合併等を行っていないこと)=関信用金庫および各種公開情報にもとづく。
関の地理・歴史(関市、長良川、刀鍛冶、関の孫六、日本刀、刃物産業、刃物のまち)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。

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