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中南信用金庫——大磯の海辺に立つ信金は、なぜ預金の3割しか貸さないか

預貸率30.1%、預金3,476億円、自己資本比率12.8%、不良債権比率2.37%。神奈川県中郡大磯町に本店を置く中南信用金庫。湘南の海辺と県央の住宅地をまたぐ土地に根ざし、預金の3割しか貸さない信金が、なぜそうなるのか。同じ神奈川の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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神奈川県の中郡大磯町に本店を置く中南信用金庫は、預金3,476億円を持つ信用金庫だ。店舗17。「ちゅうなん」の呼び名で知られ、大磯・二宮・中井といった中郡を中心に、湘南西部から県央にかけて店舗を構える。湘南の海辺と内陸の住宅地をまたぐ土地に根ざしてきた信金だ。

本拠の大磯町は、相模湾に面した湘南の海辺の町だ。明治期には政財界の要人が別荘を構えた保養地として知られ、日本初の海水浴場が開かれた地でもある。いまは閑静な住宅地と別荘地の落ち着いた佇まいを残す。隣接する二宮、内陸の中井——中郡一帯は、大きな工業地帯や商業集積を持たず、住宅と農地、小規模な事業所が広がる土地だ。中南信用金庫は、大磯・二宮・中井の指定金融機関を務め、こうした湘南西部から県央に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で最も目を引くのは、預貸率30.1%という低さだ。預金3,476億円に対し、貸出金は1,047億円。預かったお金の3割しか貸していない。一方で自己資本比率は12.8%と厚く、不良債権比率は2.37%。なぜ、湘南の海辺の信金は、これほど貸さないのか。同じ神奈川の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。中南信用金庫の預金は3,476億円、貸出金は1,047億円。預貸率は30.1%で、預金の3割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は12.8%、不良債権比率は2.37%。店舗数は17、中小企業等への貸出残高は874億円。

同じ神奈川県の信金と比べてみる。横須賀を地盤とするかながわ信用金庫(預貸率50.6%・自己資本7.08%)、横浜の横浜信用金庫(預貸率57.6%)と並べると、中南信用金庫の預貸率30.1%は際立って低い。預金規模は3,476億円とかながわ信用金庫(1兆4,008億円)や横浜信用金庫(2兆704億円)に遠く及ばないが、その小さな規模で、預金の3割しか貸さないという守りの姿勢が際立つ。一方で自己資本比率12.8%は、かながわ信用金庫(7.08%)より厚い。貸出を絞り、資本を厚く保つ——典型的な守りの財務だ。これは、大きな資金需要を持つ工業や商業の集積がない湘南西部・県央という土地柄を映していると読める。

神奈川県の信用金庫(令和7年3月末)
 中南信用金庫かながわ信用金庫横浜信用金庫
本店中郡大磯町横須賀市横浜市
預貸率30.1%50.6%57.6%
自己資本比率12.8%7.08%11.09%
不良債権比率2.37%2.83%6.03%

いずれも神奈川の信金。中南は規模では小さく、預貸率も際立って低いが、自己資本比率は横須賀のかながわ信用金庫より厚い。

大磯の海辺から——中南信用金庫の歩み

中南信用金庫は、1932年(昭和7年)に設立された。中郡大磯町に本店を置き、大磯・二宮・中井の指定金融機関を務めてきた。略称は「ちゅうなん」。湘南西部の海辺の町から県央の内陸部まで、中郡を中心とした地域に根ざし、地元の住民と中小事業者に密着した経営を続けている。

湘南西部・県央という土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。大磯は保養地・別荘地として知られ、二宮や中井には住宅と農地が広がる。大きな工業地帯も、活発な商業集積もない——預金は集まるが、それを吸収するだけの大きな資金需要は、地元には乏しい。だから貸出は預金ほどには伸びず、預貸率は3割という低い水準にとどまる。これは、貸す相手がいないというより、地域の身の丈に合った貸出に徹し、無理に貸さないという守りの経営の表れだと読める。自己資本比率12.8%という厚さは、その守りの姿勢を裏づけている。不良債権比率2.37%は、堅実に貸してきたことを映していると読める。豊富な預金を貸出以外の有価証券などで運用し、地域の安心を支える——それが、この信金の生き方だと読める。

30.1%を、湘南の海辺から読む

中南信用金庫の預貸率30.1%という際立った低さは、大きな資金需要を持つ工業や商業の集積がない湘南西部・県央で、地域の身の丈に合った貸出に徹してきたことの表れだと読める。保養地・大磯から内陸の住宅地まで、預金は集まるが、それを吸収する大型の資金需要は乏しい土地だ。

そのうえで、自己資本比率12.8%という厚さが共存していることが、この信金の性格を物語る。貸出を絞り、資本を厚く保ち、豊富な預金を慎重に運用する。無理に貸さず、地域とともに健全であろうとする守りの経営——その姿勢が、30.1%という低い預貸率と、12.8%という厚い資本に表れていると読める。預貸率が低いこと自体は、その信金が悪いことを意味しない。土地の経済が大型の資金需要を生まないとき、貸出を絞って資本を守ることは、ひとつの堅実な選択だ。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

神奈川の経済とともに

中南信用金庫の数字は、湘南の海辺と県央の住宅地をまたぐ土地という地盤と、そこで貸出を絞りながら資本を守ってきた信金の生き方の、両方を映している。地域の身の丈に合った貸出に徹し、厚い資本を保ちながら、湘南西部・県央の暮らしを支えてきた。大型の資金需要を生まない土地柄が、30.1%という低い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。中南信用金庫を見れば、湘南西部・県央の経済と、そこで守りの経営に徹する信金の姿が浮かぶ。神奈川の他の金融機関は、横須賀のかながわ信用金庫、横浜の横浜信用金庫、県内最大の地銀横浜銀行、川崎の川崎信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。神奈川の他の金融機関と並べて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページへ。

中南信用金庫と融資のはなし

中南信用金庫は、湘南西部・県央に深く根ざした信用金庫です。地元の住民と事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。3割という低い水準は、土地に大きな資金需要が乏しいことや、貸出を絞って資本を守る経営の表れであることが多い。低いこと自体は良し悪しを意味せず、自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の姿が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。かながわ信用金庫・横浜信用金庫の数値も同出典。
沿革(1932年に設立されたこと、中郡大磯町に本店を置くこと、大磯・二宮・中井の指定金融機関を務めること、略称が「ちゅうなん」であること)=中南信用金庫および各種公開情報にもとづく。
大磯・中郡の地理・歴史(大磯町、相模湾、湘南、保養地・別荘地、日本初の海水浴場、二宮、中井、湘南西部・県央)に関する記述=各種公開情報。

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