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足立成和信用金庫——下町・足立で、信金は何に貸すか

預貸率51.1%、自己資本比率11.68%。足立区に本店を置く足立成和信用金庫。足立信用金庫と成和信用金庫の合併で生まれ、町工場の集まる下町に根ざす信金の数字を、地元に貸す信金という視点から読みます。

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東京都足立区に本店を置く足立成和信用金庫は、預金5,885億円、貸出金3,010億円、店舗23。足立区を中心に、隣接する城東・城北の下町地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある足立区は、東京の北東部、荒川と隅田川に挟まれた下町です。古くから中小の町工場と商店が密集する「ものづくりと商いのまち」として知られ、金属加工や機械、印刷、皮革など、多種多様な小さな事業者が軒を連ねてきました。大企業の本社が集まる都心とは異なり、足立に根を張るのは、数人から十数人規模の事業者たちです。この、無数の小さな事業者が肩を寄せ合う下町という土地柄が、足立成和信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫は、2002年12月、足立信用金庫と成和信用金庫が合併して発足しました。源流の一つである足立信用金庫は、1926年に有限責任千住信用組合として設立され、1951年に足立信用金庫へ改組した、下町の古い信金です。なお、足立成和信用金庫は、同じ城東地域の東栄信用金庫との合併で合意したことを公表しています。数字の面で目を引くのは、預貸率51.1%という、信金としてしっかり貸す水準と、14,080件という中小企業等向け貸出先の多さです。

まず、数字を並べる

足立成和信用金庫の預金は5,885億円、貸出金は3,010億円、預貸率51.1%。自己資本比率は11.68%、不良債権比率は3.76%。中小企業等向けの貸出先は14,080件です。

足立成和信用金庫(令和7年3月末)
預金5,885億円
貸出金3,010億円
預貸率51.1%
自己資本比率11.68%
不良債権比率3.76%
中小企業等向け貸出先14,080件
店舗23店

預貸率51.1%・中小貸出先1.4万件。下町に根ざし、しっかり貸す信金の数字を読む。

51.1%と1.4万件を、下町から読む

預貸率51.1%は、信用金庫としては中庸からやや高めの水準です。本紀行で見てきた、預貸率が3割台にとどまる地方の信金と比べれば、しっかり貸している方に入ります。それ以上に目を引くのが、14,080件という中小企業等向け貸出先の多さです。預金規模が近い信金と比べても、貸出先の件数は際立っています。これは、一件あたりは小さくとも、無数の事業者に薄く広く資金を届けてきたことを示す数字です。

足立成和信用金庫が貸す相手は、足立を中心とする下町の中小事業者です。金属加工や機械、印刷、皮革といった町工場、まちの商店や建設業、サービス業が、その融資先です。都心の大企業ではなく、足立の路地裏で機械を動かす小さな事業者一軒一軒に向き合うのが、この信金の役割です。1.4万件という貸出先の数は、その地道な営みの厚みそのものです。預貸率51.1%という水準は、潤沢な都市部の預金を、地元の事業者にしっかり回してきた結果と読めます。

不良債権比率3.76%は、これだけ多くの小さな事業者に貸しながら、極端に高くはない水準に収まっています。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、無数の町工場と商店が密集する足立という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

足立成和信用金庫が示すのは、下町の町工場に薄く広く貸す、地域密着の信金の姿です。1.4万件という貸出先の多さは、路地裏の小さな事業者一軒一軒に資金を届けてきた営みの厚みそのもの。中庸を超える預貸率は、都市部の預金を地元に回す信金の役割を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

足立成和信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度は、足立のような土地でこそ生きます。会員資格が地区内の中小事業者に絞られるからこそ、信金は都心の大企業ではなく、地元の町工場や商店に資金を向けます。足立成和信用金庫の14,080件という貸出先の多さは、まさにこの制度が下町という土地で機能した結果です。大企業に貸せない代わりに、小さな事業者の集まりに深く根を張る——それが、下町の信金の生き方です。

同じ都の、信用金庫と並べてみる

同じ城東の下町には、葛飾に根ざす亀有信用金庫があります。預貸率44.3%の亀有信用金庫と、預貸率51.1%の足立成和信用金庫は、ともに下町の中小事業者に向き合う信金どうしです。荒川をはさんだ隣り合うまちの信金の姿は、亀有信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

同じく城東には、東京東信用金庫もあります。預貸率55.3%の東京東信用金庫もまた、下町の事業者にしっかり貸す信金でした。下町の信金は、軒並み「貸す信金」である——足立成和・亀有・東京東と並べると、町工場と商店の密集する東京東部という土地が、信金を貸出に向かわせていることが見えてきます。城東のもう一つの信金の姿は、東京東信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、町工場や商店を営む足立の事業者にとって、土地の事情とものづくりを知る信金の存在は心強いものです。中庸を超える預貸率と多い貸出先は、しっかり貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率51.1%という水準と、14,080件という貸出先の多さは、荒川のほとり、町工場と商店の密集する下町・足立に根を張り、無数の小さな事業者に資金を届けてきた信金の姿を映しています。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。足立成和信用金庫の数字は、ものづくりと商いの下町に根ざす信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。東京都の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページもどうぞ。

足立成和信用金庫と融資・保証のはなし

足立成和信用金庫は、地元にしっかり貸す信用金庫です。実際に借入れを考えるなら、土台になるのは事業の中身を伝える準備と、保証制度の理解。借りる側が知っておきたい融資・保証の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
足立成和信用金庫の沿革(2002年に足立信用金庫と成和信用金庫が合併して発足、源流の足立信用金庫は1926年に有限責任千住信用組合として設立し1951年に足立信用金庫へ改組)、東栄信用金庫との合併合意の公表に関する記述=足立成和信用金庫公開情報・各種報道・各種公開情報にもとづく。
足立区の町工場・商業など下町の産業に関する記述=各種公開情報。
亀有信用金庫・東京東信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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