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あすか信用組合——歌舞伎町の商銀系信組は、どんな歴史を歩んできたか

預貸率83.4%、預金4,702億円、自己資本比率9.59%。新宿区歌舞伎町に本店を置くあすか信用組合。在日韓国人系(商銀系)の信用組合として、各地の商銀を統合し、破綻した東京商銀の事業を譲受してきた。その数字と歴史を、出典を明示して読む。

ニホン銀行紀行 ・ 東京都

東京都の新宿区歌舞伎町に本店を置くあすか信用組合は、預金4,702億円を持つ信用組合だ。店舗16。東京・埼玉を中心に、東北各県にも店舗を持つ。在日韓国人系の信用組合である「商銀(しょうぎん)」系の一つであり、その歩みには、戦後日本の地域金融と移民・定住者コミュニティの相互金融が交わる、独特の歴史がある。

「商銀」は、戦後、在日韓国人の事業者が相互扶助のために各地で設立した信用組合の系譜だ。既存の金融制度のなかで十分な融資を受けにくかった人々が、自前の相互金融を必要としたことが、その起こりにある。なお、ここでいう商銀(民団系)は、朝鮮総連系の「朝銀(ちょうぎん)」とは別系統である。あすか信用組合は、こうした移民・定住者コミュニティの相互金融の系譜に連なる信用組合だ。

この信組の数字で目を引くのは、預貸率83.4%という高さだ。預金の8割超を貸出に回している。信用組合としても、際立ってよく貸している部類だ。なぜ、商銀系の信組は、これほどよく貸すのか。同じ新宿の信組とも比べながら、その数字と歴史を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。あすか信用組合の預金は4,702億円、貸出金は3,920億円。預貸率は83.4%で、預金の8割超を貸出に回している。自己資本比率は9.59%、不良債権比率は2.26%。店舗数は16、中小企業等への貸出残高は3,920億円。

同じ新宿区を地盤とする第一勧業信用組合(預貸率81.5%・自己資本比率9.13%)と比べると、どちらも預貸率8割超の、際立ってよく貸す信組だ。あすか信用組合(83.4%)も第一勧業信用組合(81.5%)も、預金の8割超を貸出に回している。これは、東京の中心部で、組合員である中小・零細事業者の資金需要に深く応えていることを示す。商銀系のあすか信用組合は、組合員という明確な基盤のもと、その資金需要に密着して貸してきた。不良債権比率2.26%という数字は、これだけよく貸す信組として、低めに抑えられている。

新宿区を地盤とする二つの信用組合(令和7年3月末)
 あすか信用組合第一勧業信用組合
本店新宿区新宿区
預金4,702億円3,611億円
預貸率83.4%81.5%
自己資本比率9.59%9.13%
不良債権比率2.26%2.71%

ともに新宿区を地盤とする二つの信組。どちらも預貸率8割超で際立ってよく貸す。東京の中心部で組合員の資金需要に深く応える姿が数字に表れている。

商銀の系譜とともに——あすか信用組合の歩み

あすか信用組合の起こりは、1966年(昭和41年)、仙台市に設立された在日韓国人の相互扶助を目的とする信用組合「宮城商銀」にさかのぼる。その後、複数の商銀系信用組合を統合しながら、東日本に広がる信用組合へと成長してきた。1999年には旧・北海商銀信用組合の事業を譲受して「北東商銀」と改称し、2002年には旧・東京商銀信用組合の事業を譲受して、名称をあすか信用組合に改めた。同年、青森・秋田・岩手・福島の各商銀とも合併し、2004年に本店を東京都新宿区へ移している。

こうして各地の商銀を束ねてきたあすか信用組合の歩みのなかで、避けて通れないのが、2002年に事業を譲受した東京商銀信用組合の破綻である。これは、戦後日本の金融行政とバブル経済の崩壊が交わる一断面として、資料的な価値を持つ。事実として、出典を示して記しておく。

東京商銀の破綻と、アイワグループへの背任融資

東京商銀信用組合は、2000年(平成12年)12月16日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(金融再生法)に基づき、内閣総理大臣から金融整理管財人による業務・財産の管理を命じる処分を受けた。預金等の払戻しを停止するおそれがある状態に至った、すなわち経営破綻である。あすか信用組合は、この東京商銀の事業を2002年に譲受している。

破綻後、金融整理管財人が旧経営陣の責任を調査した結果は、金融庁に提出された金融再生法第13条に基づく報告書(補遺・平成14年4月9日)に記されている。それによれば、東京商銀の大口融資には重大な問題があった。1億円以上の融資案件は常務会に付議することになっていたが、実際には付議されることなく機能しておらず、融資が少数の特定先に偏る傾向があったとされる。また、債務者の財務内容や資金使途、返済原資の調査を怠った案件があり、大幅な担保不足の案件も見受けられたという。さらに、大口信用供与限度超過を回避するために、関連会社を通じて迂回融資(いわゆる「飛ばし」)をしていた案件もあったと報告されている。

この調査の過程で背任の疑いが浮かんだのが、大口融資先である種子田益男(アイワグループ代表)への融資だった。報告書によれば、種子田益男のアイワグループに対する融資が背任罪に該当する疑いがあるとして、捜査当局に情報が提供された。2001年(平成13年)10月5日、東京商銀の前理事長・金聖中、前常務理事・金利助、そして種子田益男ら計5名が逮捕され、家宅捜索が行われた。金聖中と種子田益男は背任の事実を否認し、金利助は認めたとされる。

民事面では、金融整理管財人が旧経営陣の責任を追及し、代表訴訟への参加などを通じて、2002年(平成14年)3月、金聖中ほか4名に対して約9億3,400万円(934,310,792円)の損害賠償請求訴訟を提起した。これとは別に、旧理事長らの相続人に対する代表訴訟では、第1審で5億円、控訴審で総額10億円の請求が認容されている。これらの損害賠償請求権は、その後、整理回収機構(RCC)に引き継がれた。

なお、東京商銀の破綻と前後して、商銀系の信用組合は各地で破綻や再編が相次いだ。同じ2000年12月16日には、在日韓国人系の信用組合関西興銀も破綻している。バブル経済の崩壊と、その後の金融行政の厳格化のなかで、不動産融資や大口融資に傾斜していた多くの金融機関が淘汰された時代の、これは一つの断面である。あすか信用組合は、こうして破綻した東京商銀の事業を引き受け、預金者と取引先を承継する受け皿となった

83.4%を、商銀の系譜から読む

あすか信用組合の預貸率83.4%という高さは、東京の中心部で、組合員である中小・零細事業者の資金需要に深く応えていることの表れだと読める。商銀系の信用組合は、在日韓国人の事業者という明確な組合員基盤のもと、その資金需要に密着して貸してきた。既存の金融制度から融資を受けにくかった人々の相互金融として始まった経緯が、地元の事業者に深く貸す姿勢につながっていると読める。同じ新宿の第一勧業信用組合とともに、東京の中心部で際立って高い預貸率を示すのは、都心の旺盛な資金需要を映している。

自己資本比率9.59%という水準は、信用組合として国内基準の4%は上回るが、際立って厚いわけではない。よく貸すぶん、資本の厚みは控えめだ。なお、あすか信用組合は2017年(平成29年)12月、財務基盤の強化を目的とする制度の認可を受け、優先出資を発行している。不良債権比率2.26%という数字は、これだけよく貸す信組として低めに抑えられており、東京商銀の破綻という歴史を経て、堅実な経営に努めてきたことがうかがえる。商銀の系譜を引き継ぎ、都心の組合員に深く貸す——それが、あすか信用組合の数字に表れた姿だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

東京の経済とともに

あすか信用組合の数字は、東京の中心部という土地と、商銀という独特の系譜を引き継ぐ信組の歩みの、両方を映している。預金の8割超を地元の組合員に貸し、移民・定住者コミュニティの相互金融という起こりから、東京・東北の中小・零細事業者を支えてきた。東京商銀の破綻という戦後金融史の一断面を引き受けながら、都心の資金需要に応える姿が、83.4%という高い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方や歴史を映す鏡だ。あすか信用組合を見れば、東京の中心部の経済と、商銀の系譜を引き継ぐ信組の姿が浮かぶ。東京の他の信用組合は、同じ新宿の第一勧業信用組合、城東の大東京信用組合もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が高い金融機関は、地元の資金需要によく応えている一つの目安になる。明確な組合員基盤を持ち、その事業者に密着して貸す信用組合は、大都市の中心部のように資金需要の厚い土地では、預金の8割を超えて貸出に回すこともある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。第一勧業信用組合の数値も同出典。
沿革(1966年に宮城商銀として設立、北海商銀・東京商銀の事業を譲受、青森・秋田・岩手・福島の各商銀と合併、2004年に本店を新宿区へ移転、2017年に優先出資を発行したこと、商銀が在日韓国人系・民団系で朝銀=朝鮮総連系とは別系統であること)=あすか信用組合公式サイト(組合概要・沿革)および「商銀信用組合」「あすか信用組合」に関する各種公開情報。
東京商銀信用組合の破綻および旧経営陣の責任追及(2000年12月16日の金融整理管財人による管理処分、1億円以上の案件が常務会に付議されず機能していなかったこと、特定先への偏り・担保不足・関連会社を通じた迂回融資、種子田益男〔アイワグループ代表〕への融資に関する背任の疑い、2001年10月5日の金聖中・金利助・種子田益男ら5名の逮捕、約9億3,400万円〔934,310,792円〕の損害賠償請求訴訟提起、代表訴訟での5億円・総額10億円の認容、整理回収機構〔RCC〕への債権譲渡)=金融整理管財人「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第13条に基づく報告書(補遺)」(東京商銀信用組合・平成14年4月9日、金融庁公表)。関西興銀の破綻日=「商銀信用組合」に関する公開情報。
※本記事は公開情報・一次資料にもとづく事実の整理であり、特定の個人・団体・民族について評価を下すものではありません。

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